サイテーション (競走馬)

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サイテーション
欧字表記 Citation
品種 サラブレッド
性別
毛色 鹿毛
生誕 1945年4月11日
死没 1970年8月8日
Bull Lea
Hydroplane
生国 アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
生産者 Calumet Farm
馬主 Calumet Farm
調教師 Jimmy Jones
→Ben A. Jones
競走成績
生涯成績 45戦32勝
獲得賞金 1,085,760ドル
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サイテーション (Citation) とは、アメリカ合衆国競走馬種牡馬である。

アメリカ競馬史上における最強馬のうちの一頭とされ、1948年にすべて大勝でアメリカ三冠を達成したほか、史上初の100万ドル獲得ホース20世紀のアメリカ記録となる16連勝、38連続連対など数多くの記録を残した。

ブラッド・ホースによる20世紀のアメリカ名馬100選ではマンノウォーセクレタリアトに次ぐ第3位、ESPNによる「20世紀のトップアスリートベスト100」では人間以外としては上記2頭に次ぐ97位にランクされている。

馬名は「表彰状」の意。愛称は「ビッグ・サイ(Big Cy)」[1][2]

生涯[編集]

誕生[編集]

1945年4月11日にウォーレン・ライト・シニアがアメリカ合衆国ケンタッキー州に所有するカルメットファームで生まれた。血統をみると父が大種牡馬ブルリーで、母が第17代ダービー伯爵の生産馬ハイドロプレーンである。母は現役時代は未勝利に終わったが、その父はハイペリオン、母はエプソムオークス優勝馬トボガンという良血で、ニューマーケットで行われたセリ市(ジュライセール)でウォーレン・ライトが2,940ドルで購入している。サイテーションはその3番目の産駒である。

生まれた当初、サイテーションにはこれと言った特徴はなかったが、成長とともに逞しい馬体を見せるようになっていった。

競走馬時代[編集]

サイテーションは1947年4月22日メリーランド州のハヴァードグラース競馬場でデビューし、1着となった。サイテーションはこの年に9戦して8勝を挙げ、アメリカの最優秀2歳馬に選ばれた。唯一の敗戦はワシントンパークフューチュリティで同じ厩舎の牝馬ビウィッチの2着となったレースである。当レースは調教師から騎手へ指示が出され、同厩舎でサイテーションと同じく当時無敗であったビウィッチに勝利を譲ったも同然のレースであったとされる[3]

1948年、2月にハイアリーパーク競馬場で4つのレースに出走し、すべて優勝した。そのうちセミノールハンデキャップでは前年度のアメリカ年度代表馬アームドを破っている。フラミンゴ優勝後主戦騎手のアルバート・スナイダーが事故で行方不明となり、急遽エディ・アーキャロに乗り替わることとなった。アーキャロが初めて騎乗したチェサピークトライアルでは2着に敗れたがその後チェサピークステークスとダービートライアルを連勝し、アメリカ三冠競走第1戦のケンタッキーダービーに向かった。レースでは2着のコールタウン(同じブルリーの産駒で、同じ牧場で生まれ、同じ厩舎が管理していた)に3馬身半の着差をつけて優勝した。

このあとサイテーションはプリークネスステークスベルモントステークスに出走し、いずれもスタート直後から先頭に立ちそのままゴールする走りで優勝、史上8頭目のアメリカ三冠を達成した。三冠達成後、サイテーションは9連勝し、20戦19勝でこの年のシーズンを終えた。

年間19勝、年間獲得賞金70万9470ドルはともにアメリカレコードで、満場一致で年度代表馬および最優秀3歳馬に選出された。

1949年は左前脚に球節炎(前年の夏に発症したものが再発した)を発症し、さらに球節炎を発症したのと同じ箇所の腱も痛めたため、1年間の休養を余儀なくされた。そのまま引退を勧める意見も上がったが陣営は獲得賞金の世界レコード更新と100万ドル突破という記録の達成を目指し、現役を続行させることにした。

復帰後のサイテーションは勝ちきれず、1月の復帰戦優勝後は5戦連続して2着を続けたが、6月3日のゴールデンゲートマイルハンデキャップではダート1600mの世界レコードを記録して優勝し、獲得賞金を92万4631ドルとしてスタイミーが保持していた収得賞金の世界レコード91万8485ドルを更新した。その後2戦して2回2着となったあとで左前肢の状態を悪化させ、9戦2勝2着7回の成績でこの年のシーズンを終えた。

獲得賞金100万ドルの記録達成のため、サイテーションは翌1950年も現役を続行した。4月の復帰戦では3着となり、デビュー以来更新し続けていた38連続連対の記録が途絶えた。その後も2戦して3着・5着に終わったがここからサイテーションは調子を取り戻し、アルゴノートハンデキャップで2着になったあと、3連勝を達成した。この中には賞金額10万ドルのハリウッドゴールドカップが含まれており、同レース優勝によりサイテーションの獲得賞金は108万ドルに達し、史上初の獲得賞金100万ドルを達成した。

調教師はハリウッドゴールドカップ優勝後も現役続行を希望したが、馬主のカルメット牧場は獲得賞金100万ドル達成によりサイテーションの競走馬としての役目は終わったと判断し、同馬を引退させ種牡馬としてカルメット牧場で繋養することにした。

競走馬引退後[編集]

サイテーションの種牡馬成績は初年度産駒からプリークネスステークス優勝馬のファビアスが現れるなどはじめのうちは好調であったが、年を追うごとに低迷していった。

1969年に種牡馬を引退し、翌1970年8月8日にカルメット牧場で死亡した。サイテーションの遺体はカルメット牧場の敷地内に埋葬された。

競走成績[編集]

年月日 競馬場 競走名 距離 着順 騎手 タイム 着差 1着馬/(2着馬)
1947 4.22 ハヴァードグラース パース D4.5f 1着 A.スナイダー 54.4 1/2馬身 (Sunday Beau)
5. 3 ピムリコ パース D5f 1着 A.スナイダー 1.01.2 3 1/2馬身 (Newsweekly)
5.21 ハヴァードグラース パース D5f 1着 A.スナイダー 59.2 1 3/4馬身 (Little Tony)
7.24 アーリントンパーク パース D5f 1着 D.ドッゾン R58.0 1/2馬身 (Kandy Comfort)
7.3 ワシントンパーク エレメンタリーS D6f 1着 D.ドッゾン 1.10.6 1馬身 (Salmagundi)
8.16 ワシントンパーク ワシントンフューチュリティ D6f 2着 S.ブルックス 1:10.4 1馬身 Bewitch
9.3 ベルモントパーク フューチュリティトライアル D6f 1着 A.スナイダー 1.11.0 1馬身 (Gasparilla)
10. 4 ベルモントパーク フューチュリティS D6.5f 1着 A.スナイダー 1.15.8 3馬身 (Whirling Fox)
11. 8 ピムリコ ピムリコフューチュリティ D8.5f 1着 D.ドッゾン 1.48.8 1 1/2馬身 (Better Self)
1948 2. 2 ハイアリアパーク パース D6f 1着 A.スナイダー 1.10.4 1馬身 (Kitche Police)
2.11 ハイアリアパーク セミノールH D7f 1着 A.スナイダー 1.23.0 1馬身 (Delegate)
2.18 ハイアリアパーク エヴァーグレイズH D9f 1着 A.スナイダー 1.49.0 1馬身 (Hypnos)
2.28 ハイアリアパーク フラミンゴS D9f 1着 A.スナイダー 1.48.8 6馬身 (Big Deal)
4.12 ハヴァードグラース チェサピークトライアル D6f 2着 E.アーキャロ 1馬身 Saggy
4.17 ハヴァードグラース チェサピークS D8.5f 1着 E.アーキャロ 1.45.8 4 1/2馬身 (Bovard)
4.27 チャーチルダウンズ ダービートライアル D8f 1着 E.アーキャロ 1.37.4 1 1/4馬身 (Escadru)
5. 1 チャーチルダウンズ ケンタッキーダービー D10f 1着 E.アーキャロ 2.05.4 3 1/2馬身 (Coaltown)
5.15 ピムリコ プリークネスS D9.5f 1着 E.アーキャロ 2.02.4 5 1/2馬身 (Vulcan's Forge)
5.29 ガーデンステート ジャージーS D10f 1着 E.アーキャロ R2.03.0 11馬身 (Macbeth)
6.12 ベルモントパーク ベルモントS D12f 1着 E.アーキャロ 2.28.2 8馬身 (Better Self)
7. 5 アーリントンパーク スターズ&ストライプスH D9f 1着 E.アーキャロ R1.49.2 2馬身 (Eternal Reward)
8.21 ワシントンパーク パース D6f 1着 N.ピアソン 1.10.8 2 1/2馬身 (King Rhymer)
8.28 ワシントンパーク アメリカンダービー D10f 1着 E.アーキャロ 2.01.6 1馬身 (Free America)
9.29 ベルモントパーク シスオンバイマイルS D8f 1着 E.アーキャロ 1.36.0 3馬身 (First Fight)
10. 2 ベルモントパーク ジョッキークラブゴールドカップ D16f 1着 E.アーキャロ 3.21.6 7馬身 (Phalanx)
10.16 ベルモントパーク エンパイアシティゴールドカップ D13f 1着 E.アーキャロ 2.42.8 2馬身 (Phalanx)
10.29 ピムリコ ピムリコスペシャルS D9.5f 1着 E.アーキャロ 1.59.8 単走
12. 3 タンフォラン パース D6f 1着 E.アーキャロ 1.12.0 1 1/2馬身 (Bold Gallant)
12.11 タンフォラン タンフォランH D10f 1着 E.アーキャロ R2.02.8 5馬身 (Stepfather)
1950 1.11 サンタアニタ パース D6f 1着 S.ブルックス 1.11.4 1 1/2馬身 (Bold Gallant)
1.26 サンタアニタ ハンデキャップ競走 D6f 2着 S.ブルックス クビ Miche
2.11 サンタアニタ サンアントニオH D9f 2着 E.アーキャロ 1馬身 Ponder
2.25 サンタアニタ サンタアニタH D10f 2着 E.アーキャロ 1 1/4馬身 Noor
3. 4 サンタアニタ サンフアンカピストラーノH D14f 2着 E.アーキャロ ハナ Noor
3.17 ゴールデンゲート パース D6f 2着 G.グリッソン 3/4馬身 Roman In
6. 3 ゴールデンゲート ゴールデンゲートマイルH D8f 1着 S.ブルックス R1.33.6 3/4馬身 (Bolero)
6.17 ゴールデンゲート フォーティナイナーズH D9f 2着 S.ブルックス クビ Noor
6.24 ゴールデンゲート ゴールデンゲートH D10f 2着 S.ブルックス 3馬身 Noor
1951 4.18 ベイメドウズ パース D6f 3着 S.ブルックス 1馬身 A Lark
4.26 ベイメドウズ パース D6f 3着 S.ブルックス 2 1/4馬身 Pancho Supreme
5.11 ハリウッドパーク プレミエールH D6f 5着 S.ブルックス 2 3/4馬身 Special Touch
5.3 ハリウッドパーク アルゴノートH D8.5f 2着 F.A.スミス 3馬身 Be Fleet
6.14 ハリウッドパーク ハンデキャップ競走 D8f 1着 S.ブルックス 1.35.8 1/2馬身 (Be Fleet)
7. 4 ハリウッドパーク アメリカンH D9f 1着 S.ブルックス 1.48.4 1/2馬身 (Bewitch)
7.14 ハリウッドパーク ハリウッドゴールドカップ D10f 1着 S.ブルックス 2.01.0 4馬身 (Bewitch)
  • 略称:競走名のHはハンデキャップ、Sはステークス。距離のDはダート、fはハロン。タイムのRはレコードを示す。
  • パースは一般競走。

表彰[編集]

  • 1947年 - アメリカ最優秀2歳牡馬
  • 1948年 - アメリカ年度代表馬、最優秀3歳牡馬
  • 1951年 - アメリカ最優秀古牡馬
  • 1959年 - アメリカ競馬殿堂入り

代表産駒[編集]

  • ファビウス(プリークネスステークス)
  • シルヴァースプーンアメリカ競馬殿堂入り。サンタアニタダービー、サンタマルガリータハンデキャップ、ヴァニティハンデキャップなど。日本輸入種牡馬コインドシルバーの母の母)
  • ウォッチユアステップ(サプリングステークス)
  • ビヨンド(エイコーンステークス)
  • ゲットアイランド(ウィザースステークス)
  • マントゥー(オハイオダービー)

エピソード[編集]

  • 1996年に、シガーがサイテーションの16連勝に挑戦した際、サイテーションチャレンジという競走が組まれた。結果はシガー1着で16連勝達成。
  • ブラッドホース誌による20世紀のアメリカ名馬100選、第3位
  • タイムフォーム誌による20世紀の名馬200選、第5位
  • サイテーションには自分の体を噛む癖があり、防止のために食事のとき以外は常に口に篭を装着されていた。

血統[編集]

サイテーション血統テディ系 / St.Simon5×4.5=12.50% Bay Ronald5×5=6.25%) (血統表の出典)

Bull Lea
1935 黒鹿毛
父の父
Bull Dog
1927 黒鹿毛
Teddy Ajax
Rondeau
Plucky Liege Spearmint
Concertina
父の母
Rose Leaves
1916 黒鹿毛
Ballot Voter
Cerito
Colonial Trenton
Thankful Blossom

Hydroplane
1938 栗毛
Hyperion
1930 栗毛
Gainsborough Bayardo
Rosedrop
Selene Chaucer
Serenissima
母の母
Toboggan
1925 鹿毛
Hurry On Marcovil
Tout Suite
Glacier St. Simon
Glasalt F-No.3-l


脚注[編集]

  1. ^ Britannica、Marvin Drager、Citation。2021年4月7日閲覧。
  2. ^ New York Racing Association(ニューヨーク競馬協会(NYRA))、Belmontstakes.com、Citation。2021年4月7日閲覧。
  3. ^ 福浦好明 『サラブレッドの十戒』、KKベストブック(52-53)。

参考文献[編集]

  • 原田俊治『新・世界の名馬』サラブレッド血統センター、1993年。ISBN 4-87900-032-9 

外部リンク[編集]