サイレントシャフト
サイレントシャフト(Silent shaft)とは、三菱自動車工業が自社の直列4気筒および直列2気筒エンジンに用いていた、バランスシャフトの商標及び特許である。
[編集] 概要
1974年12月に同社の軽自動車「ミニカF4」(A103A型)用の2G21型エンジンに搭載されたのが最初であり、翌1975年には2,000ccを超える三菱・4G5系エンジンにも続々と採用されていった。
サイレントシャフトは、「ランチェスターの法則」で知られるイギリスのフレデリック・ランチェスターによって1900年代初頭に発明されたランチェスター・バランサーの一種であるが、サイレントシャフトが特徴的なのは、2本のシャフトの位置を上下にずらし、エンジンの振動のみならず、起振モーメントをも打ち消していることである。同社はサイレントシャフトの振動抑制性能を称して「V型8気筒に比肩する」とまで称していた。サイレントシャフトの登場によるランチェスターバランサーによる完全バランス達成(元々のランチェスターバランサーは水平方向の振動は打ち消せるが、鉛直方向に新たな振動が発生する問題があった)はその後の直列4気筒の設計手法そのものに深い影響を与えることになり、三菱は後にフィアット、サーブ、ポルシェにサイレントシャフトの特許使用を認可、各社の2,000cc以上の大排気量直列4気筒エンジンに採用されることになった。
2005年に発表された三菱の新型エンジンでは通常のランチェスターバランサーになっている模様である。これはサイレントシャフトの特許自体は2本のバランスシャフトの配置とシャフト本体の形状に対して掛かっているため、たとえ三菱製エンジンで採用されるバランスシャフトであっても、シャフトの位置関係や形状がサイレントシャフトの原特許と異なる場合には、厳密にはサイレントシャフトに該当しなくなるためである。
なお、サイレントシャフト以前から各社でランチェスターバランサーの研究自体は行われていたが、シャフトの配置及び基本形状を三菱が特許で押さえてしまったために、各社はシャフトの配置についてはサイレントシャフトと異なる形とし、特許抵触の回避が不可能な部分については三菱との個別交渉で許諾を得ることで解決を図った。サーブの場合はB234エンジンにてサイレントシャフトとは異なるシャフト配置を採り、ポルシェの場合には自社のトランスアクスル技術とのクロスライセンス契約を結ぶことで、サイレントシャフトと同じ配置のバランスシャフトの採用に漕ぎ着けた経緯がある。
[編集] 関連項目
[編集] 参考文献
- 兼坂弘著「究極のエンジンを求めて」