ギプスコア県

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ギプスコア県
バスク語: Gipuzkoa, スペイン語: Guipúzcoa
ギプスコア県の市旗 ギプスコア県の市章
位置
の位置図
座標 : 北緯43度10分00秒 西経2度10分00秒 / 北緯43.16667度 西経2.16667度 / 43.16667; -2.16667
行政
スペインの旗 スペイン
  バスク自治州
  ギプスコア県
地理
面積  
   1,909 km2
人口
人口 (2011現在)
   709,607人
    人口密度   3,061人/km2
その他
郵便番号 20
公式ウェブサイト : ギプスコア県
ギプスコア
Gipuzkoa
ギプスコア県の旗 ギプスコア県の印
(紋章)
スペイン語:ギプスコア県 (Guipúzcoa)
住民の呼称: gipuzkoar, giputz
ギプスコア県の位置
中心都市 ドノスティア
方言 ギプスコア方言
ビスカヤ方言
高ナファロア方言

ギプスコア県バスク語GipuzkoaGipuzkoako Probintziaカスティーリャ語 : Provincia de Guipúzcoa)は、スペインバスク州の北部にある。県都はドノスティア / サン・セバスティアン。89のムニシピオ(基礎自治体)を持つ。

語源・表記[編集]

歴史上最初に文献に登場するこの地域の名称は、1025年に記録されたイプスコア(Ipuscoa)である[1]。その後はいくつかの文献に類似した地名が登場しており、イプスコア(Ipuzcoa)、イプクチャ(Ipuçcha)、イプスカ(Ipuzka)などが確認されている。ギプスコア(Gipuzkoa)という単語の完全な語源は確認されていないが、バスク語のギプツ(Giputz)という単語と関連しており[1]、前半部分のイプ(ip)はイパル(ipar)=「北」、イプルディ(ipurdi)=「後ろ」、イプイン(ipuin)=「物語」などという単語と関わりがあるとされる。この解釈によれば、イプスコ(ipuzko)という単語は「北の」または「北へ」という意味を持っていた可能性がある[1]

Gipuzkoa

「Gipuzkoa」はエウスカルツァインディア(バスク語アカデミー)が推奨するバスク語の綴りであり、一般的にバスク語の公式文書で使用される。カスティーリャ語で書かれた文書であっても、公的な書類ではこのバスク語の綴りが必須である。スペイン・バスクにおけるメディアでもっとも頻繁に使用される綴りでもある。スペイン1978年憲法のバスク語版やバスク自治憲章英語版(ゲルニカ憲章)のバスク語版でもこの綴りが使用されている。ギプスコア県議会はギプスコアの歴史的領域を示す際の唯一の公式表記としてこの綴りを定めている。

Guipúzcoa

「Guipúzcoa」はカスティーリャ語の綴りである。レアル・アカデミア・エスパニョーラ(スペイン語アカデミー)はカスティーリャ語での対外的な公的文書にのみこの表記を用いることを決定し、2011年からは原則としてバスク語の「Gipuzkoa」という綴りを使用することが必須となった。「Guipúzcoa」はスペイン1978年憲法のカスティーリャ語版やバスク自治憲章のカスティーリャ語版で使用されている。

人口[編集]

西はビスカヤ県、南西はアラバ県、東はナバーラ州、北東はフランスピレネー=アトランティック県と接しており、北はビスケー湾のカンタブリア海に面する。面積は1,909km2であり、スペインの50県中でもっとも小さい。2011年の人口は709,607人であり、人口の半分以上がサン・セバスティアン都市圏に、人口の約25%が県都サン・セバスティアンに住んでいるが、数多くの人口密集地が県全土に点在している。県都以外の重要な自治体には、イルンエレンテリアサラウツアラサーテ/モンドラゴンエイバルオンダリビア(フランスとの国境)、オニャティトローサベアサインパサイア(主要な港町)などがある。

地勢[編集]

ギプスコア県は西岸海洋性気候(Cfb)でエスパーニャ・ベルデと呼ばれる地域にあり、緯度の割には温暖である。ビスケー湾と南部のギプスコア山地をつなぐ丘陵や草原の景観を特色としており、バスク山地の一部であるギプスコア山地の丘陵や起伏の多い地形はハイキングなどに適している。いくつかの山は象徴的な意味を持っており、それらの山頂には十字架・記念碑・登山者用郵便受けなどが置かれている。頂上に歩いて達する山岳巡礼も行われているが、巡礼は次第に宗教的熱意を失って世俗化している。ギプスコア県を象徴する山には、アイアコ・アリア山、エルニオ山、チンドキ山、アイスコリ山英語版、イサライツ山などがある。アララール山地英語版にあるアララール国立公園はギプスコア県とナバーラ州の境界付近にある[2]

ギプスコア県の河川はビスケー湾に達する他地域の河川とは異なる特色を示している。これらの河川は丘陵の多い内陸部を南から北に流れ、海に達する前には横幅の狭い盆地を短い間隔でいくつも形成する。年間を通じて安定した降水量があるため、これらの河川は季節による流量の変動が小さく、概して短い延長距離を考慮すれば源流部から河口部までに急激な高低差を示す。西から東に、デバ川、ウローラ川、オリア川、県都サン・セバスティアンでビスケー湾に注ぐウルメア川、オイアルツン川、フランスとの国境を形成するビダソア川があり、いずれも南から北に流れて大西洋のビスケー湾に注いでいる。しかし、ギプスコア県の最南端部、セガマ英語版のオツァウツテ集落からだけは細い流れが東に延び、やがてアラゴン川となって地中海に注いでいる。

政治[編集]

2011年5月22日に行われた地方選挙において、同年4月に設立されたばかりの政党連合ビルドゥ(事実上旧バタスナ)が34.60%の票を獲得し、ギプスコア県における第一政治勢力となった。43の自治体で評議員数において絶対多数を獲得、43首長を単独で選出した。他党との連立によって13の首長を選出しており、ビルドゥから56首長が誕生した。これはギプスコア県の自治体総数の48.86%に当たる。また評議員も441人を獲得、ビルドゥはギプスコア県において他の政治勢力を圧倒する勢力となった[3]

交通[編集]

サンティアゴの巡礼路

近代までは南北方向の河川に沿って建設された道路が主要な交通手段だった。内陸部を通るサンティアゴ・デ・コンポステーラの巡礼路のメインとなる巡礼路はギプスコア県を通過しないが、「北の道英語版」はイルンからスペイン領土に入り、オリア川に沿って北東から南西に向かってギプスコア県を縦断。リサラテ英語版(サン・アドリアン・トンネル)を通ってアラバ県に入り、ブルゴスでメインとなる巡礼路に接続した。リサラテは浸食によって岩が削られた天然のトンネルであり、アイスコリ山英語版の中腹にある。1765年までにはデバ川に沿って王立道路が延伸し、「北の道」にはイルン、サン・セバスティアンビルバオサンタンデールオビエドとバスク海岸に沿って歩いてガリシア州に入るルートが加えられた。このルートは「海岸の道」とも呼ばれる。

道路

1973年までにはビルバオサン・セバスティアンを結ぶA-8号線とE-70号線の建設工事が完了。これらの高速道路は東西方向に谷を横断して激しい道路交通を可能にしており、この2都市間の交通の主軸になりつつある。ギプスコア県を通過する主要道路には、イルンとサン・セバスティアンを結ぶN-1号線、サン・セバスティアンからオリア川に沿ってナバーラ州アルトゥサス/アルサスアに向かうE-5号線がある。生態学者・左翼民族主義のバタスナバスク祖国と自由(ETA)の抗議運動や攻撃活動で妨害されながらも、1995年にはA-15号線が延伸してサン・セバスティアンとナバーラ州の州都パンプローナを結んだ。建設計画論争が終結したのは最終的なレイアウトが決定してからだった。2010年1月、ギプスコア県政府は増え続ける道路交通への対策や改善のために、エイバルから南に向かうAP-1号線のビトリア=ガステイスまでの延伸工事を完了し、アラサーテ/モンドラゴンベルガラなどギプスコア県西部の工業地域に快適な交通手段を提供した。南北方向に走るAP-1号線とN-1号線は、ベルガラとベアサインの間で東西方向に走るGI-632号線で接続している。サン・セバスティアン都市圏南部には外環状線が建設され、サン・セバスティアン市街地を通過せずに東西方向に抜けることができる。

鉄道

大まかに言えば、レンフェ(スペイン国鉄)はイルンからサン・セバスティアントローサスマラガを通ってナバーラ州に抜ける南北方向の線路を所有しており、バスク鉄道はイルンからサン・セバスティアン、エイバルを通ってビスカヤ県に抜ける東西方向の線路を所有している。ギプスコア県の主要都市では、アラサーテ/モンドラゴンにはレンフェの路線もバスク鉄道の路線も走っていない。イルンとサン・セバスティアン都市圏の間ではレンフェとバスク鉄道がラピッド・トランジットを運行しており、それぞれ路線にセルカニアス サン・セバスティアン、メトロ・ドノスティアルデアという名称がつけられている。これらのラピッド・トランジットは国境を越えてフランスのアンダイエに達しており、アンダイエでフランス国鉄と接続している。

レンフェの近郊路線はサン・セバスティアンから南西のアイスコリ山麓に向かってオリア川に沿って走る。この路線はエルナニ、トローサ、ベアサイン、スマラガなどを通り、アイスコリ山の東麓でナバーラ州との州境を超えてアルトゥサス/アルサスアに達している。バスク鉄道の近郊路線(コスタルデア線)はサン・セバスティアンからバスク海岸に沿って走る。サラウツデバエルゴイバルなどを通り、エイバル近郊にあるギプスコア/ビスカヤ県境の町エルムア英語版で別の路線に接続している。バスク鉄道はコスタルデア線のスマイアから南のアスペイティア方面に向かう路線、コスタルデア線のデバから東のオンダロア方面に向かう路線の建設を計画している。バスク鉄道は軌間1,000mmの狭軌線であり、また小規模な町を細かくつなぐことで線形が悪いため、長距離の移動には実用的でない。

北東のアンダイエ(フランス)、南東のパンプローナ、南西のビトリア=ガステイス、北西のビルバオを「X」字状につなぐ高速鉄道が建設中であり、その一部は「Y」字状のバスクYとして運行される。これらの高速鉄道は2016年に開通する予定であるが、生態学者や左翼民族主義者などは建設に対して強い反対運動を展開し、また財政的な緊張状態もあって未来が不確かなものとなっている。

航空

オンダリビアにあるサン・セバスティアン空港はギプスコア県唯一の空港である。イベリア航空マドリード=バラハス空港に、ブエリング航空バルセロナ=エル・プラット空港に定期便を運航しており、イベリア航空はパルマ・デ・マヨルカ空港に夏季のみ定期便を運航している。国際路線には県外のビアリッツ=アングレット=バイヨンヌ空港英語版(フランス)やビルバオ空港が使用される。

文化[編集]

ギプスコア県は伝統的にローマ・カトリックの県であり、守護聖人イエズス会の創立者であるイグナチオ・デ・ロヨラとアランツァスの聖母である。ギプスコア県はバスク地方の中でバスク語がもっとも広く用いられている県であり、バスク語の方言としてギプスコア方言がある。ほとんどの地域でギプスコア方言が話されており、他の方言の中で重要な地位を保持して活力を見せている。

トリキティシャ(ボタン式アコーディオン)、チャラパルタ(木琴)、アルボカ(角笛)、チストゥ(縦笛)などがバスクの伝統的な音楽文化であり、バスクの田園風景にはバセリ(高床家屋)が見られる。エドゥアルド・チリーダなどバスクの彫刻家は石・鋼鉄・鉄など重量感のある素材を用いた作品を制作するが、これは重工業が盛んなこの地方の産業構造に起因する。サン・セバスティアンやトローサなどでは国際的なポップカルチャーイベントが開催されている。ホセ・アンヘル・イリバルホセバ・エチェベリアシャビ・アロンソなど、優れたサッカー選手を数多く生み出している。

出身・関連人物[編集]

脚注[編集]

  1. ^ a b c Juntas Generales de Gipuzkoa. “El Territorio Histórico de Gipuzkoa: Nombre”. Gipuzkoa.net. 2011年10月18日閲覧。
  2. ^ Aralar Natural Parkギプスコア県スポーツ・内務局
  3. ^ スペイン内務省 2011年地方選挙結果

外部リンク[編集]