ジクワット

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ジクワット
構造式
識別情報
CAS登録番号 85-00-7
KEGG C18577
特性
化学式 C12H12N2Br2
モル質量 344.05
外観 無色または黄色結晶
密度 1.2, 固体
融点

335 (分解)

出典
ICSC
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

ジクワット (diquat) はビピリジニウム系に分類される非選択形除草剤の1つ。イギリスのプラント・プロテクション社が開発した。除草剤としての利用のほか、ジャガイモの収穫前の蔓枯らしにも使われることがある。原体がイギリスから輸入されて製剤化されている。英語読みにより、ダイコートと発音することもある。臭素塩であるためジクワットジブロミドとも呼ばれる。

土壌に付着すると直ちに活性を失い、木や根は枯らさないため、すぐに種をまいたり作物を植えることができる。

パラコートと同じくアルキルビピリジニウム塩に分類される。化合物としての名称は 1,1'-エチレン-2,2'-ビピリジニウムジブロミドである。

構造[編集]

ジクワットは、ベンゼン環の炭素原子の一つを窒素原子に置き換えたピリジン構造を持つ。ピリジンが2個結合した化合物はビピリジンと呼ばれ、6種類の異性体があるが、ジクワットは2,2'-ビピリジンの窒素原子間にエチレン鎖を導入したピリジニウム塩(アンモニウム塩)である。2,2'-ビピリジンにエチレン鎖を生成するとき通常1,2-ジブロモエタンを使用するため臭素塩となる。ジクワットの窒素原子は正電荷を持つため、土壌成分と結合して長期間残留するが、結合すると同時に毒性を失う特性がある。

  • 1,1-エチレン-2,2'-ビピリジニウム=ジブロミド(ジクワットジブロミド:CAS登録番号:85-00-7 )
  • 1,1-エチレン-2,2'-ビピリジニウム=ジブロミド水和物(ジクワットジブロミド水和物:CAS登録番号:6385-62-2 )
  • 1,1-エチレン-2,2'-ビピリジニウム(ジクワット:CAS登録番号:2764-72-9 )

作用[編集]

ジクワットは、植物体内に入ると NADPH という酵素との反応によりジクワットラジカルになる。このジクワットラジカルが酸素と反応して元のジクワットイオンに戻る際に活性酸素が生じ、細胞の遺伝子の核にあるDNAや蛋白質を破壊し、植物を枯死させる。この酵素は動物にもあるため、同じ反応が起こる。ジクワットは触媒的に何度もこの反応を繰り返し起こす。

なお、パラコートとは異なり肺への能動的な蓄積は認められない。

毒性[編集]

劇物指定で毒性の強い薬剤である。サルモネラ菌等で変異原性が認められる。人体中毒症状はパラコートに類似しており、肝腎機能障害、肺水腫へと進むが、[1]ジクワットでは肺線維症の報告はこれまでのところない。一般的に致死が早く、パラコートに比べて急性腎不全が起こりやすい。

毒性はパラコートの約半分ともいわれている。同じように、特異な解毒剤はない。

パラコートと同じように、手袋形・靴下形感覚等の多発性神経症状を起こすほか、MPP+(シペルクワット)との化学構造の類似性から、パーキンソン病との関係も疑われている。

目立った反対運動が起こらないのは、パラコート程のシェアを持っていなかったことも関係していると思われる。

ジャガイモの収穫前使用[編集]

北海道などではジャガイモを収穫する際には機械で掘り起こすが、効率を良くするため、ジクワットを散布して蔓を枯らしてから行うことが多い[2] 。使用時期が早過ぎるとジャガイモ内に輪状斑を生じることがある。またトラクターで散布するため広範囲に霧状に舞うので、周囲の人や家畜にかからないよう細心の注意が必要である。

最近では安全のため日本の農薬メーカーが代替品の普通物(いわゆる毒物・劇物の指定を受けていないものをいう)の製剤を開発し、発売している。

製剤[編集]

濃度 30% の液剤か、パラコートとの混合剤として販売されている。農薬登録は1963年6月22日。

  • ジクワット30%
    • レグロックス
  • パラコートとの混合剤
    • ウィドール(パラコート 3%、ジクワット 4%。生産中止)
    • プリグロックス(パラコート 10%、ジクワット 14%。生産中止)
    • プリグロックスL(パラコート 5%、ジクワット 7%)
    • マイゼット(プリグロックスLと内容は同じ。後にプリグロックスLに名称を統合した)

脚注[編集]

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  1. ^ 内藤裕史「中毒百科」パラコート・ジクワットによると1例のみ報告があったとされている。
  2. ^ 枯凋剤(こちょうざい)と呼ばれる。

関連項目[編集]