グリーゼ667

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
グリーゼ667A/B/C
データ
元期 J2000      Equinox J2000
星座 さそり座
赤経 17h 18m 57.16483s[1]
赤緯 −34° 59′ 23.1416″[1]
視等級 (V) 5.91/7.20/10.20[2]
特徴
スペクトル分類 K3V + K5V + M1.5[2][3]
U-B 色指数 0.83/???/1.17
B-V 色指数 1.03/???/1.57
変光星 A: 疑われる
B: 不明
C: 閃光星
アストロメトリー
視線速度 (Rv) 0 km/s
固有運動 (μ) 赤経: 1129.76[1] ミリ秒/
赤緯: −77.02[1] ミリ秒/
年周視差 (π) 146.29 ± 9.03[1] ミリ秒
距離 22 ± 1 光年
(6.8 ± 0.4 パーセク)
絶対等級 (MV) 7.07/8.02/11.03
詳細
グリーゼ667A/B
質量 0.73 / 0.69[4] M
半径 0.76 / 0.70[2] R
金属量 –0.59 [Fe/H][5]
グリーゼ667C
質量 0.37[4] M
半径 0.42[2] R
光度 0.014[6] L
表面温度 3,700 ± 100[6] K
金属量 –0.59 ± 0.10 [Fe/H][6]
年齢 >2 × 109[6]
連星のデータ[7]
伴星 グリーゼ667B
公転周期 (P) 42.15
軌道長半径 (a) 1.81"
離心率 (e) 0.58
軌道傾斜角 (i) 128°
昇交点 (Ω) 313°
近星点 元期 (T) 1975.9
近点引数 (ω)
(secondary)
247°
他の名称
142 G. Scorpii, HD 156384, HR 6426, CD−34°11626, SAO 208670, HIP 84709, LHS 442/442/443.
参照データベース
SIMBAD data
NStED data
ARICNS data
Extrasolar Planets
Encyclopaedia
data

グリーゼ667: Gliese 667)は、太陽系から約22.1光年(6.8パーセク)の距離に存在する三重星系である。さそり座の方角に位置しており、裸眼では5.89の一つの天体として観測できる。GJ 667Gl 667, 142 G. Scorpii, HR 6426といった名称でも知られている。

この天体は比較的高い固有運動を持っており、天球上を年あたり1以上移動する。

恒星[編集]

この恒星系は二つの明るい恒星、グリーゼ667Aとグリーゼ667B、それに両者と比較して小さなグリーゼ667Cから構成される。明るい二つの恒星グリーゼ667Aとグリーゼ667Bは、平均角距離1.81軌道離心率0.58という軌道でお互いを周回している。両者の実際の距離は12.6AUと推測されており、これは地球太陽の間の距離の約13倍にあたる。高い軌道離心率により、両者の距離は最も接近した場合で約5AU、離れた場合で約20AUとなる。その公転周期は42.15年で、地球から見た軌道平面軌道傾斜角は128°である。三つ目の恒星、グリーゼ667Cは、グリーゼ667A/Bのペアを周回する軌道を取っており、その角距離は30秒で、実際の距離にすると56AUから215AUに相当する[要出典]

グリーゼ667A/B[編集]

この恒星系で最も大きな天体が、スペクトル分類K3VのK型主系列星グリーゼ667Aである[2]。その質量は太陽の約73%[4]、半径は約76%だが[2]、放射しているエネルギー量は太陽の12~13%程である[要出典]。他の恒星と比べ星を構成する物質中の水素ヘリウムの割合が高く、その金属量は太陽の26%程度と非常に少ない[5]。見かけの明るさは6.29だが、地球から恒星までの距離を考慮した絶対等級では7.07等となる(星間減光を無視した場合)。

主星に似た二つ目に大きな天体が、スペクトル分類K5Vで同じくK型主系列星のグリーゼ667Bである。その質量は太陽の約69%で[4]、これは主星の質量の約95%であり、放射しているエネルギー量は太陽の5%程である。見かけの明るさは7.24等で、絶対等級では8.02等となる。

グリーゼ667C[編集]

グリーゼ667Cはこの恒星系で最も小さな恒星であり、その質量は太陽の約37%[4]、半径も約42%しかない[2]。この大きさはスペクトル分類M1.5の赤色矮星に相当する。放射しているエネルギー量は太陽の僅か1.4%程で、表面温度も低く3,700K程度とみられている[6]。見かけの明るさは10.25等で、絶対等級では11.03等となる。

後述のグリーゼ667Ccを始めとする惑星系が存在する。

もし惑星グリーゼ667Ccの表面からグリーゼ667Cを見た場合、その角直径は1.24にもなり、地球から見た太陽の2.3倍の大きさに見えるはずである。これはグリーゼ667Ccから見たの0.003%にあたる。[note 1]

惑星系[編集]

グリーゼ667Cbとその背後で輝くグリーゼ667A/B(想像図)

グリーゼ667Cには7つの太陽系外惑星が存在する可能性があることが報告されている[8]。最初に発見されたグリーゼ667Cb英語版グリーゼ667Cc英語版は、惑星の質量が地球の5.7倍と4.5倍で、その質量からスーパー・アースに分類される。Cbは公転周期1週間で軌道長半径0.05AU軌道を、Ccは4週間で0.123AUの軌道を周回する。

Cbの発見は2009年10月19日、HARPSグループにより他の29の系外惑星の発見とあわせて発表された。Ccの発見は2011年11月21日、カーネギー研究所ゲッティンゲン大学の研究者によりプレプリントという形で初めて言及され、2012年2月2日に査読誌にて発表された。[9][6][10] この発表では、グリーゼ667Ccをこれまで見つかった中で最高の液体を持つ惑星の候補だとしており、これはその表面に生命が存在する可能性が高いことを意味している[11]。また、軌道の詳細な分析結果とそのパラメータも提示された[6]

ドップラー分光法による観測結果では、グリーゼ667Cd英語版となりうるもう一つのスーパーアースの存在が示唆されていた。もし存在すればその軌道はハビタブルゾーンの外側だが、大量のCO2温室効果ガスを持つのであればこちらも液体の水を持つ可能性がある(2007年に発見されたグリーゼ581dの条件と類似)。[11] 研究者はドップラー分光法のデータから更なる惑星が見つかる可能性も言及していたが、それらは存在したとしても安定しない極端な軌道を持つものだとみていた[6]

2013年には、新たな観測データと過去の観測データの精査により、グリーゼ667Cdの存在が確認され、また新たにグリーゼ667Ce英語版グリーゼ667Cf英語版グリーゼ667Cg英語版が発見された。確定済みで6個の惑星があるのは、惑星系として多い部類に入る。さらにグリーゼ667Chの存在が示唆されている。また、CeとCfはハビタブルゾーン内にあり、これまでハビタブルゾーン内の有力候補だったCcは、ハビタブルゾーンの内側の限界と、水の雲が存在すればハビタブルゾーンに入る外側の限界線の間に存在する事が示された[8]。ハビタブルゾーン内に3つ以上の惑星を持つ惑星系は、グリーゼ667Cが初めてである。[12]

グリーゼ667Cの惑星[8]
名称
(恒星に近い順)
質量 軌道長半径
天文単位
公転周期
()
軌道離心率 半径
b英語版 5.6 M 0.0505 7.2004 0.13
h (未確認) 1.1 M 0.0893 16.946 0.06
c英語版 3.8 M 0.125 28.140 0.02
f英語版 2.7 M 0.156 39.026 0.03
e英語版 2.7 M 0.213 62.24 0.02
d英語版 5.1 M 0.276 91.61 0.03
g英語版 4.6 M 0.549 256.2 0.08

参考文献[編集]

  1. ^ a b c d e van Leeuwen, F. (November 2007), “Validation of the new Hipparcos reduction”, Astronomy and Astrophysics 474 (2): 653–664, Bibcode 2007A&A...474..653V, doi:10.1051/0004-6361:20078357 
  2. ^ a b c d e f g Pasinetti Fracassini, L. E. et al. (February 2001), “Catalogue of Apparent Diameters and Absolute Radii of Stars (CADARS) - Third edition - Comments and statistics”, Astronomy and Astrophysics 367: 521–524, arXiv:astro-ph/0012289, Bibcode 2001A&A...367..521P, doi:10.1051/0004-6361:20000451  Note: see VizieR catalogue J/A+A/367/521.
  3. ^ “Toward spectral classification of L and T dwarfs: infrared and optical spectroscopy and analysis”, The Astrophysical Journal (The American Astronomical Society), (January 2002), http://iopscience.iop.org/0004-637X/564/1/466/pdf/0004-637X_564_1_466.pdf 2012年2月14日閲覧。 
  4. ^ a b c d e Tokovinin, A. (September 2008), “Comparative statistics and origin of triple and quadruple stars”, Monthly Notices of the Royal Astronomical Society 389 (2): 925-938, Bibcode 2008MNRAS.389..925T, doi:10.1111/j.1365-2966.2008.13613.x 
  5. ^ a b Cayrel de Strobel, G.; Soubiran, C.; Ralite, N. (July 2001), “Catalogue of [Fe/H] determinations for FGK stars: 2001 edition”, Astronomy and Astrophysics 373: 159–163, arXiv:astro-ph/0106438, Bibcode 2001A&A...373..159C, doi:10.1051/0004-6361:20010525 
  6. ^ a b c d e f g h Anglada-Escude, Guillem et al. (February 2012), “A planetary system around the nearby M dwarf GJ 667C with at least one super-Earth in its habitable zone”, The Astrophysical Journal Letters accepted, Bibcode 2012arXiv1202.0446A, http://arxiv.org/pdf/1202.0446v1.pdf 
  7. ^ Söderhjelm, Staffan (January 1999), “Visual binary orbits and masses POST HIPPARCOS”, Astronomy and Astrophysics 341: 121–140, Bibcode 1999A&A...341..121S 
  8. ^ a b c A dynamically-packed planetary system around GJ667C with three super-Earths in its habitable zone arXiv
  9. ^ Bonfils, X. et al. (November 2011), “The HARPS search for southern extra-solar planets XXXI. The M-dwarf sample”, Astronomy and Astrophysics submitted, arXiv:/1111.5019, Bibcode 2011arXiv1111.5019B 
  10. ^ University of Göttingen. Presseinformation: Wissenschaftler entdecken möglicherweise bewohnbare Super-Erde - Göttinger Astrophysiker untersucht Planeten in 22 Lichtjahren Entfernung. Nr. 17/2012 - 02.02.2012. Announcement on university homepage, retrieved 2012-02-02
  11. ^ a b Chow, Denise (2012年2月2日). “Newfound Alien Planet is Best Candidate Yet to Support Life, Scientists Say”. Space.com英語版. 2012年2月3日閲覧。
  12. ^ グリーゼ667Cのハビタブルゾーンに複数の系外惑星”. AstroArts (2013年6月27日). 2013年6月27日閲覧。

脚注[編集]

  1. ^ h=\sqrt \frac{{{T}^4_{\odot}}_{\rm eff}} {{T}_{\rm eff}^4}*\frac \sqrt{L} {a}. where h is the visual diameter of the star, {{T}_{\odot}}_{\rm eff} is the effective temperature of the Sun (sol), {{T}_{\rm eff}} the effective temperature of the star, {L} is the luminosity of the star and a is the distance of the planet from the star in AU.

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

座標: 星図 17h 18m 57.16483s, −34º 59' 23.1416''