グーデルマン関数

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

グーデルマン関数(グーデルマンかんすう、英語: Gudermannian functionドイツ語: Gudermannfunktion)は、クリストフ・グーデルマン英語版(1798–1852)にちなんで命名された、複素数を用いない三角関数及び双曲線関数と関係する関数

定義[編集]

グーデルマン関数とその漸近線y = ±π/2を青色で示した図

定義は以下のとおりである。

\begin{align}{\rm{gd}}\,x&=\int_0^x\frac{dt}{\cosh t} \\[8pt]
&=\arcsin\left(\tanh x \right)

=\mathrm{arctan}\left(\sinh x \right) \\[8pt]
&=2\arctan\left[\tanh\left(\frac{1}{2}x\right)\right]

=2\arctan(e^x)-\frac{1}{2}\pi.
\end{align}\,\!

グーデルマン関数と関連する公式の中には、定義として全く運用できないものがある。例えば、実数x について、 \arccos\mathrm{sech}\,x = \vert\mathrm{gd}\,x\vert = \arcsec(\cosh x) である。(逆三角関数を参照。)

以下の恒等式が成り立つ。

\begin{align}{\color{white}\dot{{\color{black}
\sin\mathrm{gd}\,x}}}&=\tanh x ;\quad
\csc\mathrm{gd}\,x=\coth x ;\\
\cos\mathrm{gd}\,x&=\mathrm{sech}\, x ;\quad\,
\sec\mathrm{gd}\,x=\cosh x ;\\
\tan\mathrm{gd}\,x&=\sinh x ;\quad\,
\cot\mathrm{gd}\,x=\mathrm{csch}\, x ;\\
{}_{\color{white}.}\tan\tfrac{1}{2}\mathrm{gd}\,x&=\tanh\tfrac{1}{2}x.
\end{align}\,\!
グーデルマン関数の逆関数

グーデルマン関数の逆関数(逆グーデルマン関数又はランベルト関数と称する)は、区間 \left(-\pi/2, \pi/2\right) において、次のように与えられる。


\begin{align}
\operatorname{gd}^{-1}\,x & = \int_0^x\frac{dt}{\cos t} \\[8pt]
& = \ln\left| \frac{1 + \sin x}{\cos x} \right| = \frac{1}{2}\ln \left| \frac{1 + \sin x}{1 - \sin x} \right| \\[8pt]
& = \ln\left| \tan x +\sec x \right| = \ln \left| \tan\left(\frac{1}{4}\pi + \frac{1}{2}x\right) \right| \\[8pt]
& = \mathrm{artanh}\,(\sin x) = \mathrm{arsinh}\,(\tan x).
\end{align}

逆双曲線関数を参照。)

グーデルマン関数とその逆関数の微分は次のとおりである。

\frac{d}{dx}\;\mathrm{gd}\,x=\mathrm{sech}\, x;
\quad \frac{d}{dx}\;\operatorname{gd}^{-1}\,x=\sec x.

また、逆グーデルマン関数は次式のようにフーリエ級数展開できる。

\operatorname{gd}^{-1}\,x=-2\sum_{n=1}^\infty (-1)^n\frac{\sin(2n-1)x}{2n-1}

数式 \pi/2 - \mathrm{gd}\,x は、双曲幾何学において、平行角英語版関数を定義する。

歴史[編集]

この関数は、ヨハン・ハインリッヒ・ランベルトによって1760年代に双曲線関数と同じ頃に紹介された。彼はそれを「超越角」(transcendent angle)と呼び、アーサー・ケイリー1862年に、1830年代のグーデルマンによる特殊関数の理論の功績にちなんで「グーデルマン関数」と呼ぶことを提案するまで、様々な名称で呼ばれてきた[1]。グーデルマンは、幅広い読者に向けてsinhcosh(同書では\mathfrak{Sin}\mathfrak{Cos}の表記を用いた)を説いた1833年の著書"Theorie der potenzial- oder cyklisch-hyperbolischen functionen"に、クレレ誌で発表した論文を収録した。

グーデルマン関数を表す記号gd は、Philosophical MagazineXXIV巻の19ページ[2]において、ケイリーがSecant関数の積分法英語版の逆について、gd. uを用いたのが始まりである。ここで、

u = \int_0^\phi \sec t \,dt = \ln\tan\left(\frac{1}{4}\pi+\frac{1}{2}\phi\right)

であり、超越の定義を次のように示した。

\operatorname{gd} \,u = i^{-1}\ln\tan\left(\frac{1}{4}\pi+\frac{1}{2}ui\right)

よって、それはu実関数であることが即座に見いだされる。

適用[編集]

地球真球と見立てたとき、メルカトル図法による投影面上における、赤道からの緯線距離についてのグーデルマン関数の関数値は、子午線弧長、すなわち実際の地球上の緯度に相当する。ガウス・クリューゲル図法による地図投影においては、座標換算の中間変数として用いられる正角緯度の導入時においてもグーデルマン関数が現れる[3]

また、グーデルマン関数は、倒立振子(とうりつしんし、Inverted pendulum)の非周期解に現れる[4]

脚注[編集]

  1. ^ George F. Becker, C. E. Van Orstrand. Hyperbolic functions. Read Books, 1931. Page xlix.
  2. ^ Cayley, A. (1862). “On the transcendent gd. u”. Philosophical Magazine (4th ser.) 24: 19–21. doi:10.1080/14786446208643307 (inactive November 1, 2014). http://books.google.com/books?id=K1cEAAAAYAAJ&pg=PA19. 
  3. ^ 河瀬和重 (2011): Gauss-Krüger投影における経緯度座標及び平面直角座標相互間の座標換算についてのより簡明な計算方法, 国土地理院時報, 121, 109–124.
  4. ^ John S. Robertson, "Gudermann and the Simple Pendulum", The College Mathematics Journal 28:4:271–276 (September 1997) at JSTOR

参考文献[編集]

関連項目[編集]