キタサンショウウオ

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
キタサンショウウオ
キタサンショウウオ
キタサンショウウオ
Salamandrella keyserlingii
保全状況評価[a 1]
LEAST CONCERN
(IUCN Red List Ver.3.1 (2001))
Status iucn3.1 LC.svg
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 両生綱 Amphibia
: 有尾目 Urodela
亜目 : サンショウウオ上科
Cryptobranchoidea
: サンショウウオ科 Hynobiidae
: キタサンショウウオ属
Salamandrella
: キタサンショウウオ
S. keyserlingii
学名
Salamandrella keyserlingii
Dybowski, 1870
シノニム

Isodactylium wosnessenskyi
Strauch, 1870
Hynobius michnoi Nikolsky, 1925

和名
キタサンショウウオ
英名
Siberian salamander

キタサンショウウオSalamandrella keyserlingii)は、両生綱有尾目サンショウウオ科キタサンショウウオ属に分類される有尾類。キタサンショウウオ属の模式種。

分布[編集]

カザフスタン北部、中華人民共和国北東部、朝鮮民主主義人民共和国北部、日本釧路湿原)、国後島色丹島モンゴルロシア[1][2][3][a 1][a 2]

模式標本の産地(模式産地)はクルトゥク村(ロシアイルクーツク州)と考えられている[2]。有尾目のみならず現生の両生綱全体でも最広域分布種(移入された分布域を除く)とされる[2]

日本では1954年に初めて発見された[2]。北海道内の分布が限定的であること、分布境界線である八田線(宗谷線)よりも南に分布していることから人為分布とする説もあったが、分子系統学的解析から在来種と考えられている[2]。日本には鮮新世後期から更新世前期(1,900,000-1,700,000年前)にサハリン島経由で渡ってきたと推定されている[2]

形態[編集]

全長12-16センチメートル[2]。尾は短く、頭胴長と等しいか短い[2]。体側面に入る皺(肋条)は左右に通常13-15本ずつだが、より少ない個体もいる[2]。背面の色彩は暗褐色で、頭部背面から尾の先端まで黄色い帯模様が入る[2][a 2]。帯模様には頸部から尾基部にかけて濃褐色の縞模様が入る個体が多い[2]

上顎中央部に並ぶ歯の列(鋤骨歯列)は浅いアルファベットの「V」字状[a 2]。四肢を胴体に沿って前肢(および指)を後方へ後肢(および趾)を前方に伸ばしても肋条1つぶんの間隔が空き接することはない[2]。後肢の趾は4本[1][2][a 2]

オスは体型がより頑丈で、四肢や尾がより長い[2]。繁殖期になると側頭部や四肢に白い突起が現れ、オスはこの突起がより顕著[2]。繁殖期のオスは帯模様が暗色化し、不明瞭になる[2]。 卵は直径0.2センチメートルで、黒褐色[2]。卵嚢は縦幅12-21センチメートル、横幅2.5センチメートル[2]。卵嚢の表面は透明(産卵直後は薄青色)で、表面には皺がない[2]

分類[編集]

キタサンショウウオ属は49,000,000年前にタカネサンショウウオ属リュウサンショウウオ属と共通の祖先から分化したと推定されている[2]

沿海州の個体群は卵嚢の形状、アロザイムなどの分子系統学的解析に差異があり、エンカイシュウキタサンショウウオS. schrenckiiとして独立種とする説が有力[2]

生態[編集]

主に針葉樹林タイガ)に生息するが、永久凍土帯やツンドラカラマツ林、草原湿原、海岸など様々な環境に生息する[2]。成体や幼体(亜成体)は陸棲[2]。成体や幼体や夜行性だが、幼生は昼夜を問わずに活動する[2]。9-10月(北部個体群では8-9月)から翌4-5月まで(寒冷地では5-6月まで)、倒木の中や下、地中、動物の巣穴などに潜り冬眠する[2]。低温に対する耐性が強く冬眠中に気温が-23℃まで低下しても、数日間であれば死ぬことはない[2]

食性は動物食で、昆虫クモ軟体動物環形動物などを食べる[2]。幼生は主に昆虫を食べるが、地域によっては主にヨコエビを食べる[2]

繁殖形態は卵生。温帯では4-5月、北極圏では5-6月に、水たまり、池、湖、水路などの様々な水場に卵を産む[2]。繁殖期は1-2週間だが、北部個体群は1か月に達することもある[2]。オスは水中で水面近くの木の枝などに捕まり、尾を揺らしながらメスが近づくのを待つ[2]。メスがオスの尾に触れると、オスはメスの体に尾で巻きメスが産卵を開始する[2]。一か所に複数の個体が集まり産卵することが多く、1つの枝に複数の卵嚢が付着していることも多い[2]。1つの卵嚢に周辺にいるオスも集まって放精する[2]。100-300個の卵を産む[2]。卵は30-40日で孵化する[2]。幼生のまま越冬せず、7-8月には変態し幼体になる[2]。オスは生後2-3年、メスは生後3-4年で成熟する[2]

人間との関係[編集]

日本では釧路湿原の牧草地化や宅地開発、運動公園の拡張による生息地の破壊、水位低下、道路建設による生息地の分断などにより生息数は減少している[2][a 2]。釧路湿原では約90か所の生息地が確認されていたが、そのうち30%で絶滅あるいはほぼ絶滅したと推定されている[2]。釧路湿原の生息地は国立公園や保護区に指定され、1975年釧路市の、1992年標茶町の天然記念物に指定されている[2]

準絶滅危惧(NT)環境省レッドリスト[a 2]

Status jenv NT.png

関連項目[編集]

参考文献[編集]

[ヘルプ]
  1. ^ a b 千石正一監修 長坂拓也編著 『爬虫類・両生類800種図鑑 第3版』、ピーシーズ、2002年、294頁。
  2. ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s t u v w x y z aa ab ac ad ae af ag ah ai aj ak al am an ao 西川完途 「東アジアの有尾類 第13回 サンショウウオ科(その9) キタサンショウウオ」『クリーパー』第66号、クリーパー社、2013年、81-85頁。
  3. ^ 深田祝監修 T.R.ハリディ、K.アドラー編 『動物大百科12 両生・爬虫類』、平凡社1986年、68頁。
  • 川上洋一著『絶滅危惧種の動物事典』、東京堂出版、2008年

外部リンク[編集]

  1. ^ a b The IUCN Red List of Threatened Species
    • Sergius Kuzmin, Vladimir Ishchenko, Masafumi Matsui, Zhao Wenge, Yoshio Kaneko 2004. Salamandrella keyserlingii. In: IUCN 2013. IUCN Red List of Threatened Species. Version 2013.1.
  2. ^ a b c d e f 環境省 自然環境局 生物多様性センター