グランドホテル方式

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グランドホテル方式(グランドホテルほうしき)とは、映画小説演劇における表現技法のことで、「ホテルのような一つの大きな場所に様々な人間模様を持った人々が集まって、そこから物語が展開する」という方式のことである[1]。映画『グランド・ホテル』によって効果的に使用されたため、この名が付いているが、その原型はバルザックの『ゴリオ爺さん』の下宿屋・ヴォケール館の食堂にすでに看取されている[1]群集劇(ぐんしゅうげき)、群像劇(ぐんぞうげき)、アンサンブル・プレイとも呼ばれる。

アメリカ合衆国など英語圏では、アンサンブル・キャストensemble cast)と呼ばれる。主人公を1人や2人に限定せず、数人のキャラクターのストーリーラインを並行して進行させたり、エピソード毎に異なるキャラクターに焦点を当てるという手法である。この方式には、レギュラー出演者が急に降板となった場合でも番組が継続できるという利点がある。

具体例[編集]

例えばこの手法の名前にもなっている『グランド・ホテル』では、とあるグランドホテルのそれぞれの宿泊客の人生が描かれている。

落ち目のバレリーナや自らを「男爵」と名乗るコソ泥、余命いくばくもない工夫、その工夫の働く会社の社長と、速記秘書、そして妻の出産報告を待っているフロント係、といった具合である。それらが出会いと別れを繰り返していき、一つの物語を構築していくのである。

なお、映画テレビドラマでは、カットバックは自由に行われ、複数の人物に自由に焦点を動かすことができる。これは単に三人称描写、というだけであり、これだけではグランドホテル形式とは呼ばない。

類似する形式[編集]

密室劇
「グランドホテル方式」では、ある一定の場所(空間)にやって来た者たちが、それぞれ複数の場所(部屋など)で物語が展開する様相になるが、それを一つの空間に「限定」したものが「密室劇」であり、映画『十二人の怒れる男』などで有名である。
駅馬車方式
密室化した乗り物に乗り合わせた人物間の人間関係と、乗り物そのものに襲いかかる障害を同時並行で描く物語のことを、映画『駅馬車』にちなんで、「駅馬車方式」と呼ぶこともある。この駅馬車を現代の乗り物に置換して映画化したのが、大空港ポセイドン・アドベンチャーといえる。
メリーゴーラウンド方式
ある関わり合いを持った複数の同格の登場人物が、それぞれあまり絡み合うことなく、交互に並行的にストーリーが進んでいく構成を、サマセット・モームの『メリ・ゴオ・ラウンド』の構成にちなんで、「メリーゴーラウンド方式」と呼ぶこともある[2][3]三島由紀夫の『鏡子の家』や、深沢七郎の『東京のプリンスたち』の構成に看取される[2][3]

主な作品[編集]

映画[編集]

連続テレビドラマ[編集]

テレフィーチャー [編集]

アニメ[編集]

ゲーム[編集]

漫画[編集]

小説[編集]


= 関連項目[編集]

脚注[編集]

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  1. ^ a b 鹿島茂「『幸福号出帆』と『鏡子の家』の関係」(三島由紀夫『幸福号出帆』)(ちくま文庫、1996年)
  2. ^ a b 田中西二郎「解説」(文庫版『鏡子の家』)(新潮文庫、1964年。改版1999年)
  3. ^ a b 栗原裕一郎豊崎由美石原慎太郎を読んでみた』(原書房、2013年)