シェフィールド・スーパートラム

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
シェフィールド・スーパートラム

シェフィールド・スーパートラムSheffield Supertram)は、イギリスシェフィールド市内を走るライトレールである。

概要[編集]

路線図

1994年に運行を開始した[1]。市街地では道路上に併用軌道を敷設し、また、郊外の区間では廃線となった国鉄線の路線の転用により、日本で言うところの新設軌道として建設された[2]

現在は3路線で営業されているが、後述する開業後のバス会社との競合等の躓きから、乗客利用率は低調に推移している。

運賃は距離制を採用しており、最低運賃は1.10。切符は車内にいる車掌から購入する。以前は券売機があったが、現在は無い。

車両[編集]

スーパートラムの車両
開業当時の車両カラーリング

3車体連接構造の部分低床車両が使用されている[1]

車体をDUEWAG、電機品をシーメンスが製造した[3]。中間車体の両端と両先頭車体の前部に台車を有し、先頭車体の後部が中間車体に支えられたフローティング構造を採用[3]。先頭車体の中央部は床面高さ450mm[3]の低床構造でホーム高と合わせてあり、車椅子での乗車も可能なバリアフリー仕様となっている。この低床部分は連接3車体の床面積の約34%となる[3]。その他の部分の客室床面高さは880mmである[3]

乗降口は先頭車体中央の低床部分に片側2箇所ずつ設けられている[1]。中間車体には乗降口はなく、前後の先頭車体から乗下車を行う。

シェフィールドの躓き[編集]

シェフィールド・スーパートラムは世界各国の路面電車方式のLRTと比べると、決して成功したとは言いがたい。その要因は幾つか存在する。

  • バス会社との競合  
-シェフィールドの街にLRTを施設する計画が立ち上がった当時、マーガレット・サッチャー政権がバス会社に対して規制緩和方針を打ち出した。これがまずシェフィールドのLRT計画が躓く事になった第一の要因である。開業当初から新路線を拡大するバス会社との競合が激化し、乗客の奪い合いとなった。
  • 地形の問題     
-シェフィールドの街は起伏が激しく、正直な所路面電車には適した土地とは言えない。運営会社側は100パーミルの急勾配を登る事ができる強力な性能を持つ電車を発注したものの、それでもその電車ですら克服できないほどの急勾配が市内随所に存在し、それを避けるように路線を策定した結果、大幅に迂回した状態で線路を敷設しなければならなくなった。この為遠回りする事を嫌った乗客がますますバス利用に流れる結果となった。地形や需要を見越した的確な路線策定を行わなかったずさんな事例とされる。
  • 行政の非介入    
-ストラスブール(フランス)やポルト(ポルトガル)等のLRTを成功に導いたモデルケースとされる都市の場合、行政が民間と共同で綿密なプラン策定を行い、交通体系の見直しや都市改造などを市民からの声を聞きながら計画的に行ってきた。しかし、シェフィールドはそれを怠った為、運営会社側が「まず路線ありき」で計画を進めた為に、前述したバス会社との競合や、地形を考慮しなかった路線計画などが要因となって自らの首を絞める結果となった。

 結果として、シェフィールド・スーパートラムは累積赤字を重ねて敢え無く経営破綻し、ライバルであったバス会社を保有する「ステージコーチ・グループ」に買収されてしまうという皮肉な結果となった。さらにこの失敗が国内の世論をLRTに対して懐疑的な国勢へと傾けてしまった。路面電車タイプのLRTを計画していたケンブリッジでは、LRTを諦めガイドウェイバスの建設へと改めた他、計画を凍結或いは断念する都市まで現れる始末だった。これは後にトニー・ブレア政権がサッチャー政権下で進められたバス会社規制緩和等を見直した環境対策を見据えた政策を打ち出し、さらにその後ノッティンガム2004年に開業する"Nottingham Express Transit"が民間資本を導入したPFI事業を取り入れて成功を収めるまで続いた。結論から言えば、路面電車式のLRTへの進化が問われる時期にこのような失敗を生じてしまった事態が多大なる影響を与えてしまったという事は否めようの無い事実である。

シェフィールドの教訓[編集]

シェフィールド・スーパートラム

ゴムタイヤトラムを採用したものの、トラブル続きで開業間もなく一年間も運休する事態を招いたナンシー(フランス)と共に、シェフィールドはLRT計画が失敗したケーススタディとされることも多い。シェフィールドの失敗例を鑑みて、LRT施設には行政、民間、市民の密接な対話が、これ以降開業、或いは計画されるLRT計画には欠かせないものとなっている。そのためか、一時LRTに対して懐疑的だった国内世論も少しずつ変わり、バーミンガムロンドン(クロイドン)、ノッティンガムと次々開業している。   

路線データ[編集]

  • 路線距離:29km(そのうち約半分は併用軌道
  • 駅数:48駅
  • 軌間:1,435mm(標準軌
  • 電化区間:全線
  • 輸送実績:約1310万人(2005/06年)

脚注[編集]

  1. ^ a b c 鉄道ピクトリアル』1997年10月号(NO.643)、電気車研究会、p.2
  2. ^ 『鉄道ピクトリアル』1997年10月号(NO.643)、電気車研究会、p.52
  3. ^ a b c d e 里田啓「ヨーロッパの低床式LRVの動向」『鉄道ピクトリアル』1994年7月臨時増刊号(NO.593)、電気車研究会、pp.19-31掲載

外部リンク[編集]