キャシー・バーベリアン

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キャシー・バーベリアンCathy Berberian1925年または1928年7月4日 マサチューセッツ州アトルボロ - 1983年3月6日 ローマ)は、アメリカ合衆国声楽家作曲家アルメニア系である。

活動[編集]

多彩な発声と驚異的な語学力を駆使し、斬新な表現力と趣向を凝らした様々な技巧によって、欧米の前衛音楽の作曲家を触発した。1960年代前衛音楽シーンにおける「パフォーマンス」や「シアター・ピース」の概念の発展を、実践面から促した。一見するとかずかずの様式破壊的な活動も、実は鋭い様式感覚の裏返しであり、パロディ精神やウィット感覚と結びついていた。

伝統的な分類法に従えば、メゾソプラノ歌手ということになるが、単にボーカリストやヴォイス・パフォーマーと呼ぶのが、およそ実状に合っている。伝統的な発声法のカテゴリーにとらわれず、スキャットハミングの即興的な挿入、呻き声や笑い声・呟きなどのノイズ成分の利用、ベル・カント唱法からシャウトに至る変幻自在な声質の変化によって、声楽家の表現力(演技力)の可能性に前代未聞の領域を拓いた。

コロンビア大学ニューヨーク大学に在籍中に文学演劇(一般的にはパントマイムと言われている)、比較文化学を学んだ後、イタリア留学中にミラノ声楽を学ぶ。1950年に作曲家ルチアーノ・ベリオと結婚するが1966年に離婚。

ベリオの《テーマ~(ジョイスを称えて) Thema (Omaggio a Joyce)》(1958年)はバーベリアンの声を脱構築した作品であり、《サークルズ Circles》(1960年)と《(キャシーのための)リサイタルI Recital I (for Cathy)》(1972年)は彼女のために作曲された。さらにシルヴァーノ・ブッソッティジョン・ケージハンス・ヴェルナー・ヘンツェストラヴィンスキーなどからも作品を献呈されている。

バーベリアンのレパートリーは前衛音楽だけでなく、ヨーロッパ各国の民謡のほか、モンテヴェルディからガーシュウィンワイルまでのオペラアリアと幅広い。バロック・オペラはベル・カントで、一方ガーシュウィンやワイルはブルージーでジャジーにというように、作品の性格に見合った歌唱法が使い分けられている。一方、ビートルズルイ・アンドリーセンヘンデルドビュッシーの作曲様式で編曲したものを歌う際は、ことさら格式張ったベル・カント唱法で歌い、カリカチュア風の奇妙な味をかもし出している。これらの演奏は録音にも残され、生前の活躍を偲ぶよすがとなった。

作曲家としては、《ストリプソディ Stripsody 》(1966年)を残している。ここでいう「ストリップ strip」とは「漫画のコマ」(コミック・ストリップ)の意味であり、題名は本作が、さまざまな漫画のコマの切り抜きからなるグラフィック・スコアであるということにちなんでいる。この作品はライヴにおいてしばしばアンコールで「上演」された。その録音は、バーベリアンの数多いヴォイス・パフォーマンスの典型となっている。

文献[編集]

  • Marie-Christine Vila, Cathy Berberian, cant'actrice, Fayard Press, 1st Oct 2003, ISBN 2213617023

外部リンク[編集]