コヒーシン
コヒーシン(cohesin)は、姉妹染色分体の接着(複製された染色体を娘細胞に均等に分離するために必須な過程; sister chromatid cohesion)に中心的な役割を果たすタンパク質複合体である。
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サブユニット構成[編集]
コヒーシン複合体は4つのサブユニットから構成される。そのコアとなる2つのサブユニット(SMC1とSMC3)はSMCタンパク質と総称されるATPアーゼのファミリーに属する。その構造と機能は、酵母からヒトまで広く保存されている。減数分裂期では、一部の制御サブユニットが置き換わり、減数分裂期に特有のコヒーシン複合体が構築される。
| サブユニット | 分類 | 出芽酵母 | 分裂酵母 | 線虫 | ショウジョウバエ | 脊椎動物 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| SMC1 alpha | ATPase | Smc1 | Psm1 | SMC-1 | DmSmc1 | SMC1 alpha |
| SMC3 | ATPase | Smc3 | Psm3 | SMC-3 | DmSmc3 | SMC3 |
| RAD21 | kleisin | Scc1/Mcd1 | Rad21 | SCC-1/COH-2 | DmRad21 | RAD21 |
| SCC3 | HEAT | Scc3 | Psc3 | SCC-3 | DmSA | SA1, SA2 |
| SMC1 beta (減数分裂型) | ATPase | - | - | - | - | SMC1 beta |
| REC8 (減数分裂型) | kleisin | Rec8 | Rec8 | REC-8 | C(2)M? | REC8 |
| RAD21L (減数分裂型) | kleisin | - | - | - | - | RAD21L |
| SA3 (減数分裂型) | HEAT | - | Rec11 | - | - | SA3/STAG3 |
体細胞分裂[編集]
体細胞分裂の過程では、コヒーシンはまずG1期にクロマチンに結合し、S期に複製された染色体(姉妹染色分体)が直ちに離れないようつなぎ止める。M期(分裂期)にはいると、まず前期から前中期にかけての染色体凝縮と同期して、染色体腕部に局在する大部分のコヒーシンが解離する。この過程には、2つのコヒーシン結合タンパク質(Wapl と Pds5)に加え、2つのタンパク質キナーゼ(ポロとオーロラB)が関与している。コヒーシンの解離に伴って染色体腕部の接着が部分的に解除されることにより、2本の姉妹染色分体が識別可能になる(この過程を染色分体の分割 [sister chromatid resolution] と呼ぶ)。この際セントロメア領域に局在するコヒーシンは解離を免れ、セントロメアにおける強固な接着は中期まで保存される。後期にはいると、コヒーシンの制御サブユニットのひとつがセパレースと呼ばれるプロテアーゼによって切断され、染色分体の最終的かつ不可逆的な分離 (sister chromatid separation) が促進される。セパレースの活性化には、 APC/Cと呼ばれるユビキチンリガーゼが関与している。
減数分裂[編集]
減数分裂期では、減数分裂期特有のサブユニットを含む複数のコヒーシン複合体が働く。減数第一分裂ではまず腕部のコヒーシンが切断され相同染色体の分離(還元分裂)を促し、減数第二分裂ではセントロメア領域に残ったコヒーシンが切断され姉妹染色分体の分離(均等分裂)を引き起こす。
その他の機能[編集]
最近の研究によれば、コヒーシンは細胞分裂期以外の時期においても、 相同組み換えによるDNA修復や遺伝子発現の調節等、多彩な機能を持つ。コヒーシンに類似のタンパク質複合体として、染色体凝縮に関わるコンデンシンがある。
遺伝疾患[編集]
最近の研究によれば、コヒーシンやその制御因子をコードする遺伝子の変異がヒトの遺伝疾患を引き起こすことが明らかになりつつある。これまでに、コーネリア・デ・ランゲ症候群(Cornelia de Lange syndrome)とロバーツ症候群(Roberts syndrome)の2例が報告されている。コーネリア・デ・ランゲ症候群の原因として、コヒーシンをDNAに結合させるNIPBLの変異や、コヒーシンの再利用を促進する脱アセチル化酵素HDAC8の遺伝子変異が関与していることが報告された。