シェンク対アメリカ合衆国事件

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シェンク対アメリカ合衆国事件
Seal of the United States Supreme Court.svg
1919年3月3日
事件名: Charles T. Schenck v. United States
判例集: 39 S. Ct. 247; 63 L. Ed. 470; 1919 U.S. LEXIS 2223; 17 Ohio L. Rep. 26; 17 Ohio L. Rep. 149
裁判要旨
徴兵に対する被告の批判はアメリカ合衆国憲法修正第1条によって保護されてはいない。なぜならばその批判は戦時にアメリカ軍が徴兵し徴集する行為に対して、明白かつ現在の危険を生み出したからである。
裁判官
首席判事: エドワード・D・ホワイト
陪席判事: ジョセフ・マッケナ、オリバー・ウェンデル・ホームズ・ジュニア、ウィリアム・デイ、ウィリス・ヴァン・デヴァンター、マーロン・ピットニー、ジェイムズ・C・マクレイノルズ、ルイス・ブランダイス、ジョン・H・クラーク
意見
多数意見 ホームズ
賛同者:全会一致
参照法条
usc,50,33
判例変更
ブランデンバーグ対オハイオ州事件, ussc,395,444,1969

シェンク対アメリカ合衆国事件(シェンクたいアメリカがっしゅうこくじけん、英:Schenck v. United States)は、1919年にアメリカ合衆国最高裁判所で判決が下された、第一次世界大戦中の徴兵に対して被告はアメリカ合衆国憲法修正第1条に保証される言論の自由を持っているかという問題に関する判決である。

最終的にこの判例は「明白かつ現在の危険」規則を築いたものとなった。

事件の概要[編集]

アメリカ社会党書記であるチャールズ・シェンクは、徴兵資格のある者に向けて15,000枚のリーフレットを印刷・配布し、徴兵制度への反対を宣伝した。このリーフレットには、「脅迫に屈するな」「貴方の権利を主張せよ」「もし貴方が権利を主張し支持しなければ、アメリカ合衆国の全ての市民と住民が保持する厳粛な義務である権利を否定するか軽んじることに手を貸していることになる」というような声明が入っていた。

判決[編集]

裁判所はオリバー・ウェンデル・ホームズ・ジュニアが書いた意見を全会一致で支持し、シェンクの刑事上の有罪判決は合憲であるとした。「国が戦時にあるとき、平和な場合には発言できた多くの事柄が戦争遂行に対する障害になるようなときには、その発言は人が戦っている限り認められるものではない。そのような発言を行う者は憲法で規定される権利によって保護されていると見なすことはできない」ので、アメリカ合衆国憲法修正第1条は、不服従を奨励する言論を保護するものではない。換言すれば、この判決は、戦時という状況では、平時に認められるよりも言論の自由に大きな制限を許されると裁定した。

ホームズ判事は意見書の最も有名な一節の中で「明白かつ現在の危険」テストを次のように述べた。

あらゆる判例における問題は、使われている言葉が、議会が妨げる権利のある実質的な悪をもたらすことになる明白かつ現在の危険を生み出すというそのような状況でかつそのような性格のもので使われているかということである。

この判例は「込み合った劇場で火事だと叫ぶ」という句の語源にもなった。これは「言論の自由を最も厳格に守るということは劇場で偽って火事だと叫び、恐慌を作り出す人を保護するものではない」というホームズの発言を言い換えたものである。

9対0という判決の結果としてシェンクは監獄に6ヶ月間収監された。

その後の法理学[編集]

「明白かつ現在の危険」テストを確立する要求事項はその後、「ホイットニー対カリフォルニア州事件」(1927年)に採用された「悪い傾向」テストで弱くなり、制限の少ないものになった。ホームズ判事とルイス・ブランダイス判事は、このテストにしり込みしたが、最終結果に同意した。ある者は「明白かつ現在の危険」テストは元々「悪い傾向」テストを言い換えたものに過ぎないと主張している。赤の恐怖(共産主義排斥気運)に続いた弾圧および戦争にたいする大衆の幻滅の後、ホームズは「明白かつ現在の危険」テストで言論の自由を支えようとした。この見解によって、類似した事件であるフローエベルクとユージン・V・デブスの事件で、ホームズが決して「明白かつ現在の危険」に言及しないと考えさせる利点があった。

これらの判例はどちらも後に、「悪い傾向」テストを「差し迫った無法行為」テストで置き換えた「ブランデンバーグ対オハイオ州事件(1969年)で適用範囲を狭くされることになった。

参考文献[編集]

  • Kessler, Mark (1993). “Legal Discourse and Political Intolerance: The Ideology of Clear and Present Danger”. Law & Society Review 27 (3): 559–598. doi:10.2307/3054105. 
  • Smith, Stephen A. (2003). “Schenck v. United States and Abrams v. United States”. In Parker, Richard A. (ed.). Free Speech on Trial: Communication Perspectives on Landmark Supreme Court Decisions. Tuscaloosa, AL: University of Alabama Press. pp. 20–35. ISBN 081731301X. 

関連項目[編集]

外部リンク[編集]