ゴルトベルク変奏曲

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ゴルトベルク変奏曲「ゴールドベルク変奏曲」( - へんそうきょく, ドイツ語: Goldberg-Variationen) は、ヨハン・ゼバスティアン・バッハによるアリアとその変奏曲からなる2段の手鍵盤のチェンバロのための練習曲 (BWV 988)。全4巻からなる「クラヴィーア練習曲集」の第4巻であり、1742年に出版された。バッハ自身による表題は「2段鍵盤付きクラヴィチェンバロのためのアリアと種々の変奏」 (ドイツ語: Clavier Ubung bestehend in einer ARIA mit verschiedenen Veraenderungen vors Clavicimbal mit 2 Manualen) 。

「アリアと種々の変奏」と題されているが、バッハが音楽を手ほどきしたヨハン・ゴットリープ・ゴルトベルクが不眠症に悩むカイザーリンク伯爵のためにこの曲を演奏したという逸話から「ゴルトベルク変奏曲」の俗称で知られている。しかし演奏には高度な技術が必要で、当時ゴルトベルクは14歳の少年であったことなどから逸話については懐疑的な見方が多い。

ピアノが主流となった時代から20世紀初頭まで演奏されることは少なかったが、ワンダ・ランドフスカがモダンチェンバロによる演奏を録音し、高く評価された。グレン・グールドはレコード会社に反対されながらもデビュー盤にこの曲を選択、1956年にリリースされたピアノ演奏のレコードは世界的な大ヒットとなった。

グールドのデビュー盤以来、変奏曲としては長大で、しかも高度な対位法技術を用いて作られた難解なこの曲が脚光を浴び、チェンバロやピアノのみならず、編曲を施してギター弦楽合奏などの種々の編成、さらにジャズでも演奏されるようになっている。

この変奏曲は以下の低音主題に基づいている。

GoldbergVariationsBassLine.gif

楽曲の構成[編集]

32小節から成るアリアを最初と最後に配置し、その間にアリアの32音の低音主題に基づく30の変奏が展開され、全部で32曲となる。第15、25変奏のみがト短調で他は主題と同じくト長調である。 3の倍数の変奏はカノンであり、第3変奏の同度のカノンから第27変奏の9度のカノンまで順次音程が広がるが、第30変奏は10度のカノンではなくクオドリベットが置かれている。 第16変奏は「序曲」と題され、後半の始まりを告げている。各曲は2部構成で前半後半をそれぞれリピートする。

アリア
3/4拍子。このアリアはアンナ・マクダレーナ・バッハの音楽帳(1725年に始まる二番目の音楽帳)に書かれている。
第1変奏
3/4拍子、1鍵盤。
第2変奏
2/4拍子、1鍵盤。
第3変奏
12/8拍子、同度のカノン、1鍵盤。
第4変奏
3/8拍子、1鍵盤。
第5変奏
3/4拍子、1あるいは2鍵盤。
第6変奏
3/8拍子、2度のカノン、1鍵盤。
第7変奏
6/8拍子、1あるいは2鍵盤。
第8変奏
3/4拍子、2鍵盤。
第9変奏
4/4拍子 3度のカノン、1鍵盤。
第10変奏
2/2拍子、フゲッタ、1鍵盤。
第11変奏
12/16拍子、2鍵盤。
第12変奏
3/4拍子、4度の反行カノン。
第13変奏
3/4拍子、2鍵盤。
第14変奏
3/4拍子、2鍵盤。
第15変奏
2/4拍子、ト短調、5度の反行カノン、1鍵盤。
第16変奏
2/2拍子 - 3/8拍子、序曲、1鍵盤。前半部が荘重な付点リズムで、後半部で速度を増すフランス風序曲の形式で書かれている。
第17変奏
3/4拍子、2鍵盤。
第18変奏
2/2拍子、6度のカノン、1鍵盤。
第19変奏
3/8拍子、1鍵盤。
第20変奏
3/4拍子、2鍵盤。
第21変奏
4/4拍子、ト短調、7度のカノン。
第22変奏
Alla Breve(2/2拍子)、1鍵盤。
第23変奏
3/4拍子、2鍵盤。
第24変奏
9/8拍子、8度のカノン、1鍵盤。
第25変奏
3/4拍子、ト短調、2鍵盤。
第26変奏
3/4(18/16)拍子(右手が18/16拍子、左手が3/4拍子という特殊な書法である)、2鍵盤。
第27変奏
6/8拍子、9度のカノン(唯一、自由声部のない純粋な2声カノン)、2鍵盤。
第28変奏
3/4拍子、2鍵盤。
第29変奏
3/4拍子、1あるいは2鍵盤。
第30変奏
4/4拍子 クオドリベット、1鍵盤。quod libet(ラテン語で「好きなように」を意味する)は、宴会などで行う、複数人がそれぞれちがう歌を同時に歌う遊びであった。バッハは当時の流行歌二つを組み合わせつつ主題とも重ね合わせて終曲としている。使われたのは、"Ich bin solang nicht bei dir g'west, ruck her, ruck her"(「長いこと御無沙汰だ、さあおいで、おいで」)と"Kraut und Rüben haben mich vertrieben, hätt mein' Mutter Fleisch gekocht, wär ich länger blieben"(「キャベツカブが俺を追い出した、母さんが肉を料理すれば出て行かずにすんだのに」である。
アリア
3/4拍子。ダ・カーポで、初めのアリアが再現されて全曲を締めくくる。

14のカノン(BWV 1087)[編集]

上段:肖像画でバッハが手にする楽譜。中段:元の楽譜。下段:14のカノンの第13番。

1974年にストラスブールで発見されたバッハの私蔵本には、修正の書き込みとともに、余白の頁には新たにVerschiedene Canones über die ersten acht Fundamental-Noten vorheriger Arie(前のアリアの最初の8音の低音主題に基づく種々のカノン)としてアリアの低音主題冒頭の8音に基づく14曲のカノンが追加されている。 14はバッハの名前を象徴する数字である(BACH = 2 + 1 + 3 + 8 = 14)。バッハは1747年6月にミッツラー主催の音楽学術交流協会に第14番めの会員として入会し、入会にあたってバッハは第13番のカノンの改訂稿(BWV 1076)を提出した。 ハウスマンによるバッハの肖像画でバッハが手にする楽譜がそれである。 

関連項目[編集]

脚注[編集]

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文献[編集]

  • デイヴィッド・シューレンバーグ『バッハの鍵盤音楽』、佐藤望/木村左千子訳、小学館、2001。ISBN-13 978-4093860307.
  • Williams, Peter (2001). Bach: The Goldberg Variations. Cambridge: Cambridge University Press. ISBN-13 978-0521001939.

外部リンク[編集]