サーマルプリンター

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サーマルプリンター(Thermal Printer)は、熱によって紙媒体に印字を行なうプリンターの一種である。転写する方式によっていくつか種類があり、専用の感熱紙に印刷を行う感熱式プリンターと、インクリボンを使用する熱転写プリンターとがある。

サーマルプリンターの一種(ポラロイド PoGo)

感熱式プリンター[編集]

特徴[編集]

感熱式プリンターとは、熱を加えると色が変化する専用紙(感熱紙)に熱した印字ヘッドを当てて印刷する感熱方式を用いたプリンターである。印字ヘッドを感熱紙に直接当てることから「ダイレクトサーマルプリンター」とも呼ばれる。

動作音が非常に小さく、小型軽量に適した比較的簡単な構造で、コストが抑えられるという特長がある。インクリボンやインクカートリッジといったインク類を使用しないため、唯一の消耗品は感熱紙のみである。

一方で、印刷には感熱紙という専用紙が必要であり普通紙などが使用できないこと、時間が経過すると色あせてしまい長期保管には向かないことなどから、現在は特定の用途を除き、あまり使用されていない。他方、フルカラー印刷が可能なサーモオートクローム方式ZINK方式も新たに開発されている。

概歴[編集]

1970年代後期頃より業務用のファックスのプリンターとして普及が始まる。それまでに主流であったタイプライター的なインパクトプリンターと比較して、静音性が高いことなどが評価され、急速に広まってゆく。

初のサーマルプリンターは感熱紙と5x7ドット同時加熱印刷方式はICの発明の半導体技術からテキサス・インスツルメンツ社が発明し1969年にコンピュータ用印刷表示機SILENT 700として発表された。当時のタイプライター、IBMセレクトリック(通称回転ゴルフボール)やソレノイドによるワイヤー押出ドットなどの各方式のインパクト印刷騒音から静音化された。その後小型コンピュータではキーボード付き各方式の印刷機から現在の表示はCRTLCDモニターへ、印刷はプリンターへと分担されてゆく。

その後、ワープロパソコンのプリンターとして普及するが、1980年代中期には、カラー印刷が可能な熱転写プリンターに置き換わった。

現在、一般向けとしてはファックスのプリンターとして採用される程度に留まるが、業務用途のプリンターとしては、ランニングコストが重視され単色の印字で対応可能な、レジスター(レシート)や自動券売機(切符、チケット)、オーダーエントリーシステム(飲食店の伝票)のプリンターなどの機器で使用されている。

サーモオートクローム方式[編集]

サーモオートクローム(TA)方式とは、フルカラー印刷が可能な感熱式プリンターの一方式である。

顕色剤を内包した感温性マイクロカプセルを加熱することにより発色させ、紫外光によってジアゾニウム塩を分解することで定着させる機構の、内部発色型である。マイクロカプセルの特性をCMY色の三原色)の各色毎に変える事によって1台のサーマルヘッドの出力を変える事で各色の階調表現を可能にした。

2002年に、開発元である富士フイルムが「Printpix方式」と呼称を改め[1]、「Printpix」ブランドで家庭用製品も投入したが、現在は業務用も含めて市場から姿を消している。

ZINK Zero Ink方式[編集]

ZINK Zero Ink(じんく ぜろ いんく)方式とは、2007年にZINK Imaging社が開発した、フルカラー印刷が可能な感熱式プリンターの一方式である[2]

ベースペーパーの上にシアンマゼンタイエローの各発色層が染料結晶として備わっており、この染料結晶を熱で溶かすことにより発色させる仕組みとなっている。用紙表面はコート層により保護されており、印刷直後の乾燥などを考慮する必要がない[3]

インクを必要としない手軽さなどから、ポラロイドの「PoGo」やデルの「Wasabi」、タカラトミーの「xiao」などに採用されている。

熱転写プリンター[編集]

熱転写プリンターとは、インクリボンに塗布されたインクを用紙に転写して印刷する熱転写方式を用いたプリンターである。熱溶性顔料インクを熱で溶かして転写する熱溶融型と、昇華染料インクを昇華させて転写する昇華型とがある。

熱溶融型[編集]

熱溶融型は、インクリボンに塗布された熱溶性顔料インクを、熱した印字ヘッドによって紙媒体に転写する。一般に「熱転写プリンター」といえばこの熱溶融型を指すことが多い。

原理上ドット毎のインク濃度が変えられないため、ドットサイズや密度を変えることで濃淡を表現する。顔料インクを用いるため、普通紙印刷でも耐水性などに優れるという利点がある。その一方で、複数のインクリボンを用いるカラー印刷では、色の数だけ同じ動作を繰り返す必要があることから、色数が増える分だけ印刷に時間がかかり、色ズレも発生しやすくなるという欠点もある。

かつてはワープロやパソコン用のプリンターとして広く一般に普及した。しかし、安価で高速なインクジェットプリンターの高性能化に伴い、一部の業務向け製品を除き減少傾向にある。

昇華型[編集]

昇華型(Dye-sublimation printer)は、インクリボンに塗布された昇華性染料インクを、熱した印字ヘッドによって専用のコート紙に転写する。熱転写プリンターの一種ではあるが、一般には「昇華型プリンター」と呼ばれる。

昇華型は印字するドット毎に転写するインクの濃度が調整できるため階調表現に優れ、写真印刷用途にも耐えうる画質が得られる。染料インクが使用されるため耐水性や耐候性は劣るが、近年の昇華型は表面にラミネート処理を施すことで耐水性・耐候性を高めている。ただ、感熱式プリンターと同様に印刷には専用用紙を必要とするため高コストであることや、色ごとに印刷動作を繰り返すため印刷に時間がかかるといった熱溶融型と同様の欠点もある。

一般には写真印刷用の小型プリンターとして、業務用にはデザイン出力用やDTP用途の大型プリンターとして用いられる。

近年の傾向[編集]

現在は、一般へのデジタルカメラの普及も後押しして家庭用フォトプリンターとして昇華型の小型プリンターが開発されている。また、インクやトナーのいらない感熱式は、小型軽量のモバイルプリンター向けに活用が見直され始めている。熱溶融形は、家庭用インクジェットプリンターではいまのところ不可能な特色(白色、金色など)の印刷が可能なことから、一部で引き続き販売されている機種もある。

2011年現在、日本国内で入手可能な家庭用サーマルプリンター製品は、感熱紙タイプのFAX機のほか、キヤノンのSELPHYシリーズ(昇華型フォトプリンター)やブラザーのPocketJetシリーズ(感熱紙モバイルプリンター)、あるいはZINK Zero Ink方式を採用したデルの「Wasabi」やタカラトミーの「xiao」などがある。かつてはアルプス電気マイクロドライプリンタシリーズ(溶融型熱転写プリンター)を販売していたが、2010年5月末で終了した[4]

関連項目[編集]

出典[編集]

外部リンク[編集]