グレート・ウェスタン鉄道4000型蒸気機関車

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グレート・ウェスタン鉄道4000型蒸気機関車(4000 Class)はイギリスのグレート・ウェスタン鉄道(Great Western Railway:GWR)が製造した急行旅客列車用テンダー式蒸気機関車の1形式である。各車の固有名から、スター型(Star Class)とも呼ばれる。軸配置はテンホイラー(4-6-0あるいは2C)。

概要[編集]

スター型はGWRの技師長(Chief Mechanic Engineer:CME)であったジョージ・チャーチウォードGeorge Jackson Churchward:在任期間:1902年 - 1922年)が1906年にグレート・ウェスタン鉄道スウィンドン工場で試作した、アトランティック形軸配置(4-4-2あるいは2B1)[1]のテンダー式蒸気機関車であるNo.40 North Starを原型とする。

このNo.40 North Starはドゥ・グレーン(De Glehn)式複式4気筒構造[2]と、チャーチウォードが独自に設計した単式4気筒構造[3]の比較のために設計されたもので、このNo.40は後者の機構を搭載した最初の機関車となった。

GWRでは双方の機構の比較評価試験を行い、最終的にチャーチウォードによる単式4気筒方式の採用が決定された。

かくしてセイント型(Saint Class:2900 - 2955・2971 - 2990・2998)[4]の強化形として、No.40の設計を軸配置4-6-0あるいは2Cに改めた本形式が量産化された。

設計[編集]

No.40 North Starは弁装置関係以外のその基本設計の多くをセイント型に負っており、特にボイラーはGWRでNo.1形(Type No.1)と呼ばれる、セイント型で初採用された標準ボイラーを搭載していた。

このため、これを基本として改設計が実施された量産車も仕様は共通とされ、No.1形ボイラーが引き続き搭載された。

単式4気筒構成となったため、セイント型と比較して動輪周辺の設計が大きく変更され、内側シリンダーは第1動輪を、外側シリンダーは第2動輪を主動輪として駆動するようになり、各動輪のバランスウェイト(釣り合い錘)もこれに合わせて調整が変更されている[5]。ただし、台枠はセイント型の内側板台枠構造をほぼそのままの形で継承している。

量産車では効率面で有利とされる複式[6]ではなく単式が採用された。これは複式の操作の難しさが問題となったこともあったが、その一方で蒸気機関のシリンダが動作する際の4行程をそれぞれ4つのシリンダでバルブタイミングを1/4周期ずつずらして動作させることによってボイラから供給される蒸気を連続的に消費し、連続的に排気=火室内通気させることが可能となる単式4気筒機は、高カロリーのウェールズ炭の使用を前提とするGWRの場合、燃焼効率の改善や蒸気供給時の脈動を防ぐという点でむしろ複式4気筒機よりも有利であったことに理由があり、加えて地上施設の制約から外側シリンダ径を無闇に大きくできない[7]、というイギリスの鉄道固有の事情もあって、こちらが選択されている。

製造[編集]

本形式の量産車は、4001 - 4072がスウィンドン工場で1907年から第一次世界大戦に伴う中断を挟んで1922年までにかけて製造された。

また、試作車であるNo.40も1909年11月に量産車と同じテンホイラーに大改造の上で本形式に編入され、同車は1912年12月にトップナンバーであるNo.4000に改番された。

なお、以後の増備は本形式を基本としつつ、各シリンダの内径と火格子面積を増大して出力の増大を図った改良強化形である、キャッスル型(Castle Class)へ移行している。

運用[編集]

本形式はGWRの主力機関車の一つとして大量導入され、その強力さからGWRの主要幹線で重用された。

1913年には新型の過熱器の導入が全車について開始され、性能向上が図られたが、後継となるキャッスル型の就役開始で性能面での陳腐化が目立ち始めた。このため本形式の内、試作車であるNo.4000 North Starを含む15両については1925年よりシリンダおよびボイラーの換装を実施の上、キャッスル型に編入されたが、残りは1932年より廃車が始まり、国有化後の1957年までに全車廃車となった。

諸元[編集]

Lode Star GWR 4-6-0.JPG
  • 全長 19,862.8mm
  • 全高 mm
  • 軸配置 2C(テンホイラー)
  • 動輪直径 2,044.7mm
  • 弁装置:
    • 内側シリンダー:ワルシャート式弁装置
    • 外側シリンダー:ロッキングバーにより内側シリンダーの弁装置から駆動
  • シリンダー(直径×行程) 381mm×660mm [8]
  • ボイラー圧力 15.82kg/cm² (= 225lbs/in2 = 1.55MPa))
  • 火格子面積 2.52m²
  • 機関車重量 75.54t
  • 最大軸重 20t
  • 炭水車重量 46.64t

保存車[編集]

現在、No.4003 Lode Starヨーク国立鉄道博物館に静態保存されている。

脚注[編集]

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  1. ^ セイント型の試作車である171号機が新造後まもなくアトランティック形軸配置に改造されたのと同じく、ドゥ・グレーン式機関車と条件を揃えて性能試験を実施するためにそれらと同じ軸配置が採用された。
  2. ^ フランスのアルザス機械製造会社(Société Alsacienne de Constructions Mécaniques:SACM)の技師であった英仏混血のアルフレッド・ドゥ・グレーン(Alfred De Glehn)によって1890年代に開発された。なお、GWRではこの方式を採用した機関車を評価試験目的でSACMから購入している。
  3. ^ ドゥ・グレーン式と比較して弁装置は内部の2シリンダーをワルシャート式とし、外側の2シリンダーをロッキングバーで連動動作させるシンプルな構造に変更されている。
  4. ^ チャーチウォードが前職のスウィンドン工場長時代から設計を始め、1902年に試作車を製造、更に1906年から1913年にかけてスウィンドン工場で量産した。
  5. ^ 外側シリンダーと内側シリンダーで別の動輪を駆動するレイアウトはドゥ・グレーン式弁装置の特徴の一つであり、これを参考にして開発された40号機の弁装置にもそのまま採用され、量産化にあたっても特に大きな変更もないまま継承されている。なお、単式2気筒のセイント型の場合は第2動軸が主動軸である。
  6. ^ 1つ目のシリンダー(一般に高圧シリンダーと呼称する)で使用した蒸気をそのまま放出してしまわず、2つ目のシリンダー(低圧シリンダーと呼称する)に送り込んで再利用する方式。
  7. ^ 複式の場合必然的に2段目の低圧シリンダが大径化し、台枠への内装は困難となるため、通常は外側シリンダが低圧シリンダとなる。それゆえ、車両限界や建築限界、特にプラットホームの位置関係から、イギリスでは外側シリンダ径が通常よりも大幅に増大する、大出力複式機関車の導入が難しい状況にあった。
  8. ^ 単式のため4気筒とも同一サイズ。