ザ・ファイター (2010年の映画)

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ザ・ファイター
The Fighter
監督 デヴィッド・O・ラッセル
脚本 スコット・シルヴァー
ポール・タマシー
エリック・ジョンソン
原案 キース・ドリングトン
ポール・タマシー
エリック・ジョンソン
製作 デイヴィッド・ホバーマン
トッド・リーバーマン
ライアン・カヴァノー
マーク・ウォールバーグ
ドロシー・オーフィエロ
ポール・タマシー
製作総指揮 タッカー・トゥーリー
ダーレン・アロノフスキー
レズリー・ヴァレルマン
キース・ドリングトン
エリック・ジョンソン
出演者 マーク・ウォールバーグ
クリスチャン・ベール
エイミー・アダムス
メリッサ・レオ
音楽 マイケル・ブルック英語版
撮影 ホイテ・ヴァン・ホイテマ
編集 パメラ・マーティン
製作会社 レラティビティ・メディア
マンデヴィル・フィルムズ英語版
クローセスト・トゥ・ザ・ホール
ワインスタイン・カンパニー
配給 アメリカ合衆国の旗 パラマウント映画
日本の旗 ギャガ
公開 アメリカ合衆国の旗 2010年12月10日(限定)、12月17日(拡大)
日本の旗 2011年3月26日
上映時間 115分
製作国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
言語 英語
製作費 $25,000,000[1]
興行収入 $129,190,869[1]
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ザ・ファイター』(原題:The Fighter)は、デヴィッド・O・ラッセル監督、マーク・ウォールバーグ製作・主演による2010年アメリカ映画で、プロボクサーのミッキー・ウォードディッキー・エクランド英語版を描いた伝記・スポーツ映画である。ラッセル監督とウォールバーグのコンビは『スリー・キングス』、『ハッカビーズ』に続いて3度目である。第83回アカデミー賞助演男優賞クリスチャン・ベール)、助演女優賞メリッサ・レオ)の2部門を受賞した。

あらすじ[編集]

1993年、マサチューセッツ州ローウェル。新人プロ・ボクサーのミッキーは勝ち星も少なく、道路工事で日銭を稼ぐ日々だった。トレーナーは父親違いの兄ディッキーで、母親がマネージャーという密な家庭環境で、一家はどこに行くのも一緒だった。ディッキーは以前は有望なボクサーだったが、今は麻薬に溺れ、犯罪歴も多いホラ吹きだった。そんな兄弟を密着取材に来るケーブルテレビの撮影班。有頂天になったディッキーは、自分の復帰戦の映画撮影だと町の人々に吹聴した。

ファイトマネー欲しさに、ミッキーに過酷な試合を強いる母親とディッキー。ミッキーと相思相愛になったシャーリーンは、兄に支配されたミッキーの生き方を批判した。大手ジムから好条件で招かれ、一人で移籍したいと家族に話すミッキー。ディッキーは大手ジムの給料分の金でミッキーを引き止めようと強盗を働き、警官隊と乱闘になった。駆け付けて巻き込まれ、右の拳を骨折するミッキー。

刑務所に入り、囚人たちと共にテレビで自分の密着番組を観るディッキー。それは「薬物汚染」のドキュメントで、ディッキーは身を滅ぼした中毒患者の実例でしかなかった。さすがにショックを受け、我が身の現実を思い知るディッキー。

一度は引退を考えたものの、ミッキーは別のトレーナーの元で復帰した。だが、新しい戦法では勝てず、兄が正しかったことを今更ながらに痛感するミッキー。やがて出所したディッキーは弟の元へ戻り、団結した兄弟は、遂にウェルター級チャンピオンに輝くのだった。

キャスト[編集]

※括弧内は日本語吹替

ディッキーとは違いボクサーとしては大成していない。複雑な家庭環境で辟易している。
ミッキーの異父兄。12歳の頃にボクシングを始めたが、年齢と名前をごまかしていた。シュガー・レイ・レナードからダウンを奪ったこともあり、当人も自慢している。「ローベルの誇り」と言われるほど、地域の期待を一身に背負い、才気溢れるボクサーだが、短気で怠惰な性格から破綻した毎日を送っている。そしてドラッグに手を出してしまう。落ちぶれてしまったものの、身内に対する愛情は失っておらず、弟のことも今でも気にかけている。
バーで働く女性。ミッキーと仲良くなる。
ミッキーとディッキーの母。ミッキーのマネージャーも務める。
ミッキーの父。
タクシー会社の社長。
  • ゲイリー・“ブー・ブー”・ギウフリダ - ポール・キャンベル
  • ケイシー・ウォード - ケイトリン・ドワイヤー
  • カレン - シャンティ・ソク (横川明代)
  • ルウ・ゴールド - テッド・アーチディ英語版
  • マイク・トマ - ロス・ビッケル(勝部演之
ジムの経営者。ミッキーをジムにスカウトする。
その他日本語吹替
丸山壮史竹本英史伊丸岡篤水野ゆふ榊原奈緒子中司ゆう花牛田裕子町田政則坂本くんぺい菊本平佐々木啓夫牛山裕樹西尾将國分和人

製作[編集]

2003年7月にスカウト・プロダクションズが映画化権を手に入れた。ポール・タマシーとエリック・ジョンソンが脚本執筆の為に雇われ[2]、ルイス・コーリックによって書き直された[3]。2005年前半にマーク・ウォールバーグが製作に参加し[4]、「非現実的な格闘シーンにはしたくない」と語った[5]。2007年2月、アメリカの配給のパラマウント映画は、兄弟愛と救済のテーマを強調する目的でコリックの草稿を書き直すためにポール・アタナシオを雇った。ウォルバーグは2007年6月にマサチューセッツ州での製作開始を望み[3]マーティン・スコセッシに監督させるために脚本を読ませたが、断られてしまった[6]。2007年3月にダーレン・アロノフスキーが監督として雇われ[7]、9月にはスコット・シルヴァーがリライトの為に雇われた[8]

撮影は2008年10月開始が予定されていた[9]。 当初、ディッキーはマット・デイモンが演じる予定だったがスケジュールの都合で降板し、次の候補となったブラッド・ピットもまた『イングロリアス・バスターズ』への出演を理由に降板。最終的にクリスチャン・ベールが務めることとなった[10][11]。また、アロノフスキーは『ロボコップ』のリメイクに取り掛かるために監督を降板した[12][13]。ウォルバーグとベールはアロノフスキーの代わりにデヴィッド・O・ラッセルを選んだ[10]。アロノフスキーは製作総指揮として本作に係わり続けることとなった[13]。2009年4月、レラティビティ・メディアが出資に名乗りを上げ[14]、翌月にはワインスタイン・カンパニーが国際配給権を購入した[15]。2009年7月13日より、33日間の予定、1100万ドルの予算の下で主要撮影を開始した[10]

撮影はマサチューセッツ州ローウェルで行われた。ボクシングの試合のシーンはツォンガス・センターなどで撮影された[16][17]。マーク・ウォールバーグは役作りの為にトレーナーを雇い、その結果この映画の出演料よりも50万ドル多くのギャラを彼らに支払った[18]

実話の映画化[編集]

  • 映画のクライマックスとして描かれたライトウェルター級王座戦のWBU(世界ボクシング連合)はプロボクシングの世界では認知度の低いマイナー団体であり、WBUの王座になったところで誰もミッキーには注目していなかった。ミッキーのボクシング人生が真に輝くのは、その後、"稲妻"の異名を持つアルツロ・ガッティと繰り広げた死闘である。[19]

評価[編集]

批評[編集]

Rotten Tomatoesでの評論家の支持率は89%(163名中145名)で、平均点は10点満点で7.9点である[20]Metacriticでは39のレビュー中肯定的なものが33で、平均点は100点満点で78点だった[21]。『スポーツ・イラストレイテッド』は、過去10年間で最高のスポーツ映画と評した[22]

興行成績[編集]

2010年12月10日に北米4館で限定公開され、初週末3日間で30万0010ドルを稼いだ[23]

受賞歴[編集]

授賞式 部門 候補者名 結果
アカデミー賞[24]
作品賞 ノミネート
監督賞 デヴィッド・O・ラッセル ノミネート
助演男優賞 クリスチャン・ベール 受賞
助演女優賞 エイミー・アダムス ノミネート
メリッサ・レオ 受賞
脚本賞 スコット・シルヴァー、ポール・タマシー、エリック・ジョンソン、キース・ドリングトン ノミネート
編集賞 パメラ・マーティン ノミネート
英国アカデミー賞[25]
助演男優賞 クリスチャン・ベール ノミネート
助演女優賞 メリッサ・レオ ノミネート
オリジナル脚本賞 スコット・シルヴァー、ポール・タマシー、エリック・ジョンソン ノミネート
放送映画批評家協会賞[26]
作品賞 ノミネート
助演男優賞 クリスチャン・ベール 受賞
助演女優賞 エイミー・アダムス ノミネート
メリッサ・レオ 受賞
アンサンブル演技賞 受賞
オリジナル脚本賞 スコット・シルヴァー、ポール・タマシー、エリック・ジョンソン ノミネート
全米監督協会賞
長編映画監督賞 デヴィッド・O・ラッセル ノミネート
ゴールデングローブ賞[27]
作品賞(ドラマ部門) ノミネート
監督賞 デヴィッド・O・ラッセル ノミネート
主演男優賞(ドラマ部門) マーク・ウォールバーグ ノミネート
助演男優賞 クリスチャン・ベール 受賞
助演女優賞 エイミー・アダムス ノミネート
メリッサ・レオ 受賞
全米映画俳優組合賞[28]
キャスト演技賞 ノミネート
助演男優賞 クリスチャン・ベール 受賞
助演女優賞 エイミー・アダムス ノミネート
メリッサ・レオ 受賞

参考文献[編集]

  1. ^ a b The Fighter (2010)” (英語). Box Office Mojo. 2011年11月24日閲覧。
  2. ^ Staff (2003年7月31日). “Scout Wins Boxing Tale”. Variety. http://www.variety.com/article/VR1117890229 2010年12月4日閲覧。 
  3. ^ a b Fleming, Michael (2007年2月13日). “Wahlberg, Damon step into ring”. Variety. http://www.variety.com/article/VR1117959451 2010年12月4日閲覧。 
  4. ^ Zimmerman, Mike (2010年9月15日). “The Mark Wahlberg Workout: Wahlberg's Theory of Evolution”. Men's Health. http://www.menshealth.com/celebrity-fitness/mark-wahlberg-fighter-workout 2010年12月4日閲覧。 
  5. ^ Jacks, Brian (2007年7月9日). “Wahlberg Ready To Rumble For Aronofsky's 'Fighter'”. MTV News. http://moviesblog.mtv.com/2007/07/09/wahlberg-ready-to-rumble-for-aronofskys-fighter/ 2010年12月4日閲覧。 
  6. ^ "Stax" (pseudonym) (2007年2月22日). “Wahlberg Talks The Fighter”. IGN. http://movies.ign.com/articles/766/766656p1.html 2010年12月4日閲覧。 
  7. ^ Fleming, Michael, and Pamela McClintock (2007年3月26日). “Aronofsky in talks to direct 'Fighter'”. Variety. http://www.variety.com/article/VR1117961861 2010年12月4日閲覧。 
  8. ^ Fleming, Michael, and Tatiana Siegel (2007年9月20日). “Brad Pitt laces up for 'Fighter'”. Variety. http://www.variety.com/article/VR1117972382 2010年12月4日閲覧。 
  9. ^ Adler, Shawn (2008年6月30日). “Mark Wahlberg Reveals 'The Fighter' Will Take The Ring This Fall”. MTV News. http://moviesblog.mtv.com/2008/06/30/mark-wahlberg-reveals-the-fighter-will-take-the-ring-this-fall/ 2010年12月4日閲覧。 
  10. ^ a b c Gorov, Lynda (2010年12月5日). “Mark & Micky”. The Boston Globe. http://www.boston.com/ae/movies/articles/2010/12/05/mark_wahlberg_revisits_his_working_class_roots_for_his_role_in_the_fighter/ 2010年12月5日閲覧。 
  11. ^ 【第83回アカデミー賞】『ザ・ファイター』クリスチャン・ベールの助演男優賞はブラッド・ ピットのおかげ?ORICONキャリア 2011年3月4日
  12. ^ “"It's Official! Darren Aronofsky Will Build A Better ROBOCOP"”. Collider.com. (2008年6月25日). http://www.collider.com/dvd/news/article.asp?aid=8608&tcid=3 2010年12月30日閲覧。 
  13. ^ a b Taylor, Drew (2010年12月2日). “Exclusive: Darren Aronofsky Talks Natalie Portman's Terrors & Metamorphosis' in 'Black Swan'”. indieWire. http://blogs.indiewire.com/theplaylist/archives/2010/12/02/darren_aronofsky_black_swan_interview 2010年12月4日閲覧。 
  14. ^ Fleming, Michael,, and Tatiana Siegel (2009年4月20日). “Bale in ring with Wahlberg for 'Fighter'”. Vareity. http://www.variety.com/article/VR1118002638 2010年12月4日閲覧。 
  15. ^ Swart, Sharon (2009年5月20日). “TWC steps in ring with 'Fighter'”. Variety. http://www.variety.com/article/VR1118004022 2010年12月4日閲覧。 
  16. ^ Lovece, Frank. "Winning Combination: Mark Wahlberg and David O. Russell Champion 'The Fighter'", Film Journal International, December 3, 2010
  17. ^ Sackowitz, Karen. "Blood, Sweat, Cheers: Lowell gym helps youths learn boxing, confidence, and it stars in a new movie", The Boston Globe, June 10, 2010. WebCitation archive
  18. ^ 4000万円以上も赤字のマーク・ウォールバーグ、『ザ・ファイター』のトレーニング代に”. シネマトゥデイ (2010年12月17日). 2010年12月30日閲覧。
  19. ^ 「映画になった奇跡の実話」 鉄人ノンフィクション編集部
  20. ^ The Fighter (2010)” (英語). Rotten Tomatoes. Flixster. 2010年12月30日閲覧。
  21. ^ The Fighter Reviews, Ratings, Credits, and More at Metacritic”. Metacritic. 2010年12月22日閲覧。
  22. ^ Torre, Pablo S.. “And New Champion ...”. Sports Illustrated. 2010年12月20日閲覧。
  23. ^ Weekend Box Office Result for December 10-12, 2010” (英語). Box Office Mojo. 2010年12月30日閲覧。
  24. ^ Stephen Schaefer. “Surprises amid the 83rd Oscar nominations”. 2011年1月25日閲覧。
  25. ^ 'The King's Speech' leads BAFTA Film Awards with 14 nominations”. 2011年2月24日閲覧。
  26. ^ Critics' Choice Awards”. 2011年1月15日閲覧。
  27. ^ The 68th Annual Golden Globe Awards NOMINATIONS | OFFICIAL WEBSITE of the HFPA and the GOLDEN GLOBE AWARDS”. Goldenglobes.org (2010年12月14日). 2011年1月27日閲覧。
  28. ^ The 17th Annual Screen Actors Guild Awards”. 2011年1月18日閲覧。

外部リンク[編集]