コライユ (鉄道車両)
コライユ(Corail)は、フランス国鉄が保有する長距離列車用の客車である。片仮名ではコラーユと表記されることもある。1970年代から80年代にかけて約4000両が製造された。TGV網の発達以降も、在来線の優等列車用に幅広く用いられている。ポルトガル鉄道にも同型の客車がある。
コライユはまた、同客車を用いたフランス国鉄の在来線長距離列車を表す列車種別でもある。
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[編集] 概要
« corail »は« comfort »(快適)と« rail »(レール)を組み合わせた造語であり[1]、フランス語で珊瑚の意味もある。それまでの客車と比べ、全車両への冷房装置の設置、サスペンションの改良、防音性能の向上など乗り心地の改善が図られている[2]。
車体は全長26.4m, 幅2.825m(一部の« superlarges »型のみ2.867m), 重量42tである。台車はコライユ用に新設計されたY32型で、大きな枕バネとディスクブレーキが特徴である。最高速度は160km/hであるが、一部の車両は200km/hでの走行が可能である[2]。
塗装は原型では白地に窓部分が灰色であり、ドアはオレンジ色に塗られている。ただし後に変更されたものも多い[2]。
1971年に試作車が製造された後、1975年からフランコ・ベルジュ社(société Franco-Belge)で量産が始まった。一部の車両はアルストムで製造された。
[編集] 形式
コライユはVTU型、VU型、VSE型の3種に大別される。さらに製造年により「VU75型」のような呼称もある[2]。
[編集] VTU型
VTU型は中央に通路を配しその両側に座席の並ぶ開放座席車であり、座席は回転しない集団見合い型の固定クロスシートである。1975年から1987年にかけて2335両が製造された[2]。
さらに8種類の型に細分することができる。一等車は定員58名、二等車は定員80名の型と88名の型があり、このほかビュッフェ車(voiture-bar)、一・二等合造車などがある[2]。
[編集] VU型
VU型は通路を片側に配したコンパートメント車である。一等車は6人個室、二等車は8人個室からなる。1975年から1989年にかけて1451両が製造された[2]。
さらに11種類の型に細分される。一等車は定員54名の型と60名の型があり、二等車では定員88名である。このほか一・二等合造車、クシェット(簡易寝台)車、荷物車などの型がある[2]。
[編集] VSE型
欧州各国鉄道会社の資材や車両の共通化を目的に設立されたEurofima« La société européenne pour le financement de matériel ferroviaire »(日本ではヨーロッパ鉄道連合と呼称される[3])によって設計された車両で、各国向けに製造された510両[4]のうち、SNCFには102両が導入された[5]。
SNCFでの名称はVSE型で、SEとは« standards européenes »(ヨーロッパ標準)の意である。本形式のみ台車はイタリア・フィアット社製のY270s型を用いているが、性能はY32型とほぼ同等である。車体の設計も細部がフランス国内向けとは異なる。内装はVU型と同様のコンパートメント席である[2]。
[編集] 改造車
1990年代以降、一部の客車に対して改修工事が行われている。
1995年から1998年にかけて、710両(VTU型510両、VU型200両)が「コライユ・プリュ」(Corail Plus)に改造された。主な内容はトイレの真空吸引式への改造、車内通路のドアの自動化、車内のコーティングの改良などである。また塗装は濃淡2色の灰色にドア部分を一等車は赤、二等車は緑と改められた[2]。
同じ時期にはさらに490両がコライユND(nouvelle décoration = 新装飾)に改造された。改造内容は「プリュ」と同様であるが、トイレのみは従来型のままである[2]。
また1990年代には一部の客車が地域圏急行輸送(TER)向けに各地域圏に譲渡されたが、この際地域圏の事情に合わせて改造が行われている。短距離での運用の効率化のため運転台付きに改造されたものもある。運転台付き客車そのものはコライユの原型から存在するが、TER向けではより広く使われている。また塗装も各地域圏ごとに独特のものが用いられている[2]。
2003年以降はさらに一部の客車が後述するコライユ・テオズやコライユ・ルネアの専用客車に改造された[6]。またコライユ・アンテルシテ・ノルマンディーの専用客車はバス・ノルマンディー地域圏の補助により改造された。
[編集] 列車種別としてのコライユ
「コライユ」はコライユ客車を利用した在来線長距離列車を指す列車種別としても用いられる。昼行列車は上位から順にコライユ・テオズ、(狭義の)コライユ、コライユ・アンテルシテの3つの種別があり、これとは別に夜行列車のコライユ・ルネアがある。狭義のコライユは「テオズ」や「アンテルシテ」網の拡充にともない減少傾向にある。
なお、周辺諸国でインターシティやユーロシティとして運転されている列車は、たとえコライユ客車を使用していなくても、フランス国内では「コライユ」として扱われることがある。
[編集] コライユ・テオズ
コライユ・テオズ(Corail Téoz)はTGV以外のフランス国鉄の列車では最上位に当たる種別で、高速新線(LGV)に並行しない幹線で運転される昼行列車である。全席が指定席で、乗車券と指定席券が一体となった包括料金が適用されるなど、TGVに準じたサービスが行われている。2003年にパリ - クレルモン=フェラン間で運行を開始した[7]。2008年現在は以下の系統がある[8]。
- パリ(リヨン駅) - ヌヴェール - ムーラン - ヴィシー - クレルモン=フェラン
- パリ(オーステルリッツ駅) - ヴィエルゾン - リモージュ - トゥールーズ
- ボルドー - トゥールーズ - モンペリエ - ニーム - マルセイユ - ニース
2007年まではパリ(東駅)からナンシー経由ストラスブールへの系統もあったが、LGV東ヨーロッパ線の開業によりTGVに置き換えられて廃止された。
[編集] コライユ・ルネア
コライユ・ルネア(Corail Lunéa)はクシェット(簡易寝台)車と座席車からなる夜行列車である。原則としてフランス国内のみの列車であるが、一部国境を越えるものもある。2007年まで一部の列車には旧国際寝台車会社の個室寝台車(voiture-lits)が連結されていたが、以降はコライユ客車のみの編成となっている。
クシェットは一等車では2段寝台で一室の定員は4名、二等車では3段寝台で定員6名である。一部には女性専用個室もある。個室は原則として相部屋となるが、追加料金を支払うことで定員未満でも一室を占有できる« L'espace privatif »というサービスもある。
2010年現在定期的に運転されている系統は以下の通り。このほか繁忙期のみの臨時列車もある。一部の列車は途中駅まで他の系統と併結される。パリでのコライユ・ルネアの発着駅はすべてオーステルリッツ駅である。パリから南東方面への路線の起点は本来リヨン駅であるが、コライユ・ルネアのみはこの方面もオーステルリッツ駅発である[9]。
- パリ発の放射状系統
- パリ -- トゥーロン - カンヌ - ニース[10]
- パリ -- シャンベリ - アルベールヴィル - ブール=サン=モーリス(Bourg-Saint-Maurice)
- パリ -- アヌシー - サン=ジェルヴェ=レ=バン(Saint-Gervais-les-Bains)
- パリ - オルレアン -- カオール - トゥールーズ
- パリ - オルレアン - リモージュ -- ナルボンヌ - ペルピニャン - セルベール/ポルトボウ(スペイン、Portbou)
- パリ - オルレアン - リモージュ -- フォワ - ラトゥール=ドゥ=カロル
- パリ - オルレアン - リモージュ -- モントレジョー(Montréjeau) - ルション(Bagnères-de-Luchon)
- パリ - オルレアン -- バイヨンヌ - ビアリッツ - アンダイエ/イルン(スペイン、Irún)
- 地方間の系統
- ストラスブール - ミュルーズ - ベルフォール - ブサンソン -- アヴィニョン - マルセイユ - トゥーロン - カンヌ - ニース
- ストラスブール - ミュルーズ - ブサンソン - ニーム - モンペリエ - ナルボンヌ - ペルビニャン - セルベール/ポルトボウ
- ルクセンブルク - メス - ナンシー - ニーム - モンペリエ - ナルボンヌ - ペルビニャン - セルベール/ポルトボウ
- イルン/アンダイエ - バイヨンヌ - ボルドー - トゥールーズ -- マルセイユ - トゥーロン - カンヌ - ニース
- イルン/アンダイエ - バイヨンヌ - ポー - タルブ - トゥールーズ -- ヴァランス - リヨン - ジュネーヴ(スイス)
※「セルベール/ポルトボウ」は、西行列車はセルベール経由ポルトボウ行、東行列車はセルベール始発であることを示す。「アンダイエ/イルン」(又はその逆)は、西行列車はアンダイエ経由イルン行、東行列車はアンダイエ始発であることを示す。
[編集] コライユ・アンテルシテ
コライユ・アンテルシテ(Corail Intercités, CIC)は複数の地域圏にまたがる100km〜300km程度の距離を結ぶ昼行列車である。これより短い区間は地域圏急行輸送の担当となる。2006年に登場した新たな種別であり、以前はTIR(Trains Inter-Regionaux = 地域間列車)と呼ばれていた列車を含む。「アンテルシテ」はインターシティのフランス語表記である。
運行系統は方面別にいくつかのグループに分けられる。2008年現在運行されているのは次の各系統である[11]。
- lignes Normandes
- lignes Grand Bassin Parisien Nord
- lignes Grand Est
- lignes Grand Bassin Parisien Sud
- lignes Grand Centre
- lignes Arc Atlantique
[編集] TERでの使用
コライユ客車の一部は地域圏に譲渡され、地域圏急行輸送(TER)で用いられている、TERへの譲渡は1991年にアルザスで始まり、サントル、ペイ・ド・ラ・ロワールなどが続いた[2]。TERでは主に各地域の幹線となる系統で運用されているが、これらは列車種別としての「コライユ」には含まれない。代表的なものに以下がある。
- Aqualys
- TERサントルのパリ - オルレアン - トゥール間の列車。
- Interloire
- TERサントルおよびTERペイ・ド・ラ・ロワールによるオルレアン - トゥール - アンジェ - ナント間の列車。ロワール川沿いの主要都市を結ぶ。
- TER 200
- TERアルザスによるストラスブール - ミュールーズ - バーゼル(スイス)間の列車。最高速度200km/hで運転される。
[編集] ポルトガルのコライユ
ポルトガル鉄道もコライユ客車を保有している。これは1985年にポルトガルのSorefame社がアルストムからライセンスを受けて製造したものである。設計はフランスのVTU78型に準じるが、台車が広軌(1668mm)用のY32P型となっている。
[編集] 参考文献
- Carémantrant, Marc. “Corail Téoz : les trains classiques reprennent des couleurs”. Rail Passion (La Vie du Rail) 74.
[編集] 脚注
- ^ Carémantrant p.8
- ^ a b c d e f g h i j k l m Carémantrant pp.12 - 13
- ^ W.Philipp, Glasers, Annalen (10 1956). ヨーロッパ鉄道連合の意義.
- ^ 試作車10両を含む。内訳は、DB向け5両、FS向け3両、SNCF向け2両でいずれも1等2等合造車。
- ^ Georges MATHIEU. LA VIE DU RAIL. ed. LE MATéRIEL REMORQUé VOYAGEURS DE LA SNCF.
- ^ Carémantrant
- ^ Carémantrant
- ^ “Corail Téoz”. 2008年11月閲覧。
- ^ “Corail Lunéa”. 2008年11月閲覧。
- ^ トーマスクック ヨーロッパ鉄道時刻表では、本列車に限りCORAIL LUNÉAではなくTRAIN BLEU(青列車)の愛称が記載されている("Thomas Cook European Rail Timetable" October 2011)
- ^ “Corail Intercités”. 2008年11月閲覧。