ジクロルボス
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| ジクロルボス | |
|---|---|
| IUPAC名 | リン酸2,2-ジクロロエテニルジメチル |
| 別名 | ジメチル2,2-ジクロルビニルホスフェイト、DDVP |
| 分子式 | C4H7Cl2O4P |
| 分子量 | 220.98 g/mol |
| CAS登録番号 | [62-73-7] |
| 密度と相 | 1.42 g/cm3, 液体 |
| 沸点 | 140 °C(2.7 kPa) |
| 水への溶解度 | 微溶 |
| SMILES | O=P(OC)(OC)OC=C(Cl)Cl |
| 出典 | ICSC, kis-net |
ジクロルボス(dichlorvos)とは分子式 C4H7Cl2O4Pで表わされる有機リン化合物の殺虫剤である。ジメチル2,2-ジクロルビニルホスフェイトともいい、略称は DDVP である。
目次 |
[編集] 概要
農薬として開発され、日本を含む各国で広く用いられている。
揮散性が高く即効性があり、また残効性が低い。
[編集] 物性
純品は無色の結晶。熱に対する安定性が高く、燃焼させるのは困難。水への溶解性も低く、多くの有機溶剤に可溶。アルカリ性の水溶液で加水分解する。鉄への腐食性がある。
[編集] 用途
[編集] 農薬
各国で野菜、果樹、穀物、綿花、タバコ、茶、桑、キノコなど、多岐にわたる作物の、多種の害虫防除に用いられている。多くは40~80%の成分を含む乳剤として販売され、用途に応じて100倍から1500倍程度に希釈して散布する。また、燻煙剤、燻蒸剤もある。農薬としてのジクロルボス製剤の散布方法について、日本では、作物及び栽培方法別に剤型、使用方法、使用期間、使用回数などの安全使用基準が定められている。例えば、ブドウは乳剤の散布または燻煙剤の燻煙に限り、収穫の3日前までしか使わない、アスパラガスでは乳剤の散布を収穫前日までしか使わない、などである。
[編集] 防疫
オルトジクロロベンゼン乳剤などの殺うじ剤の補助成分としても用いられ、ハエの防除に用いる。
[編集] 燻蒸
家庭や事業所などの衛生害虫用燻蒸剤の一成分としても用いられる。
[編集] スプレー殺虫剤
ゴキブリなどの生命力の強い昆虫等を対象としたスプレー殺虫剤の一成分として使われる例もある。
[編集] 樹脂蒸散製剤
樹脂に高濃度の成分を含ませたもので、成分が蒸散することにより、室内の害虫を駆除するのに用いる。
[編集] 製法
有機リン化合物のトリクロルフォンから水酸化ナトリウムなどのアルカリを用いて塩化水素を取り去る形で得る製法が一般的。
[編集] 工業生産
農薬用ジクロルボス原体の品質について、中国では天津農薬廠が起草した国家規格(GB 2549-2003)によって、純度95.0%以上、残留トリクロロフォン2.5%以下などと定められており、無色ないし黄色の液体として製造される。
日本では1980年ごろには年間1,500トン程度の原体が製造されていたが、現在は農薬用途が減り、また中国やインドなどでの製造が増えているために輸出も減り、生産量は半減している。
[編集] 規制
[編集] 日本
原体は毒物及び劇物取締法の劇物、製剤は薬事法の劇薬に指定されている。また、農業用は農薬取締法により扱いなどが規定されている。
[編集] 家庭用殺虫剤として
ジクロルボス樹脂蒸散製剤はゴキブリ・ハエ・蚊などの駆除を目的に一般用医薬品として販売されており、14歳以上であれば薬局・薬店で購入することができるが、劇薬に指定されているため譲受書に記入しなければならない。
[編集] 樹脂蒸散剤の使用限定までの経緯
ジクロルボスの樹脂蒸散剤は、従来から家庭や店舗等で使用されていたが、ヨーロッパにおいて使用規制が進んだのにともない、東京都生活文化局が、使用時の室内空気中濃度を測定したところ、一日許容摂取量(ADI)が超過したとして、2004年に国へ再評価の提案を行なった[1]。
厚生労働省は、ADIを基準として安全性を論ずることは必ずしも適当でないなどとしたが、吊り下げタイプの製剤は、高い室内濃度で毎日24時間曝露した場合、安全域を上回るおそれが考えられるとして、人が長時間留まらない場所に使用を限定するよう用法を変更した[2]。
[編集] 中国
中国では、「敵敵畏」などの名で農業用殺虫剤として広く使われている。中国では有機リン系農薬の最大許容残留量を穀物、野菜及び果物、食用植物油に分けて定めているが、ジクロルボスの許容量は未精製の穀物に関して0.1 ppm以下、野菜及び果物に関しては0.2 ppm以下、食用植物油からは検出されないことと定めている[3]。検査はガスクロマトグラフィーによって行うことが中国国家規格(GB/T 5009.20-1996)に定められている。
詳細は「中国産食品の安全性」を参照
[編集] 毒性
他の有機リン化合物と同様にコリンエステラーゼ阻害作用がある。吸引すると倦怠感、頭痛、吐き気、腹痛、下痢などの症状が出、重篤な場合には瞳孔の収縮、意識混濁、痙攣などを起こし、死に至る場合もある。
経口毒性(LD50)はラットで17 mg/kg、経皮毒性(LD50)はラットで70.4 mg/kgである[4]。
[編集] 脚注
- ^ DDVP(ジクロルボス)を含有する殺虫剤の挙動等に関する調査の概要(東京都)
- ^ ジクロルボス(DDVP)蒸散剤の安全対策について(厚生労働省)
- ^ 『GB5127-85 食品中のジクロルボス、ジメトエート、マラソン、パラチオン最大制限残留量規格』,1985年
- ^ 神奈川県化学物質安全情報提供システム - ジクロルボス

