シクロブタジエン

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シクロブタジエン
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識別情報
CAS登録番号 1120-53-2
PubChem 136879
ChemSpider 120626 チェック
特性
化学式 C4H4
モル質量 52.07 g/mol
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

1,3-シクロブタジエン (1,3-cyclobutadiene) は分子式が C4H4 と表される、4員環に2個の二重結合を持った有機化合物である。最も小さいアヌレン([4] アヌレン)である。赤外分光法により長方形の構造であることが確認されている。

安定性[編集]

通常の sp2炭素に比べて炭素上のひずみが高くさらにヒュッケル則を満たさない(反芳香族性)ため、分子は非常に不安定である。シクロブタジエンが持つ π軌道のエネルギー準位は、環が開いた 1,3-ブタジエンのものよりも高い。などの金属と作る金属錯体には安定なものが知られるが、これは金属原子が電子を2つ供給してシクロブタジエン環が 6π系の芳香族性を持つようになるためである。

合成[編集]

さまざまな合成法が試みられた後、1965年にテキサス大学ローランド・ペティットが最初に合成に成功したが単離には至らなかった。この時は C4H4Fe(CO)3硝酸セリウムアンモニウムなどを用いた、シクロブタジエン金属錯体の分解反応により得られた。そこで用いられるシクロブタジエン鉄トリカルボニル錯体は、Fe4(CO)9と 3,4-ジクロロシクロブテンを用いた脱ハロゲン化水素反応により得られる[1][2]

誘導体としては、シアノ基とジメチルアミノ基を2つずつ向かい合わせに持つものが合成されており、置換基の電子効果によって安定に存在する。またtert-ブチル基を3つまたは4つ持ったシクロブタジエン誘導体も合成されており、これは二量化などの分子間反応が立体障害によって速度論的に防がれている。

ほか、ドナルド・クラムらがヘミカルセランド(内部に小分子を包み込み、外界から遮断できるかご状分子)内で、光反応によってα-ピロンからシクロブタジエンを発生させ、NMRなどによってその存在を観測している[3]。この包摂化合物は常温でも安定である。不活性ガスをマトリクスとして低温で発生させ、分光学的に観測した研究も報告されている[4]

反応[編集]

ディールス・アルダー反応により、35Kで二量化することが知られている。

鉄錯体が分解して遊離したシクロブタジエンは、プロピオール酸メチルアセチレンジカルボン酸ジメチルなど電子不足のアルキンと反応してデュワーベンゼン環を生成する[5]。アセチレンジカルボン酸ジメチルが付加したデュワーベンゼン誘導体は、90 ℃ に加熱するとフタル酸ジメチルへと異性化する。

シクロブタジエンの反応例

2,2'-ビス(フェニルエチニル)ビフェニルの熱反応により、2個のアルキン部位が[2+2]の形式で環化してシクロブタジエン環に変わる。この環は 2,3,4,5-テトラフェニルシクロペンタ-2,4-ジエノンにより捕捉され、シクロオクタテトラエン誘導体などの生成物を与える[6]

シクロブタジエン環の生成と反応の例

脚注[編集]

  1. ^ Emerson, G. F.; Watts, L.; Pettit, R. "Cyclobutadiene- and Benzocyclobutadiene-Iron Tricarbonyl Complexes" J. Am. Chem. Soc. 1965, 87, 131-133. doi:10.1021/ja01079a032
  2. ^ Pettit, R.; Henery, J. "Cyclobutadieneiron tricarbonyl" Organic Syntheses, Coll. Vol. 6, p.310 (1988); Vol. 50, p.21 (1970) オンライン版
  3. ^ Cram, D. J.; Tanner, M. E.; Thomas, R. "A cyclobutadiene that is stable at room temperature." Angew. Chem., Int. Ed. Engl. 1991, 30, 1024-1027. doi:10.1002/anie.199110241
  4. ^ 例: Lin, C. Y.; Krantz, A. "Matrix preparation of cyclobutadiene." J. Chem. Soc., Chem. Commun. 1972, 1111-1112.
  5. ^ Watts, L.; Fitzpatrick, J. D.; Pettit, R. "Cyclobutadiene" J. Am. Chem. Soc. 1965, 87, 3253-3254. doi:10.1021/ja01092a049
  6. ^ Lee, C.-C.; Leung, M.-k.; Lee, G.-H.; Liu, Y.-H.; Peng, S.-M. "Revisit of the Dessy-White Intramolecular Acetylene-Acetylene [2 + 2] Cycloadditions" J. Org. Chem. 2006, 71, 8417 - 8423; doi:10.1021/jo061334v

関連項目[編集]