クル国

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クル・クシェートラに位置するクル国

クル国サンスクリット語 कुरु Kuru、英語: Kuru Kingdom)は、古代インド十六大国Mahajanapada)のうちのひとつ。クル国の位置した地域は、クル・クシェートラと呼ばれる、十王戦争に勝利したバラタ族プール族と連合し形成したクル族の活動領域が中心であり、現在のハリヤーナ州からデリー、そしてガンジス川上流域にあたる。クル族中心の部族共和制を採っていたと考えられる。パンチャーラ国の隣国である。

歴史[編集]

後期ヴェーダ時代[編集]

アタルヴァ・ヴェーダ』には、国王パリークシット英語版のことが述べられている。また、『アイタレーヤ・ブラーフマナ英語版』や『シャタパタ・ブラーフマナ』には、その息子の国王ジャナメージャヤ英語版が言及されている。

後期ヴェーダ時代の文献には、クル国はパンチャーラ国と並び描かれることが多く、両国は緊密な関係にあったと推測されている。

叙事詩時代[編集]

マハーバーラタ』には、クル・ジャンガラクル・ラーシュトラ、そしてクル・クシェートラという三つの領域が述べられている。

『マハーバーラタ』の中に含まれている聖典『バガヴァッド・ギーター』は、クル・クシェートラにおけるパーンダヴァ五王子カウラヴァ百王子とのクルクシェートラの戦い英語版を舞台としている。

初期仏典時代[編集]

クル国は、仏教の聖典『アングッタラ・ニカーヤ』の中で、十六大国のひとつに数えられている。しかし、ブッダの生きた時代には、領域はかなり縮小しており、政治的な勢力も小さいものであったと推測されている。しかし、首都とされるインドラプラスタ英語版サンスクリット語 इन्द्रप्रस्त、パーリ語 इन्दपत्त インダパッタ)や、他にもハスティナープラ(サンスクリット語 हस्तिनापुर、パーリ語 हत्थिनीपुर ハッティニープラ)など、発達した大きな都市を擁していた。

ユディシュティラの末裔と称する国王ダナンジャヤが、仏典においては言及されている。王族の一部には、仏教を信仰した者もいたことが伝えられている。ブッダはクル国においても教えを広め、『マハーサティパッターナ・スッタ』、『マハーニダーナ・スッタ』、『アーネンジャサッパーヤ・スッタ』、『マーガンディヤ・スッタ』、『ラッタパーラ・スッタ』、『サンマサ・スッタ』、『ドゥティヤ・アリヤーヴァーサ・スッタ』などは、クル国における説法の記録とされている。

文化[編集]

クル国においては、口承されていたヴェーダを、聖典として編纂する事業が始まった。

考古学的には、紀元前12世紀から紀元前9世紀頃の、黒色土器と赤色土器を用いた文化を有したと考えられている。