ガーバーフォーマット

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ガーバーフォーマット(Gerber Format)は、プリント基板(PCB)産業用ソフトウェアで多用されるファイルフォーマット形式のひとつ。プリント基板(銅層、ソルダーマスク、シンボルマーク層 等)のイメージ、ドリルやルーター(milling)データを描画する。ガーバーフォーマットは、PCB画像データ転送方式における業界のデファクト・スタンダードである。[1][2][3]

ガーバーフォーマットは、最初Gerber Systems 社により開発されたものである。Gerber Systems 社はジョセフ·ガーバー[4] によって設立された。

以前、Barco ETS社がGerber Systems[5][6]を買収した経緯により、現在はUcamco社がガーバーフォーマットを引き継いでいる。Ucamco社は、ガーバーフォーマット仕様書の改訂版を断続的に公表している。[7][8][9]

現行のガーバーフォーマット仕様は、2014年2月発行のリビジョンJ1となる。新しいリビジョンは、PCBのメタ情報(ファイルの層情報として)を伝える属性を持つフォーマットを拡張している。[10] Ucamco社のダウンロードページ[11]から自由にダウンロードすることができる。

ガーバーフォーマットは、2つに分類できる。

  • 拡張ガーバーフォーマットRS-274X ; 一般的に使用されている。
  • 標準ガーバーフォーマット(旧バージョン); RS-274X[9]に取って代わるものであり、推奨されない。
ガーバーにおける層の例:プリント基板のトップオーバーレイ(legend)、トップソルダーレジスト(protective film)、ボトムレイヤの銅トレースを示す

RS-274X[編集]

RS-274Xガーバーフォーマット(拡張ガーバーやXガーバーとも呼ばれる)は、2Dで2方向のベクトル画像を描画するフォーマット形式。[12]現在、PCB業界でスタンダードな画像描画フォーマットである。

RS-274Xは、可読なASCIIフォーマットの一種で[13]、コマンドと座標のシーケンスで構成される。画像の基本的な構成要素は、任意の場所でのラインドロー、定義した形状のフラッシュ(表示)、そして輪郭塗り込み(outline fill)である。またポジ/ネガのグラフィックオブジェクトを組み合わせることができる。

【RS-274Xファイルの例】

G04 Shorter version of Gerber X2 Example Job 1, created by Filip Vermeire, Ucamco*
%TF.FileFunction,Copper,L4*%
%TF.Part,Single*%
%FSLAX35Y35*%
%MOMM*%
%TA.AperFunction,Conductor,NotC*%
%ADD10C,0.15000*%
%TA.AperFunction,ViaPad*%
%ADD11C,0.75000*%
%TA.AperFunction,ComponentPad*%
%ADD12C,1.60000*%
%ADD13C,1.70000*%
%SRX1Y1I0.00000J0.00000*%
G01*
G75*
%LPD*%
D10*
X7664999Y3689998D02*
X8394995D01*
X8439999Y3734999D01*
X9369999D01*
D11*
X7664999Y3689998D03*
X8359999Y1874998D03*
X9882998Y3650498D03*
D12*
X4602988Y7841488D03*
D13*
X10729976Y2062988D03*
X10983976D03*
X11237976D03*
M02*

RS-274Xファイルは、基板の各層の完全な画像情報を持ち、他の外部ファイルが不要である。基板画像の結像処理に必要となるオペレータ(演算子)がプログラムされている。どのようなアパーチャ形状でも定義できる。ポジ/ネガいずれのオブジェクトでも結合させることができる。銅に関しては、初期バージョンのRS-274-Dのように「塗り(painting)」や「ベクトル埋め込み」をすることなく、指定できる。

RS-274Xの特長は完結型・強力・明晰で、基板の層を描画する標準フォーマットである。自動的に入力、処理が実行できる。スピーディで安心のデータ転送、確実で自動化されたワークフローが確保される。[14]

2013年12月にUcamcoは、メタ情報を伝える属性を持つ拡張フォーマットのドラフト仕様を発表した。Ucamcoは仕様をコミットする前に、PCBのコミュニティからのフィードバックを要求した。

フォーマット仕様の詳細は、外部リンクの項を参照。

RS-274-D[編集]

初期のガーバーフォーマットであるRS-274-D(「標準ガーバー」として知られる)は、EIA RS-274-D[15] (幅広い産業でNC装置にメカニカルな指令を出す際に元となるデータフォーマット) のサブセットである。ガーバーRS-274-Dは2D のNCマシンとも言うべきベクトル式フォトプロッター英語版に用いるサブセットである[16]。シンプルなASCIIフォーマットで、コマンドとX/Y座標から構成される。

D11*
X1785250Y2173980D02*
X1796650Y2177730D01*
X1785250Y2181480D01*
X1796650Y2184580D01*
D12*
X3421095Y1407208D03*
X3422388Y1406150D03*
M02*

RS-274-Dは、ベクトル式のフォトプロッターを動かす目的で1960年代~1970年代に開発されたが、現在、フォトプロッターは全てラスター式に置き換わった。RS-274-Dファイルは、それ自体が画像を描写しているわけではない。座標情報やアパーチャ(基本的な形状物。PDFファイルにおけるフォントのようなもの)の定義情報は持ってはいない。座標情報やアパーチャは、プロッターを操作するオペレーターの手でマニュアル設定することが前提であった。一般的に自由書式のテキストファイルに記述し、これが「アパーチャファイル」や「ホイールファイル (wheel file)」のように呼ばれていた。このアパーチャファイルは人が読むことを前提としただけで、標準規格はなかった。このため、EDAソフトウェア英語版毎もしくは設計者毎に、独自のレイアウトや独自の命名規則でアパーチャファイルを作成し、基板製造サイドではそれを解読しマニュアルで自分達のCAMシステムに入力しなければならなかった。

RS-274-Dが持つ画像化の演算子は、数が少なく、とてもシンプルなものだけだったので、人の手によって、描画 ( 塗りベクトル埋め込み ) などのような複雑で厄介な基板構造化作業が不可欠であった。

RS-274-Dはベクトル式プロッターを動かすのに適し、当時の技術では制限があるが有効なフォーマットだったといえる。人手を介するワークフロー向けに設計されているので、基板設計者から製造サイドへの確実な自動データ転送には不向きであった。

RS-274-DはあくまでNC(数値制御)に適した規格であって、画像描写に適した規格ではなかった。従って、アパーチャファイルなしでは成り立たなかった。しかしそのアパーチャファイルに規格がなく、次第にRS-274-Dは革新が求められることになっていく。

ガーバーフォーマットの使用[編集]

ガーバーファイルは、一般には、基板設計者が専用EDAやPCB用CADソフトウェアを用いて作成する。出来上がったファイルは、基板製造部門に送られてCAM システムにロードされ、そこで基板製造プロセスの各ステップで使用するデータに編集される。またこれ以外にも、ある特定のデバイス、例えば自動外観検査機用にデータを提供する際にも使われる。さらにガーバーファイルが、ドリルホール情報(フラッシュアパーチャなど)を特定したい場合にも使うことも考えられるが、通常、ドリリング情報はExcellonフォーマット英語版で製造者に渡される。

現在、PCB産業では世界的にガーバーRS-274Xが画像データ転送方式のデファクト・スタンダードとなっている。広く、自動入力&自動処理に活用されている。

RS-274Xはクォリティが高く、利便性がよい。ただし、数あるCADシステムの中には一部、RS-274Xの出力機能が不十分なものもある。出力されたRS-274Xファイルの一部に、シンタックスエラーやセマンティクスエラーが見つかることがある。また時折、数値精度が低すぎることで、PCBの厳しい精度要件をクリアできず、丸め誤差のエラーを発生させることがある。常にガーバー出力解像度(グリッド)は、CADシステムの解像度(グリッド)より、少なくとも10倍は高くする必要がある。エリアを埋める際、いくつかのシステムではいまだに、アウトライン方法ではなく塗り(painting)で行ったり、アパーチャ定義ではなく塗り込んだSMDを使っている。塗り(painting)であってもファイルとしては問題がないが、製造者が処理する際に煩雑で時間がかかってしまうため、塗り(painting)は使わないほうがいいとされる。ここで挙げた問題は、RS-274Xではなく、出力システムに起因する問題である。実際は多くが、高いクォリティのRS-274Xファイルを生産している。

RS-274Xでは、ファイルが基板のどの層を表しているかを明確にしないし、そういった規格を設けていない。これは欠点ではない。ファイル名で層を、拡張子でフォーマット種類(例:「.GER」=ガーバーデータ)を明確にするため、それで十分だと考えている。しかし一部の設計者の間では、PCBデータセットに暗号化したファイル名を用い、フリーフォーマット形式のテキストファイルにレイヤ種類を記録することがある。これはつまり、製造サイドではデータセット内の全てのファイルを閲覧し、製造に必要な情報を探すという作業が伴ってしまう。また他の事例では、ファイル拡張子を誤用して、ファンクションを示すケースも見受けられる(例:拡張子を「.BOT」にしてボトムレイヤを表そうとする)。このケースでは、製造者はわざわざファイルを開き、本来の正しいフォーマット形式を確認しなくてはならなくなる。考えてみてください、例えばPDFファイル。データとファイル拡張子は正しく一致していることから、それがPDFファイルかどうか確認する知ために、わざわざPDFファイルを開く人はいない。

初期版であったRS-274-Dフォーマットは、現在も一部で使用されている。RS-274-Dは、何十年ものテクノロジーの変遷を見据えて設計されたわけではなく、完全画像化に対応したフォーマットではない。さまざまな限界があり、ユーザーに厄介な構築作業を強いる結果となっている。それらの弱点を補うには手作業が必要となり、よりエラーがおきやすい。

代替[編集]

何年もの間、フォーマットにレイヤ画像だけでなくより多くの情報(例:ネットリストやコンポネント情報等)を持たせようと、ガーバー代替となるフォーマットを作る試みがなされてきた。しかしいまだに、エレクトロニクス製造業界で広く受け入れられたものがない。おそらくフォーマットが複雑化しすぎるためだろう。ガーバーは、データ転送フォーマットとして、なおも好んで使われている。[要出典]

  • IPC-D-350 C Printed Board Description in Digital Format', 1989. この仕様は1992年に、IEC 61182-1として規格化、2001年に取り下げ。ほとんど使われない。
  • DPFフォーマット:現在バージョン7。Ucamco がリリース。
  • The Electronic Design Interchange Format, EDIF ほとんど使われない。
  • ODB++ :イスラエルの企業Valor Computerized Systems Ltd, Israel がリリース。
  • GenCAM: IPC-2511A Generic Requirements for Implementation of Product Manufacturing Description Data and Transfer Methodology, 2000. ほとんど使われない。* GenCAM: IPC-2511B Generic Requirements for Implementation of Product Manufacturing Description Data and Transfer XML Schema Methodology, 2002. ほとんど使われない。
  • Offspring: IPC-2581 Generic Requirements for Printed Board Assembly Products Manufacturing Description Data and Transfer Methodology, 2004. ほとんど使われない。
  • STEP AP210: ISO 10303-210, Electronic assembly interconnect and packaging design 初版は2001年、第2版は2008年 (to be published)

歴史[編集]

ガーバーフォーマットは、もともとEIA RS-274-D仕様のサブセットで、幅広い産業で、メカニカルにNCマシンを制御するために設計されたフォーマットである。EIA RS-274-Dにはサブタイトルがあり、位置決め、輪郭化、輪郭化/位置決めといったマシン制御向けの可変長ブロックデータ互換フォーマット(Interchangeable variable block data format)と言われている。Gerber Scientific Corporationは、これらのコマンドのサブセットを利用して自分達のフォトプロッターを稼動させていた。当時、フォトプロッターは、異なる形状(一般的に円や長方形、その他数種類)や異なるサイズからなる既定アパーチャに限られていた。またアパーチャは、「フラッシュ」アパーチャを使って特定の座標に出現させるか、シャッターを開いたままの状態で「ドロー」アパーチャを使って始点座標から終点座標まで引っ張り、ラインやアークのセグメントを生成させていた。アパーチャの位置を揃える手段はなかった。1つ1つがガラスやフィルム基板上の小さな切抜きであった。プロッターのオペレーターは、デザインをプロットする前に、設計者からの指示書(アパーチャリスト)一式が必要で、それによって各アパーチャをどこに配置するかを把握してから、プロット描画を実行しなくてはならなかった。マシンには多数の不連続なアパーチャポジション番号があるが、通常、その全てを基板にプロットするというわけでもなかった。プロットファイルを作成した人物が、アパーチャリストで指定している位置が実際に有効で、かつプロットファイルと一致していることを確実にする責務があった。

  • 1980年10月27日に、Gerber Systems Corporation は、自社のフォトプロッターを操作する仕様書として、「Gerber Format:a subset of EIA RS-274-D; plot data format reference book」第1版をリリース。
  • 1986年、アパーチャのサイズ可変性をサポートし、テーパーラインや任意の範囲で任意サイズの長方形を作成できるように、ガーバーフォーマットを拡張した。現在この機能は使われていない。
  • 1980年代、ガーバーフォーマットは、市場のいくつかのフォトプロッターやPCB製造用CAMシステムに採用され、事実上、デファクト・スタンダードになった。
  • 1991年4月26日、ラスタースキャン機能の有効性によって、ガーバーフォーマットは、多角形エリアや拡張パラメータにも対応するようになり、ユーザーが直接に異なる形状やサイズのアパーチャを定義でき、銅や多角形は「塗り(painting)」をせずに定義できるようになった。拡張パラメータは、もともと1990年代前半にGerber Systems CorpがAT&T社の打診のもとに設計した。[17]
  • ガーバーフォーマットの最新版「''Gerber Format: a subset of EIA RS-274-D; plot data format reference book」 は、1993年1月31日にGerber Systems Corporationがリリースした。
  • 1997年に、Gerber Systems CorporationはBarco Graphics社(本社所在地:ベルギー Gent)に買収され、事業が引き継がれた。1998年9月21日、「RS-274X Format User’s Guide」がBarco Graphics社(旧Gerber Systems Corporation)によりリリースされた。現在、Barco Graphics社の PCB 部門は、Ucamco (旧Barco ETS)という名称に変わっている。
  • RS-274X Format User's Guide」は、2010年12月に更新され、改訂版Gが登場した。>Ucamco announce a revision of the industry standard RS-274X Format Specification”. ucamco.com (2010年12月9日). 2013年2月15日閲覧。</ref>
  • 「Gerber Format Specification」は、2012年1月に更新され、改訂版Hが登場した。>New Gerber Format Specification free at www.ucamco.com”. ucamco.com (2012年1月27日). 2013年2月15日閲覧。</ref>
  • 「Gerber Format Specification」は、2013年2月に更新され、改訂版I1が登場した。[9]
  • 「Gerber Format Specification」は、2013年4月に更新され、改訂版I2が登場した。[18]
  • 「Gerber Format Specification」は、2013年6月に更新され、改訂版I3が登場した。
  • 2013年6月に属性でガーバーフォーマットを拡張するという提案を発表した。
  • 「Gerber Format Specification」は、2013年11月に更新され、改訂版I4が登場した。[19]

参照[編集]

  1. ^ Williams, Al (2004), Build your own printed circuit board, McGraw-Hill Professional, p. 121, ISBN 9780071427838, http://books.google.com/books?id=SoA4koYHRxsC&pg=PA130 2011年4月2日閲覧。 
  2. ^ Schroeder, Chris (1998), Printed circuit board design using AutoCAD, Newnes, p. 283, ISBN 9780750698344, http://books.google.com/books?id=y_3R9GTLBJcC&pg=PA191 2011年4月2日閲覧。 
  3. ^ Blackwell, Glenn R. (2000), The electronic packaging handbook, 5.18: CRC Press, ISBN 9780849385919, http://books.google.com/books?id=D0PBG53PQlUC&pg=SA5-PA17 2011年4月2日閲覧。 
  4. ^ Gerber Scientific Instrument Company Records, 1911-1998”. 2013年4月5日閲覧。
  5. ^ Tanghe, Jean-Pierre. “Barco acquires Gerber Systems Corp”. Barco.com. Barco NV. 2011年11月26日閲覧。
  6. ^ A short History of Electronic Data Formats”. Printed Circuits Design and Fab (2011年6月28日). 2011年10月15日閲覧。
  7. ^ Ucamco announce a revision of the industry standard RS-274X Format Specification”. ucamco.com (2010年12月9日). 2013年2月15日閲覧。
  8. ^ New Gerber Format Specification free at www.ucamco.com”. ucamco.com (2012年1月27日). 2013年2月15日閲覧。
  9. ^ a b c Revision I1 of the Gerber Format Specification is now online”. ucamco.com (2013年2月19日). 2013年2月15日閲覧。
  10. ^ Gerber Grows Attributes”. Printed Circuit Design & Fab (2013年8月). 2012年9月5日閲覧。
  11. ^ Gerber File Format Specification.pdf”. Ucamco (2013年2月). 2012年12月21日閲覧。
  12. ^ The RS-274X Format (PDF)”. Ucamco (2010年12月). 2011年3月31日閲覧。
  13. ^ Sinclair, Ian Robertson; Dunton, John (January 11, 2007), Practical electronics handbook, Elsevier, p. 543, ISBN 9780750680714, http://books.google.com/books?id=ZYCdYHpH8T8C&pg=PA542 2011年4月2日閲覧。 
  14. ^ Karel Tavernier (2011/2Q). “Improving CAD to CAM Data Transfer: A Practical Approach”. Journal of the HKPCA. 2011年10月2日閲覧。 “Use of RS-274-D: Do not use it.”
  15. ^ EIA Standard RS-274-D:Electronic Industries AssociationのEngineering部門により発行。所在地は2001 Eye Street, NW, Washington, D.C. 200006。最新版は1979年2月に発行。
  16. ^ Steve DiBartolomeo (1991年). “D-codes, Apertures and Gerber Files”. Artwork Conversion Software, Inc.. 2011年10月16日閲覧。
  17. ^ Coombs, Clyde F. (September 2, 2007), Printed circuits handbook, McGraw-Hill Professional, pp. 18.11, ISBN 9780071467346, http://books.google.com/books?id=1Pbkeu6dZ_sC&pg=SA20-PA3 2011年4月3日閲覧。 
  18. ^ Ucamco's Revised Gerber Format Specification Now Online”. ucamco.com (2013年2月19日). 2013年2月15日閲覧。
  19. ^ Ucamco Enhances Gerber File Format Specification”. ucamco.com (2013年11月22日). 2013年11月22日閲覧。


外部リンク[編集]