サンブーカ

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サンブーカとは、リキュールに分類される混成酒である。サンブーカには、大きく分けて従来の無色透明のサンブーカと、新しく登場した黒色のオパール・ネラと言うサンブーカとの2種類(2銘柄ではない点に注意)が存在する。原料の1つにエルダー(Elder)を用いた、イタリア特産のリキュールとして知られている。

サンブーカという名称の由来[編集]

サンブーカは、様々な原料を使って製造されているリキュールである。サンブーカには、酒の色が無色透明のサンブーカの他に、酒の色が黒色をしているオパール・ネラが存在する。サンブーカという酒名の由来となっているのは、このどちらの色のサンブーカにも原料の1つとして使用されている、エルダー(ニワトコ)が関係していると一般に言われている 。 ただし、酒名の由来の詳細については諸説ある。まず、酒名はエルダー・ベリー(エルダーの果実)を意味する「サンブークス・ニグラ」に由来するという説が存在する [1] 。 他に、酒名はニワトコ(エルダー)のラテン名である「サンブカス」に由来するという説が存在する [2] 。 さらに、サンブーカはイタリア特産のリキュールの1つとしても知られているわけだが、イタリアのフィレンツェ南部のサンブーカ村の付近はエルダーの特産地として知られ、ここのエルダーはスイカズラ科サンブークス属に属しており、そのエルダーを使ってこの酒が誕生したことから、酒名はサンブーカとなったという説も存在する [3] [4] 。 これらに対し、全く異なる説を取る者もいる。サンブーカは、実は元々アラブから伝来した酒であり、このサンブーカという名は、「バラの芳香」という意味のアラビア語訛化したものであるという説である [5] 。 しかしながら、参考文献の数から見ても明らかなように、アラビア語の訛化説を取る者は少数派である。

無色透明のサンブーカ[編集]

無色透明のサンブーカは、従来から製造されてきたサンブーカであり、銘柄も1つではない。成分も銘柄によって差があるので一概には言えないが、アルコール度数は40度前後である [1] 。 同様にエキス分もまちまちであり、21%~33%程度とする書籍もあるが [5] 、下記の「無色透明なサンブーカの銘柄」の節にあるように、もっとエキス分の多い銘柄も複数存在する。

無色透明なサンブーカの原料[編集]

無色透明なサンブーカの原料は、銘柄によって違う可能性がある(通常リキュールの原料は詳細を公開しないためハッキリしない)ものの、以下のような原料が使用されているとされる。

まず、エルダーが使用されている [3] [1] [2] [6] [4] [5] 。 ただし、エルダー(スイカズラ)の花を使用しているとする本 [3] [6] [4] 、エルダー(ニワトコの1種、スイカズラ)の花の抽出液を使用しているとする本 [1] 、西洋ニワトコの実(つまり、エルダーの実、エルダーベリー)を使用しているとする本 [2] [5] などがあって、どのような状態のエルダーを使用しているのかについてはハッキリとしない(銘柄によって違うことも考えられる)。

さらにエルダー以外の原料も書籍によってまちまちであり、リコリス甘草[5] [1] [3] [2]アニスの種子 [1]コリアンダー [3]オレンジの花 [3] [4] などといったものが、酒に香味を添えるために用いられる原料として挙げられている。なお、当然ながら後述の黒いサンブーカであるオパール・ネラとは、この原料が異なっているのは言わずもがなである。

他に、砂糖蒸留酒がサンブーカの原料として挙げられる [3]

無色透明なサンブーカの製法[編集]

これも銘柄によって異なっている可能性がある(通常リキュールの製法は詳細を公開しないためハッキリしない)ものの、おおよそ次のようなものとされている。

エルダーの香味を基調として [1] 、上記(無色透明サンブーカの原料の節)に挙げられているような酒に香味を添えるための原料を、まず蒸留酒に漬浸する。ある期間漬浸したことによってできる、蒸留酒に香味が抽出されてできた混成酒を蒸留する。こうして得られた香味液に、砂糖、さらに蒸留酒を適量加えたものが製品となる [3]

無色透明なサンブーカの銘柄[編集]

無色透明なサンブーカの銘柄としては、サンブーカ・ディ・ガリアーノ(ガリアーノ社が製造しているサンブーカ。無論、ガリアーノとは別の酒。アルコール度数は42度。 [7] )、モリナリ社がしているサンブーカ(アルコール度数42度、エキス分36%。 [6] )、ロマーナ・サンブーカ(ロマーナ・サンブーカ社が製造しているサンブーカ。アルコール度数40度、エキス分40%。 [4] )、サンブカ・ラマゾッティ(片仮名表記ではサンブーカ・ラマゾッティとも書かれる。フラテッリ・ラマゾッティ社が製造しているサンブーカ。アルコール度数38度、エキス分34%。 [4] [注釈 1] )、などがある。

無色透明なサンブーカの飲用法[編集]

無色透明なサンブーカはストレートでも飲まれる他、例えば、サンブーカの炭酸水割り など、カクテルの材料に使われて飲まれることもある。なおサンブーカは、ストレート以外に幾つかよく知られた飲み方があるので、ここではその飲み方について記述する。

カフェ・コレット[編集]

カフェ・コレットとは、エスプレッソと何らかのを少量混ぜて飲まれる、イタリア発祥の飲料である [8] 。 カフェ・コレットに入れられる酒の種類は問われない(飲む人が好きな酒を入れて構わない) [9] 。 それでも、この無色透明なサンブーカは、カフェ・コレットに入れられることもある代表的な酒の1つとして知られる。なお、カフェ・コレットに入れる酒として無色透明なサンブーカを選択した場合、カフェ・コレットと呼ばれる他に、カフェ・サンブーカ(カフェ・サンブカ)と呼ばれることもある [10]

サンブーカ・コン・モスカ[編集]

サンブーカ・コン・モスカはサンブーカの有名な飲み方の1つである。これにもコーヒーが用いられるのだが、こちらはコーヒー豆そのものが用いられる。なお、この飲み方は、近年は世界的に行われている [5] 。 そして、文学作品にもこの飲み方が登場している [11]


黒色のサンブーカ[編集]

オパール・ネラ・サンブーカ(Opal nera sambuca)とは、黒色のサンブーカであり、リキュールの1種に分類される混成酒である。黒色をしていることから一般にブラック・サンブーカと呼ばれて、他の無色透明なサンブーカとは区別される。また、片仮名表記では黒色のサンブーカであることが判りやすいように、オパール・ネラ・ブラック・サンブーカと書かれる例も見られるが、本稿では以降、オパール・ネラ・サンブーカに統一する。

オパール・ネラ・サンブーカの概要[編集]

オパール・ネラ・サンブーカは、1989年に発売された黒色のリキュールである [3] [6] 。 なお、酒名にあるオパール・ネラとは「黒いオパール」という意味である [11] 。 オパール・ネラ・サンブーカのベースとなっているのは、ビートを原料として作られた中性スピリッツである [3]アルコール度数は40度 [1] [3] [6] 。 なお、エキス分については30%と書いてある書籍と [3]エキス分は35%と書いてある書籍があって [6] 、日本ではデータが混乱している [編集者の方へ 1] 。 1989年当時にも黒ビールコーヒー・リキュールのように黒っぽい色をした酒は存在していたものの、どれも赤い色が混ざった暖色系のブルネットのような色、つまり黒味がかった茶色の酒であった [3] 。 これに対して、このオパール・ネラ・サンブーカは、紫色系の黒色で、この色は従来の酒には存在しないものだった [3] 。 このため、オパール・ネラ・サンブーカが登場した当時は「黒い衝撃」とも言われた [3] 。 なお、この黒色はエルダーの実の色である [6] [1] [3]

オパール・ネラ・サンブーカの原料と製法[編集]

ビートを醗酵させて作った醸造酒を蒸留することによって作った、中性スピリッツをベースとして使っているのは先述の通りである。 ここに、エルダーの花 [1] [3] 、アニス [1] [3] 、リコリス(甘草) [1] [3]レモン果皮 [1] [3]蜂蜜 [3] などを用いて香味付けを行う。 さらに、エルダーの実を加えることで黒色を出している [1] [6] [3]

オパール・ネラ・サンブーカの飲用法[編集]

オパール・ネラ・サンブーカはストレートでも飲まれる他、カクテルの材料に使われて飲まれることもある。以下に比較的よく知られたカクテルを挙げる。

ブラック・レイン[編集]

ブラック・レインはスパークリングワインをベース(基酒)とするカクテルである。オパール・ネラ・サンブーカの影響で、その名の通り黒い色に仕上がる。

ブラック・トルネード[編集]

ブラック・トルネードとは、冷たいタイプロングドリンクに分類される、カクテルの1つである。このカクテルは、1997年に開催されたカクテルコンクールのグランプリ作品であり、創作者は梨木 美裕樹である [12] 。 このため、日本では比較的知られたカクテルの1つである。

ブラック・トルネードの標準的なレシピ[編集]
ブラック・トルネードの作り方[編集]

螺旋状にむいたライムの果皮をコリンズ・グラス(容量300〜380ml程度)の内側に垂らし、ホーセス・ネック・スタイルのように飾った上で、クラッシュド・アイス(砕いた氷)を詰める [13] 。 そこにホワイト・ラム、オパール・ネラ・サンブーカ、ライム・ジュース、イエーガーマイスターをシェークしたものを注げば完成である。

ブラック・トルネードの備考[編集]

オリジナルレシピで用いられたラムの銘柄は、レモン・ハートのホワイト・ラムである。


関連項目[編集]

注釈[編集]

  1. ^ なお、 小島 武彦 監修 『リキュールで楽しむカクテル321』 p.60 日本文芸社 2003年10月25日発行 ISBN 4-537-20233-5 によれば、このサンブカ・ラマゾッティは古代ローマの処方を元に作られているとされている。 しかし、蒸留酒が作られたのはもっと時代がくだってからと考えられる (ヨーロッパで蒸留酒の製法が確立されたのは、一般に中世の錬金術師達によってとされる)ため、 上記の一般的な製法に必要とされる技術が古代ローマに存在していたことは考えにくく、 この「古代ローマの処方を元に作られている」という文言についての信頼性は疑問である。

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g h i j k l m n 福西 英三、花崎 一夫、山崎 正信 『新版 バーテンダーズマニュアル』 p.153 柴田書店 1995年10月31日発行 ISBN 4-388-05765-7
  2. ^ a b c d 吉田 芳二郎 『カラーブックス 828 洋酒入門 (第2版)』 p.127 保育社 1992年4月30日発行 ISBN 4-586-50828-0
  3. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v 福西 英三 『リキュールブック』 p.18 柴田書店 1997年7月1日発行 ISBN 4-388-05803-3
  4. ^ a b c d e f 小島 武彦 監修 『リキュールで楽しむカクテル321』 p.60 日本文芸社 2003年10月25日発行 ISBN 4-537-20233-5
  5. ^ a b c d e f 河野 友美 編集 『新・食品事典12 酒』 p.131 真珠書院 1992年7月20日発行 ISBN 4-88009-112-X
  6. ^ a b c d e f g h 成美堂出版 編集 『リキュールとカクテルの事典』 p.87 成美堂出版 2001年8月20日発行 ISBN 4-415-00835-6
  7. ^ 吉田 芳二郎 『カラーブックス 828 洋酒入門 (第2版)』 p.37、p.127 保育社 1992年4月30日発行 ISBN 4-586-50828-0
  8. ^ Simonis, Damien; Garwood, Duncan (2004). Italy. "Lonely Planet"(孤独な惑星) p.72 ISBN 978-1-74104-080-7
  9. ^ 柄沢 和雄 『コーヒードリンク246』p.25 柴田書店 1995年8月10日発行 ISBN 4-388-05755-X
  10. ^ 柄沢 和雄 『コーヒードリンク246』p.27 柴田書店 1995年8月10日発行 ISBN 4-388-05755-X
  11. ^ a b 福西 英三 『リキュールブック』 p.233 柴田書店 1997年7月1日発行 ISBN 4-388-05803-3
  12. ^ 稲 保幸 『カクテル・レシピ1000』 p.87 日東書院 2005年7月10日発行 ISBN 4-528-01412-2
  13. ^ 福西 英三 『リキュールブック』 p.19 柴田書店 1997年7月1日発行 ISBN 4-388-05803-3

主な参考文献[編集]

  • 福西 英三 『リキュールブック』 柴田書店 1997年7月1日発行 ISBN 4-388-05803-3
  • 吉田 芳二郎 『カラーブックス 828 洋酒入門 (第2版)』 保育社 1992年4月30日発行 ISBN 4-586-50828-0
  • 福西 英三、花崎 一夫、山崎 正信 『新版 バーテンダーズマニュアル』 柴田書店 1995年10月31日発行 ISBN 4-388-05765-7
  • 小島 武彦 監修 『リキュールで楽しむカクテル321』 日本文芸社 2003年10月25日発行 ISBN 4-537-20233-5
  • 河野 友美 編集 『新・食品事典12 酒』 真珠書院 1992年7月20日発行 ISBN 4-88009-112-X

編集者・閲覧者の方へ[編集]

以下は本来ノートに書くべき内容ですが、リキュールの基本的なデータに関する問題であり、記述の正確性にも関わるので、ここに書いてあります。なお2012年10月現在、ネット上を検索しても、日本ではエキス分30%と35%の両方の記述が見られるなど、混乱が見られました。ひとまず、本文では情報の出所と思われる、それぞれの情報源を示して、両方のエキス分の値を併記し、ここの部分の正確性に問題を抱えていることを明示しておきました。

  1. ^ オパール・ネラ・サンブーカの正確なエキス分を出典付きで記述できる方は、 是非、この部分を修正してください。