カンゾウ属

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カンゾウ
Illustration Glycyrrhiza glabra0.jpg
スペインカンゾウ Glycyrrhiza glabra
分類APG III
: 植物界 Plantae
階級なし : 被子植物 angiosperms
階級なし : 真正双子葉類 eudicots
階級なし : コア真正双子葉類 core eudicots
階級なし : バラ類 rosids
階級なし : マメ類 fabids
: マメ目 Fabales
: マメ科 Fabaceae
亜科 : マメ亜科 Faboideae
: カンゾウ属 Glycyrrhiza
学名
Glycyrrhiza L.
和名
カンゾウ

本文参照

甘草(生薬)

カンゾウ属(甘草属 Glycyrrhiza)は、地中海地方小アジアロシア南部、中央アジア中国北部、北アメリカなどに自生するマメ科多年草で、18種が知られている。薬用植物であり、(一部の種類は根茎を含む)を乾燥させたものを生薬として用いる。

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アメリカカンゾウ

利用[編集]

甘味料[編集]

生薬の甘草はそのまま、またはエキスや粉末を甘味料として用いる。甘味成分としては、グリチルリチンブドウ糖ショ糖などが含まれる。醤油の甘味料として使われる。

独特の薬臭い香気があるため、甘味料としては使い方に注意する必要があるが、欧米ではリコリス菓子ルートビアと呼ばれるソフトドリンクリキュールの原料として盛んに利用されている。グリチルリチンの甘味は砂糖の50倍もあり低カロリーなため、欧米では甘草は健康的な食品添加物と認識されているが、大量摂取により副作用を生じるため、注意が必要。

日本での栽培[編集]

甘草の栽培は日本では300年以上前から行なわれており、江戸時代には山梨県甲州市〔旧:塩山市〕の甘草屋敷江戸小石川御薬園で栽培されていた。現在は輸入品の方が安いため、ほぼ100%を中国・旧ソ連アフガニスタンなどからの輸入に頼っているが、グリチルリチンの含有量が一定でなく、乱獲による絶滅が懸念されているため、2008年度から佐賀県玄海町九州大学の協力により再び国産栽培が試みられることになった[1]

2010年10月28日、ゼネコン鹿島建設千葉大学、独立行政法人医薬基盤研究所との共同開発で水耕栽培による大量生産システムの開発に成功したと発表した。肥料の入った水で栽培すると根が太くなりにくいのが課題だったが、この栽培法では1年から1年半程度にまで短縮を実現した(甘草は薬草として生育するまでに自然環境下では4年程度かかる)。

2010年12月5日、三菱樹脂が日本国内で初めて本格的な商業生産に着手する事を発表。数年後には国内需要の全量を賄う規模まで拡大し、中国への輸出も検討するとしている[2]

2011年東日本大震災津波により被災した宮城県岩沼市の農地での甘草栽培が試みられており、同市の海水が浸水した農地で育てた甘草は浸水していない土地で栽培したものよりも葉・地下茎共に成長が良くなることが報道された(これは、甘草が厳しい自然環境下ほどよく育つためという)[3]

独立行政法人・医薬基盤研究所薬用植物資源研究センター北海道研究部(北海道名寄市)は、2012年に独自開発した国内栽培用品種の育苗に成功し、2014年7月に国に種苗登録申請を行った[4]

薬用[編集]

漢方薬に広範囲にわたって用いられる生薬であり、日本国内で発売されている漢方薬の約7割に用いられている[2]。漢方薬は一般的に複数の生薬をあらかじめ組み合わせた方剤をさすが、甘草湯(かんぞうとう)という甘草のみを用いた漢方では珍しい単味の処方のものがある。

乾燥したスペインカンゾウの根

日本薬局方においては、ウラルカンゾウ(別名東北甘草、学名G. uralensis)またはスペインカンゾウ(別名西北甘草、リコリス、学名G. glabra)の甘草が基原植物とされており、グリチルリチン(グリチルリチン酸)2.5%以上を含むと規定されている。

生薬として、漢方では緩和作用、止渇作用があるとされている。各種の生薬を緩和・調和する目的で多数の漢方方剤に配合されている。このため、漢方ではもっとも基本的な薬草の一つと考えられており、「国老」とも称された。安中散四君子湯十全大補湯人参湯など多数の漢方方剤に使われる。 また、甘草だけで甘草湯という処方もあり(漢方で生薬を単独で使うのはまれ)、喉の痛みや、を鎮める効果があるとされる。

グリチルリチンは肝機能障害、アレルギーに有効であるとされ、内服薬あるいは輸液に製剤化されている。 グリチルリチンを加水分解して得たグリチルレチンは、その消炎作用から目薬としても用いられている。

グリチルリチンやその他の甘草から得られる物質は消炎作用や美白の効果を持ち、医薬のみならず、化粧品医薬部外品の原料としても重要である。

カンゾウはドイツのヴュルツブルク大学WWFなどの審査によって「2012年の薬用植物」に選ばれた。ヴュルツブルク大学の薬用植物学史の専門家Johannes Mayer教授は、「カンゾウはや喉の痛みを瞬時に和らげることができる特別な植物である。はるか昔、古代ギリシャ古代エジプトから、医者はや声がれ(嗄声、させい)やぜんそくの治療にカンゾウを用いてきた」と述べた。

副作用[編集]

主成分のグリチルリチンには低カリウム血症や血圧上昇、浮腫(偽性アルドステロン症)などの副作用が知られており、一時に多量に用いてはならない[5]

脚注[編集]

  1. ^ 漢方「甘草」の栽培研究 玄海町と九大が調印 輸入依存を脱却 安定供給目指す 2008/03/11付 西日本新聞朝刊
  2. ^ a b “漢方「甘草」を国内生産 三菱樹脂が着手”. 読売新聞. (2010年12月6日). http://job.yomiuri.co.jp/news/ne_10120604.htm 2010年12月10日閲覧。 
  3. ^ “漢方薬:甘草 津波で浸水の農地で試験栽培 順調に育つ”. 毎日新聞. (2011年11月5日). http://mainichi.jp/select/wadai/news/20111105k0000e040067000c.html 2011年11月9日閲覧。 
  4. ^ “薬草カンゾウ育苗成功 北海道・名寄の薬用植物研究センター”. 北海道新聞 (北海道新聞社). (2014年7月12日). http://www.hokkaido-np.co.jp/news/topic/550763.html 
  5. ^ グリチルリチン酸等を含有する医薬品の取扱いについて 昭和53年2月 厚生労働省

関連項目[編集]

外部リンク[編集]