コナギ

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コナギ
Vaginalis.jpg
コナギ
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 単子葉植物綱 Liliopsida
: ユリ目 Liliales
: ミズアオイ科 Pontederiaceae
: ミズアオイ属 Monochoria
: コナギ M. vaginalis
学名
Monochoria vaginalis var. plantaginea
(Burm. f.) Kunth
和名
コナギ

コナギ(小菜葱、子菜葱、小水葱、子水葱、学名:Monochoria vaginalis var. plantaginea)は、ミズアオイ科に分類される一年性の水田雑草。ツバキバ、ツバキグサ、ナギ、イモグサ、ササナギ、ミズナギ、トリノシタ、ハートグサといった別名がある。なおナギ、ミズナギは同属のミズアオイ Monochoria korsakowii の別名でもある。

特徴[編集]

一年草で、地下茎などは持たない。茎は根元で数本に枝分かれし、小柄なものは地表をわずかに這い、大柄なものはやや斜めに立ち上がる。葉は長い柄があり、葉身は細い披針形から心形まで変異に富み、また成長段階によっても変化する。おおむねよく育つと幅広くなる。全株やわらかく、緑色で葉身表面はつやがあってやや色が濃い。

晩夏から晩秋にかけて葉柄の基部に短い房状の穂を出し花をつける。花はホテイアオイのそれに似るがずっと小さく、花弁はより細長い。花色も青紫となり異なる。受粉後に果実を実らすと花穂は萎れ下向きになる。冬に至ると植物体は種子を擁した花穂を残し枯死する。果実は熟すと裂け、種子は水面に浮かんで散布される。

生態[編集]

冬の間に撒種された種子は5月ごろに発芽する。本種種子には休眠性があり、一度寒気に晒さないと発芽しない。また種子には嫌酸素性もあり、無酸素状態に置かれた種子ほどよく発芽する。

分布[編集]

東アジア全域に広く分布し、日本国内でもほぼ全土にわたって見られる。原産地は東南アジアで、そこから東アジア各地へ水稲耕作の伝播ともに伝わったと考えられており、日本の個体群も史前帰化植物と考えられている。

近似種[編集]

単子葉植物ゆえに当初は子葉一枚のみであるが、その後ササに似た数枚のやや広い線形の葉を出し、その姿はおなじ水田雑草であるウリカワオモダカヘラオモダカなどと酷似する。やや水が深い場合は、葉柄が長くなり、浮葉をつける場合もある。やがて葉は次第に膨らみを帯びるようになり、卵形、心臓形へと変化する。さまざまな別名はこの短い間の葉形の変化に由来する。なお、葉の基部は同属のミズアオイや同じ科のホテイアオイのように太くならない。

上記のオモダカ類の種とは、成長するとわかりやすく、また花はまったく異なるので混同することはない。ミズアオイは同属だけによく似ているが、ミズアオイの花序が穂状に上に伸びるのに対して、コナギのそれは葉腋に数花出るだけなので区別できる。ただし、よく成長したコナギは、花がなければミズアオイと見間違える場合もある。いずれにせよ、ここにあげた植物は現在では希少種となっており、植物採集家や水草マニアは、時にコナギを見て悩まされたり落胆したりしがちである。農家から見れば喜ばしいこととはいい難いが、多くの水田雑草がその姿を希少なものにしている中では、コナギはまだ減少していないほうであるといえる。

なお、アメリカコナギ (Heteranthera limosa (Sw.) Willd.) が帰化植物として日本に侵入している。コナギと名前がつくが、別属(アメリカコナギ属)の植物である。

人間との関係[編集]

日本人との付き合いは古く、同属のミズアオイと共に万葉集に本種を読んだ歌が収録されている。また江戸時代頃までは食用にされていた。ベトナムでは今でも食用にする。

しかし今日の日本では、水田耕作における強害草のひとつに数えられている。本種はイネより成長が早いため、すぐに影をつくりイネを遮光し成長を阻害する。また成長に際し過分な窒素分を要求するので、水田に生えた場合イネの窒素吸収を阻害する。そもそも発芽に際して酸素を嫌うという変わった性質から、地表を水で覆う水田は結果として本種に絶好の環境を提供している。ただし除草剤に対する耐性がないため、除草剤を撒いている田にはあまり生えない。ゆえに無農薬農法によるコメ作りをしている田に執拗に生え、こうした農法に従事する農家の悩みのタネになっている。なお近年は除草剤に対して耐性を有する個体も出現している。

有吉佐和子の『複合汚染』には、本種がイネのコンパニオンプランツである旨が紹介されているが、実態は上記の通りであり、本種がイネの生育に好影響を与えているとはいえない。