ジゼル
| ジゼル Giselle, ou Les Wilis |
|||||||||||||||
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ジゼルを演ずるカルロッタ・グリジ。第2幕で亡霊となって現れる (1841年)
|
|||||||||||||||
| コラーリ版 | |||||||||||||||
| 構成 | 2幕 | ||||||||||||||
| 振付 | J・コラーリ J・ペロー |
||||||||||||||
| 作曲 |
|
||||||||||||||
| 台本 | ゴーティエ J・サン=ジョルジュ J・コラーリ |
||||||||||||||
| 美術 | P=L=C・チチェリ | ||||||||||||||
| 衣装 | P・ロルミエ | ||||||||||||||
| 設定 | ドイツ・テューリンゲン | ||||||||||||||
| 初演 | 1841年6月28日 パリ・オペラ座 |
||||||||||||||
| 主な初演者 |
|
||||||||||||||
『ジゼル』(Giselle )は、1841年にフランスで初演されたバレエ作品。全2幕。作曲はアドルフ・アダン、振付はジャン・コラーリとジュール・ペローによる。初演時の題名は 『ジゼル、またはウィリたち』 (Giselle, ou Les Wilis) だった。
ロマンティック・バレエの代表作の一つであり、大規模な改訂を経て今日でも頻繁に上演されている。
目次 |
概要 [編集]
結婚を目前にして亡くなった娘達が妖精ウィリ[1]となり、夜中に森に迷い込んできた男性を死ぬまで踊らせるというハインリッヒ・ハイネによって紹介されたオーストリア地方の伝説に着想を得て作られた。2幕物で、第1幕の昼間の森の場面と第2幕の夜の場面の対照が印象的である。主人公が死装束で踊る唯一のバレエ作品といわれる。
なお音楽は1841年の初演の時点で、オリジナルのアダンのものに加えて、ヨハン・ブルグミュラー作曲による 《レーゲンスブルクの思い出》 (Souvenir de Ratisbonne) と称するワルツ1曲と、ジゼルと友人たちが踊るための5曲が挿入されていた[2]。これらは第1幕の “村娘のパ・ド・ドゥ” と呼ばれる部分を構成しており、ワルツがその最後に来る[3]。
ロシアでの上演 [編集]
『ジゼル』 は翌1842年に早くもロシアのサンクトペテルブルクで上演された。初演時にカルロッタ・グリジの振付を担当したペローは1848年から10年間、メートル・ド・バレエとしてロシア帝室バレエに君臨し、この作品に磨きをかけた。ペローの改訂により、ジゼルが狂乱する場面がより明確になり、また第2幕の主役2人によるパ・ド・ドゥ部分が変更された。
その後マリウス・プティパは1884年から数回にわたって大規模な改訂を行った。有名な第1幕の “ジゼルのヴァリエーション” はプティパの手になるもので、この曲はレオン・ミンクスが新たに作曲した可能性が高いと考えられている〔動画参照〕[4][5]。そのほか大きく変更されたのは第2幕で、ウィリたちによる踊りのスタイルが統一された上、群舞が重層的に展開するものへと作り直された。
1868年に本国フランスでの上演が途絶えてロシアで生き残った 『ジゼル』 は、プティパの死後はほとんど変更されることなく今日まで伝えられている。現在最も多く上演される『ジゼル』 はプティパ版およびそれに基づいた振付である。
あらすじ [編集]
|
|
||
| ジゼル | Giselle | 村娘 |
| アルブレヒト[6] | Albrecht | シレジア公爵。身分を隠して村人の服装で現れる |
| クルランド大公 | Le prince de Courlande | クルラント君主 |
| バティルド | Bathilde | アルブレヒトの婚約者で大公の令嬢 |
| ヒラリオン[7] | Hilarion | 森番の青年。ジゼルに思い焦がれる |
| ベルト | Berthe | ジゼルの母親。寡婦 |
| ミルタ | Myrtha | ウィリ(精霊)の女王 |
第1幕 [編集]
心臓が弱いものの笑顔を絶やさない、踊りの好きな村娘ジゼルに、アルブレヒトは貴族である身分を隠し、名をロイスと偽って近づく。ふたりは想いを通わせるが、ジゼルに恋する村の青年ヒラリオンは面白くない。彼はアルブレヒトが普段の衣装や剣をしまう小屋から剣を見つけ、村の青年ではないことを確信してその剣を持ち出す。
ある時、ジゼルの村にアルブレヒトの婚約者、バティルドの一行が狩の途中に立ち寄る。村娘ジゼルとバティルドはお互い結婚を控えているもの同士として仲がよくなる。その後、ヒラリオンが持ち出した剣によりアルブレヒトの身分が暴かれる。アルブレヒトは混乱するジゼルをなだめるが、ヒラリオンは更にバティルドと公爵を連れて来る。もはやごまかしようのなくなったアルブレヒトは公爵に礼を執り、バティルドの手にキスをする。それを見たジゼルは狂乱状態に陥り、母ベルタの腕の中で息絶える。ヒラリオンとアルブレヒトは互いの行為を責め合うが、村人たちやベルタに追い出されるように退場したのはアルブレヒトだった。
第2幕 [編集]
森の沼のほとりの墓場。ここは結婚を前に亡くなった処女の精霊・ウィリたちが集まる場所である。ジゼルはウィリの女王ミルタによってウィリの仲間に迎え入れられる。
ジゼルの墓に許しを請いにやってきたヒラリオンは鬼火に追い立てられる。ウィリたちは夜中に迷い込んできた人間や裏切った男を死ぬまで踊らせるのである。ウィリたちがヒラリオンを追う間、ジゼルを失った悲しみと悔恨にくれるアルブレヒトが彼女の墓を訪れ、亡霊となったジゼルと再会する。
ヒラリオンはウィリたちに捕らえられて踊らされ、休むことを許されず力尽き命乞いをするが、ミルタは冷たく突き放し死の沼に突き落とす。次にミルタはアルブレヒトをも捕らえ、力尽き死に至るまで踊らせようとする。アルブレヒトが最後の力を振り絞り踊るときジゼルはミルタにアルブレヒトの命乞いをする。そのために時がすぎ、やがて朝の鐘が鳴り朝日が射しはじめるなかウィリたちは墓に戻っていく。アルブレヒトの命は助かり、ジゼルは朝の光を浴びアルブレヒトに別れをつげて消えていく。
解釈をめぐって [編集]
アルブレヒトのジゼルへの愛は貴族の戯れに過ぎなかったのか、それとも本当にジゼルを愛していたかは、ダンサーにより解釈が異なる。ユーリー・グリゴローヴィチ版以降、第2幕ではジゼルがアルブレヒトを許しウィリたちから守るという解釈をすることも多い。また、マッツ・エック版では、ジゼルは死ぬのではなく、精神病になるといったような解釈をされている。
動画 [編集]
- 第1幕 “ジゼルのヴァリエーション”(ジゼル役はA・コジョカル、2007年、クロアチア国立劇場)
脚注 [編集]
- ^ 男性に裏切られて亡くなるという悲しい思いを抱いているために、妖精というより男性に対する怨念のこもった悪霊であるが、その姿は若い娘の姿をしている。
- ^ Beaumont, Cyril W., The Ballet called Giselle, 1945, C. W. Beaumont, p.57.
- ^ Guest, Ivor, The Romantic Ballet in Paris, 2008, Dance Books, ISBN 978-185273-119-9, p.354.
- ^ Edgecombe, Rodney S., "Notes on Giselle and Paquita - The Probable Authorship of the E-Major Variation in Act I of Giselle and Problems Arising from the Grand Pas from Paquita", Dance Chronicle, Vol.22, No.3 (1999), pp.447-448.
- ^ 以下も参考になる。福田一雄、『バレエの情景』 1984年、音楽之友社、ISBN 4-276-37038-8、pp.140-141.
- ^ 初演の時は「アルベール」 (Albert) だったが、後にゴーティエ自身が「アルブレヒト」に変更した。cf. Au, Susan, "Giselle", International Encyclpedia of Dance, vol.3, ISBN 0-19-517587-5, p.179.
- ^ 版によっては「ハンス」と呼ぶ。
参考文献 [編集]
- 村山久美子 「ロシアで上演されてきた『ジゼル』」(新国立劇場 『ジゼル』 公演プログラム、2006年6月、pp.10-13.)
- 平林正司 『十九世紀フランス・バレエの台本―パリ・オペラ座』(慶應義塾大学出版会、2000年、ISBN 4-7664-0827-6)
- 鈴木晶 『バレエ誕生』(新書館、2002年)