クレンアーキオータ門

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内, 検索
クレンアーキオータ
Urzwerg.jpg
Ignicoccus hospitalis
分類
ドメ
イン
: 古細菌 Archaea
: クレンアーキオータ界
Crenarchaeota
: クレンアーキオータ門
Crenarchaeota
学名
Crenarchaeota
Garrity and Holt 2002
和名
クレン古細菌
下位分類(綱・目)

クレンアーキオータCrenarchaeota、エオサイト/Eocyte、クレンアーキア/Crenarchaea)は、好熱菌を中心とした古細菌分類群である。27属57種の菌が含まれ、正式に発表されている古細菌のおおよそ2割弱を占める。

他の古細菌グループとは、基本的に16S rRNA系統解析によって区別される[1]。進化速度が遅く、古細菌の祖先的な形質を残していると考えられたことから、ギリシャ語のκρηνη(ラテン文字:Crene、意味:泉・源泉)に因んで命名された。

目次

[編集] 特徴

元々系統解析により設定された門であり、表面的な性質はユリアーキオータ門に属すテルモコックス綱アルカエオグロブス綱とそれほど差はない。多くが超好熱菌や好熱好酸菌に占められ、水素硫黄を酸化、あるいは従属栄養的に増殖するものが多い。典型的な例としては、好熱好酸好気性で硫黄を酸化するSulfolobus、110°Cで増殖する嫌気性のPyrodictiumなどが知られている。

固有の形質としては、ユリアーキオータと異なり、ヒストンを持たないことが指摘されてきた。全ゲノムが解読されているクレンアーキオータ17種のうち、ヒストンと相同性のある遺伝子を持つのはテルモプロテウス目3種のみである。また、殆どの原核生物に保存されているFtsZも保有していない。細胞分裂の際には2008年に別々の研究グループから、真核生物エンドソーム小胞を形成する時と同様の機構(ESCRT複合体)を使って分裂するという報告がなされている[2]

この他、ユリアーキオータとの比較では、古細菌型DNA複製酵素Pol Dを持たない、リボソーム[3]RNAポリメラーゼ[4]のサブユニット数が多いなどの差異がある。細胞壁はユリアーキオータほど多様ではなく、Ignicoccus1属(外膜又は無壁)を除き、S層が担う。アクチンArp2/3と相同性のある蛋白質も報告されている。

[編集] 分類

[編集] 系統

Thermoprotei  


Sulfolobales




Fervidicoccales




Desulfurococcales



Acidilobales






Thermoproteales



[編集] エオサイト仮説

左は古細菌を単系統とする説、右はエオサイト説(矢印はEF-1α/Tuに挿入が発生した地点を指す)

クレンアーキオータは、ユリアーキオータよりも真核生物に近縁とする仮説が比較的古くから指摘されてきた。これをエオサイト仮説という。現在一般的には古細菌を単系統とする説(クレンアーキオータは真核生物よりもユリアーキオータに近縁)が知られているが、両者とも決定的な証拠が見つかっているわけではなく、論争が続いている。

エオサイト説の根拠としては、伸長因子-1α/Tu (EF-1α/Tu) GTP結合ドメイン中の挿入配列(GEFEAGISKDGまたはその類似配列11残基)が真核生物とエオサイト[5]のみに存在すること、両生物でrRNA遺伝子の構造、リボソームタンパク質が似ていることなどがよく使われる。アミノ酸やRNA配列による系統解析はどちらかといえば古細菌を単系統とする説を支持する場合が多いが、エオサイト説を支持する系統解析例もいくつか存在する(Cox, C. et al. (2008)[6])。

また、2011年には、クレンアーキオータ門、タウムアーキオータ門コルアーキオータ門アイグアーキオータ門を含む"TACK上門"に真核生物の起源があるという仮説が提唱された。これによると、TACKと真核生物は、細胞分裂、細胞膜の再構築、細胞形状の決定、タンパク質の再利用に関するタンパク質を共有するという[7]

[編集] 脚注

  1. ^ Woese, CR; Kandler O, Wheelis ML (1990). “Towards a natural system of organisms: proposal for the domains Archaea, Bacteria, and Eucarya”. Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87: 4576–4579. PMID 2112744. 
  2. ^ Lindås, A.C., Karlsson, E.A., Lindgren, M.T., Ettema, T.J., Bernander, R. (2008). “A unique cell division machinery in the Archaea”. Proc Natl Acad Sci U S A 105 (45): 18942-6. doi:10.1073/pnas.0809467105. PMID 18987308. Cann, I.K. (2008). “Cell sorting protein homologs reveal an unusual diversity in archaeal cell division”. Proc Natl Acad Sci U S A 105 (45): 18653-4. doi:10.1073/pnas.0810505106. PMID 19033202. 
  3. ^ リボソームタンパクは68種であり、原核生物最多である。内訳は全生物に共通するものが34種、真核生物と古細菌に共通するものが28種、真核生物とクレンアーキオータに共通するものが5種、クレンアーキオータとユリアーキオータに共通するものが1種
  4. ^ RpoG(真核生物のRpb6に相当)の存在
  5. ^ クレンアーキオータの別名。階級は“[[界 (分類学)|]]”が与えられることが多い。なお、この挿入配列はタウムアーキオータやアイグアーキオータと呼ばれる系統にも存在する
  6. ^ Cox, C. J., Foster, P. G., Hirt, R. P., Harris, S. R., Embley, T. M. (2008). “The archaebacterial origin of eukaryotes”. Proc Natl Acad Sci U S A 105 (51): 20356-61. doi:10.1073/pnas.0810647105. 
  7. ^ Lionel Guy, Thijs J.G. Ettema (2011). “The archaeal ‘TACK’ superphylum and the origin of eukaryotes”. Trends in Microbiology 19 (12): 580-587. doi:10.1016/j.tim.2011.09.002. 
個人用ツール
名前空間

変種
操作
案内
ヘルプ
ツールボックス
他の言語