シクロクロス

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シクロクロス (Cyclo-cross) とは、オフロードで行われる自転車競技。またはその競技のための自転車の車種。「シクロクロス」はフランス語読みであり、英語では「サイクロクロス」と発音され、略語として「CX」と表記される。

概要[編集]

もともとはロードレースの選手の冬季トレーニングの一環として始まり、現在ではヨーロッパ、とくにベルギーフランデレン地域オランダチェコにおいて人気が高い。主要なレースはロードレースのシーズンオフである晩秋期と冬季にヨーロッパ各地で行われ、また世界選手権も同様に冬季に行われる。多くの選手は何かしらの他の自転車競技に参戦している事が多いが、人気の高くなった現在ではシクロクロスにのみ参戦する選手もいる。

欧州ではロードレースのオフシーズンとなる11月~2月上旬に集中開催されているが、同じくロードレースのオフシーズンに集中開催されるトラックレース6日間レースよりも現在では人気面で凌駕しており、最高峰の大会である世界選手権の他に、UCIシクロクロスワールドカップスーパープレスティージュ (シクロクロス)GvAトロフェーという3つのシリーズ戦も並行して行われている。なお、以上4つの大会全てを同一年度シーズンに制覇した選手のことを、グランドスラムと呼んでいるが、スヴェン・ネイス2005年に達成した。

競技概要[編集]

シクロクロス競技

シクロクロス競技は距離ではなく時間制で行われる。コースは短い距離(3-4キロメートル)の不整地の周回コースで行われ、1周目の通過時間をもとに、規定の時間に最も近い周回数が競技中に決定され、その周回数を最初に消化した選手が勝者となる。コースにはまた、ところどころ人工の障害物(柵、階段など)が設けられ、必ず下車して自転車を担がなければならない部分が作られている。競技時間はロードレースに比べると非常に短く30分から1時間。また特有のルールとして、ピットでの機材交換(自転車乗り換えを含む)が可能となっている。そのためシクロクロスでは一人の選手に対して複数のピットクルー(アマチュア選手の場合、多くは友人)が代車を用意してピットにつく事が多い。

競技における戦術はロードレースのそれと比べると極めて単純で、ロードレースがチームでの集団戦術による連携、陽動など複雑な駆け引きを駆使するのに対して、シクロクロスはむしろ選手個人の身体的能力および自転車の操舵能力が結果を左右する。

使用機材は、上級カテゴリーではドロップハンドルの使用が義務づけられているなどの規定がある。

歴史[編集]

シクロクロスの起源は1900年代に遡る。その成り立ちにはいろいろな説があり一概には言えないが、一説には自転車選手が隣町までの競走の際、近道のためにフェンスの中に入り畑の中を自転車で走ったのが起源だとも伝えられる(この当時、冬場の休耕地であれば立ち入る事は許されていた)。これは当時オフシーズン期間にもコンディションを保つ方法でもあり、また不整地を走る事によって自転車の操舵能力、瞬発力を高める訓練にもなった。初期のツール・ド・フランスの優勝者にこのようなシクロクロスの原型とも言える練習方法として取り入れていた人物がいる。

次第に本来練習であったものが競技として形成され、1902年フランスで国内選手権が開催され、そしてフランスより生まれたこの競技は次第に近隣の国へと伝わり、1924年に最初の国際大会がパリで行われ、1940年代国際自転車競技連盟(UCI)が正式な競技として認定、1950年には世界選手権が開催された。その後シクロクロスは大西洋を越えてアメリカに伝わり、1970年代に隆盛、1975年にはアメリカで国内選手権が開かれている。また、マウンテンバイクの誕生にこの時代のシクロクロスのレースが関わっている[1]

機材[編集]

シクロクロス車

シクロクロス車[編集]

自転車の車種としてのシクロクロス(特にシクロクロス車、シクロクロスバイクという場合がある)は、シクロクロス競技に最適化された自転車を指す。特徴は以下の通り。

フレーム
カンチレバーブレーキや太いタイヤに対応し、泥詰まりを防ぐため各所の隙間は大きくとられている。乗車姿勢はロードバイクに比べ上半身の前傾が浅く(アップライトに)なる。フレーム形状も衝撃吸収性を重視し、曲げ加工を随所に施したモデルが少なくない。下車しての押しや担ぎが多いことからアルミカーボンといった軽量の新素材が比較的早い時期に導入されていたが、自転車の競技車両としては現在でもクロモリフレームが一線級で使用されている珍しいジャンルでもある[2]。ケーブルのルーティングは競技に特化しているものだと競技中にダウンチューブに泥や埃がかかり、動作の妨げにならないようにトップチューブ経由でリアディレイラーへとケーブルを廻すトップルーティングを採用しているものが多い。またロードバイク用、マウンテンバイク用のハブ軸長双方に互換性があるようにしているものもある。UCIの規定により競技では機材の重さは6.8kgを超えなければならないとされる。
ハンドル
国際自転車競技連盟認定の公式競技及び未登録でも上位カテゴリーのシクロクロス競技ではドロップハンドルである事が事実上義務付けられる形となっており、またハンドルの幅は50cmを超えてはならない。しかしながら下位カテゴリーではその限りではない、すなわちマウンテンバイクに使われるようなストレートハンドルでも可能な場合がある。
ブレーキ
ロードバイクで用いられるサイドプルブレーキに比べ、泥詰まりしにくいカンチレバーブレーキが主に用いられる。
オフロード走行という点からディスクブレーキも適しているが、長らく国際公式ルールにより競技での使用は禁止されていた。しかしながら2010年にUCIの公式発表によりディスクブレーキの使用は許される事となった[3]
タイヤ
700C規格が用いられる。幅が太い(33mm以下に規制されている)シクロクロス用のタイヤを用いる。世界的なトッププロの選手は28mmから34mmまでの様々な太さのタイヤを常備しているという[4]
通常はブロックパターンのタイヤを履くが、フラットな高速コースではダイヤ目のタイヤを履くこともある[5]
空気圧は2~4気圧。特に大き目の砂利などバンピーなコースでは限界ギリギリの2気圧にする。ロード同様にWOも増えてきているが、空気圧を下げるとリム打ちパンクするのと、重量面のメリットから、レース用機材はチューブラータイヤが主流である。
ホイール
ロードレースに使用される物より耐久性が要求されるが、入手のしやすさや軽量性などからロードレース用のものが用いられることが多い。
近年では、いくつかのメーカーからシクロクロス用を謳ったホイールが発売されている。
また、プロレベルではカーボン製のディープリムが用いられることが多いが、これは空力効果よりも、リムの高さによって「泥をかきわける」メリットがあるためである[2]
変速レバー
オフロード走行中にハンドルから片手を離すと危険なので、手元変速が用いられる。そのためかつてはドロップハンドル先端に取り付けるバーエンドコントローラが主に用いられた。現在ではデュアルコントロールレバーの使用も広まっている。

服装[編集]

シクロクロス競技では不整地を自転車あるいは自転車を担いで走る必要があるため、選手はランニングに不適なロードレース用のレーサーシューズではなく、ツーリングシューズ、またはMTB用シューズを履く。[6]また競技会場は木々が無造作に生い茂るところも多いために木の枝を衣服に引っ掛けないように、もっと肌に密着した上下一体型のレーシングスーツを着用する事もある。

派生車種[編集]

競技用のシクロクロス車をもとに、ロードバイクとしての使用も想定した車両も販売されている。この種の車両はホイールベースが長い、キャリア取付用ダボボトルケージ用のねじ穴の存在など、純粋な競技機材としてのシクロクロス車とは異なる部分がある。

参照・脚注[編集]

  1. ^ 映画『KLUNKERZ』による。恐らく競技規定が今ほど厳しくなかった時代にギアつきのビーチクルーザーで参戦したモロー・ダート・クラブの連中にジョー・ブリーズなどマウンテンバイクの創始者が触発されたと言う。詳しくはマウンテンバイク#歴史参照。
  2. ^ a b 勝者たちのシクロクロス・スペシャルバイク
  3. ^ UCI to allow disc brakes in cyclo-cross competition
  4. ^ Massa’s Eye シクロクロス小話
  5. ^ サイクルベースあさひ[リンク切れ]
  6. ^ 一時、ゴム底にシュープレートを兼ねた滑り止め金属スタッドを付けたシクロクロス専用シューズが発売されていた。

外部リンク[編集]