サーベイヤー

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サーベイヤー(Surveyor)とは、イギリスにある建物や土地造成設計などの都市建設事業不動産事業にかかわる職能。資格名としてもこの名称が使用されている。 サーベイヤーが王室建設局の最高技監の職名であった.

日本における用例[編集]

日本で一般にイギリスのサーベイヤーをさす場合、王立サーベイヤー協会で認定されるチャータード・サーベイヤーを指すか、コストマネジメント専門家・積算技術者であるクオンティティ・サーベイヤー(QS)を指している。

イギリス独自の職能名であるが、主に不動産における各種の「調査」「鑑定」を行うことから、日本語に訳すときは調査士鑑定士などと訳される。それぞれ日本では土地家屋調査士不動産鑑定士の略称として使用されているが、どちらも公益を重視した資格であり、職務内容的にも歴史的なサーベイヤーの位置付けに合致している。

その他、行政機関においては、法務省による日本法令外国語訳データベースシステムで建築主事を「Surveyor」と訳している例がある。

歴史的背景[編集]

ヨーロッパ諸国に出現したアーキテクトの形成にも歴史的段階があり、サーベイヤーはアーキテクトに先行する職能としてイギリスに以前からみられた職名で、一部がのちにアーキテクト(建築家)へと分離発展する。

16世紀から18世紀まで長らくアーキテクトなどと同義に使われたサーベイヤーは、歴史的にみるとクラフトマンとは違った系譜の下で発展してきている。

サーベイヤーの前身は12世紀に設置されたビュアー(Vewer「監査官」)という会計検査的な側面と現場監督的側面をもつ職務の官職にさかのぼる。当時イギリスは国家形成期で王室建設局は直轄監理できるほど発達していなく、技術職人・技能士からの人足集めや手配から資材の購入と納品管理、運搬から建設資金の運用など建設工事の責任主体は各地方州長官が担った。

このとき州政府の建設工事について監督し、工費の正当性を財務裁判所で証言する役目がビュアーである。ビュアーには主に医者牧師など、ほかの職業をもち王室に信頼を得ている人が就任しており、一般に建築技術等については素人であったとされている。

その後、国家体制の集権化の中で増大する工事量をさばくために、工事管理者の位置づけのキーパー(keeper)という職が出現する。さらには、現場監督という位置づけである建設局所属のクラーク(clerk of the work)が現われる。とくに、それまでの証言方式から書類方式とする1236年の会計制度の改革に伴い、王室建設局はクラークを軸に展開する。

1378年にはイギリス全土の王室建築工事をすべて統轄するクラークが確立し集権化が達成されるとともに、ここから14世紀に「クラークがサーベイする」という言い方が生まれる。集権国家体制の中で建設工事全般の管理という任務が強く出されたことに由来したのである。

14世紀には王室建設局でもクラークにあたる任務者に、一時期サーベイヤーという官職名をもちいている。こうしてビュアーが徐々にサーベイヤーと発展していくようになり、その任務もすべての大工石工その他の職人手配や、未熟な職人は腕のある職人に入れ替えるなどや仕事をやり直しを含め、しかるべく遂行するよう、彼らが王室の城郭や館その他国内の領地で行われる仕事全般を担当し、職務に属する諸々の事項が確立していくことになる。

15世紀から16世紀にかけて、名実ともにサーベイヤーが王室建設局の最高技監の職名になっていく。他方、18世紀修道院領没収という政策によって、その払い下げを受けた新興地主の土地・財産(イギリスでいうところのエステート)の管理が急増し、民間においてこの仕事を引き受ける職能が大量に出現し、これらがエステート・サーベイヤーとして発展する。

こうしてイギリスに発生したサーベイヤーは14、5世紀の建設工事管理的職務に、さらに測量・物件鑑定・見積り積算など、今日のサーベイヤー的な職務がだんだんと加わって、民間の建設コンサルタント的職能の確立をみていった。

脚注[編集]

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参考文献[編集]

  • 秀逸建築家シリーズ 10選 アラップ・アソシエイツ 、シグマユニオン、1995年
  • 近代世界システムと植民都市、布野 修司、京都大学学術出版会、2005年
  • 建築積算資格者試験問題と解説 積算技術研究会