コンソル公債

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コンソル公債(consols)とは、イギリスで発行されている永久に一定額の利子(クーポン)が支払われる債券公債のことである。償還しない代わりに、永久に利子が払われる契約に基づく永久債の代表的な例の一つで、しばしば、経済学利子債券流動性選好説流動性の罠を説明する際に用いられる。

歴史[編集]

1751年[1]ヘンリー・ペラム首相によって政府の財政問題に対処し債務をまとめる(コンソリデート)ために、最初のコンソル公債が発行された。この時は利子率3.5%だったが、その後1757年に利子率を3%に引き下げた。1788年の英仏と1792-94年のアメリカを比較して、国債残高に対する国債費の割合はイギリス3.8%、フランス7.5%、アメリカ4%であった[2]。コンソルは国債費を軽減した。

1888年ジョージ・ゴッシェン財務相が新たに利子率2.5%の新コンソル債を発行し、1923年に既に利子率3%で流通していたものも含めて利子率を2.5%に引き下げた。

利子率と債券価格[編集]

この債券は、利子額が固定かつ永久支払であるため、債券価格は簡易に求められる。

債券価格=利子額/利子率  (恒等式

となる。利子額が100円で利子率が0.05(5%)である場合、債券価格は2,000円となる。逆に、債券価格が10,000円であれば利子率は0.01(1%)となる。また配当の安定した企業の株式はコンソル債に近い性格を持つことから、株価の理論的な価格を求める一つの指標にもなっている。

債券の性格上、利子率が低下すると債券価格は非常に高くなる。このため、一定以上に利子率が下がると値下がりのリスクが高まり債券需要がそれ以上伸びなくなり、貨幣需要が無限に増大する(流動性の罠)。

脚注[編集]

  1. ^ 小学館『デジタル大辞泉』. “コンソル公債”. コトバンク. 2018年6月26日閲覧。
  2. ^ David R. Weir, "Tontines, Public Finance, and Revolution in France and England, 1688-1789", Journal of Economic History, vol.49, No.1. Nov.1989, p.98.