クロルデコン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
クロルデコン
{{{画像alt2}}}
識別情報
CAS登録番号 143-50-0 チェック
PubChem 299
ChemSpider 293
特性
化学式 C10Cl10O
モル質量 490.64 g mol−1
外観 結晶性固体
密度 1.6 g/cm3
融点

350℃(昇華

への溶解度 2.7 mg/L
特記なき場合、データは常温 (25 °C)・常圧 (100 kPa) におけるものである。

クロルデコン: Chlordecone)は有機塩素化合物の一種。殺虫剤として製造されたほか、マイレックスの分解生成物としても発生する。商品名のケポン (Kepone) でも呼ばれる。

用途[編集]

アメリカのアライドケミカル社が開発した薬剤。1966年から1973年までは、バージニア州ホープウェルにある同社工場で製造されたが、1974年から1年半は下請けのライフサイエンスプロダクト社に製造を委託された。「Kepone」の商品名で、食葉性害虫向け殺虫剤として南アメリカやアフリカ、アジア、ヨーロッパに輸出されたが、日本では農薬登録を受けていない[1]。アメリカでは1975年に使用が禁止されたが、フランス領アンティルマルティニークグアドループでは1993年まで、バナナ農園などで使用された。

安全性[編集]

半数致死量(LD50)はラットへの経口投与で102mg/kg、ウサギへの経皮投与で410mg/kg[2]。皮膚からも吸収される可能性がある。国際がん研究機関(IARC)では発癌性についてGroup2B(ヒトに対し発癌性が疑われる)に分類している。1975年に、クロルデコンを製造していたライフサイエンスプロダクト社の従業員133人中76人に、ふるえや視神経の異常、肋骨の痛み、精液の減少などの中毒症状が発症した[1]。燃焼や酸との接触により、塩化水素を含む有毒ガスを生じる[3]

環境への影響[編集]

ニベ科の魚の96時間半数致死濃度(LC50)が0.0066 mg/Lと、強い魚毒性を持つ[2]。魚類や哺乳類などで生物濃縮が起こることがある[3]。1970年代に、アライドケミカル社の工場からクロルデコンを含む廃液がジェームズ川に流され、同川やチェサピーク湾を汚染。州政府による漁獲禁止措置が取られ、漁民はアライド社・ライフサイエンス社を提訴した。1991年には、この事件から名付けられたインディー・ロックバンドも出現した (Kepone (band)

関連項目[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b 植村振作・河村宏・辻万千子・冨田重行・前田静夫著 『農薬毒性の事典 改訂版』 三省堂、2002年ISBN 978-4385356044
  2. ^ a b 製品安全データシート(安全衛生情報センター)
  3. ^ a b 国際化学物質安全性カード