カワイルカ科

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カワイルカ科
インドカワイルカ(ガンジスカワイルカ)
インドカワイルカ(ガンジスカワイルカ)
Platanista gangetica
分類
: 動物界 Animalia
: 脊索動物門 Chordata
亜門 : 脊椎動物亜門 Vertebrata
: 哺乳綱 Mammalia
: 鯨偶蹄目 Cetartiodactyla
階級なし : クジラ目 Cetacea
亜目 : ハクジラ亜目 Odontoceti
: カワイルカ科 Platanistidae
: カワイルカ属 Platanista
学名
Platanista gangetica
Roxburgh, 1801
和名
インドカワイルカ
英名
Ganges and Indus River Dolphin

カワイルカ科 (Platanistidae) はクジラ目ハクジラ亜目に属するの一つ。マイルカ科などよりも初期に分岐したグループで、祖先的な特徴を持つ。淡水から汽水域に生息する。

カワイルカ科はカワイルカ属 (Platanista) のみで構成される。

カワイルカ属に属するのはインドカワイルカガンジスカワイルカインダスカワイルカである。分類についての詳細は本文の「分類学」を参照されたい。スースーとも呼ばれる。

分類学[編集]

元々は1801年にRoxburghによって、インドカワイルカ (P. gangetica, Ganges and Indus River Dolphin) として一つの種として分類された。

ところが、1970年代になって、インドカワイルカの生息域はインドガンジス川パキスタンインダス川に完全に分かれており、長い間、交雑していないことがわかった。 頭蓋骨の特徴などを調べた結果、別の種であるとして分類された。 すなわち、ガンジスカワイルカ (P. gangetica, Ganges River Dolphin) とインダスカワイルカ (P. minor, Indus River Dolphin) である。

しかし、1998年、Riceはガンジスカワイルカとインダスカワイルカの形態的な差異は別の種として分類するには不十分であるとした[Rice98]。 このRiceの分類に従えば、種としてはインドカワイルカ(P. gangetica。英名はGanges and Indus River Dolphin あるいは Indian River Dolphin)1種のみが存在し、亜種としてガンジスカワイルカ (P. g. gangetica, Ganges River Dolphin) とインダスカワイルカ (P. g. minor, Indus River Dolphin) に分類される。 現在では、このRiceによる分類法に従うことが多い。

Riceによる分類[Rice98](インドカワイルカ1種のみとする分類法)[編集]

カワイルカ科 Platanistidae

Rice以前の一般的な分類(ガンジスカワイルカとインダスカワイルカの2種とする分類法)[編集]

カワイルカ科 Platanistidae

別名[編集]

インダス川のイルカの頭蓋骨

ガンジスカワイルカ、インダスカワイルカともに、スースーと呼ばれることがある。 英語ではBlind River Dolphin、Side-swimming Dolphin、 Susu、Bhulanと言った別名がある。

ガンジスカワイルカの英語での別名としては、Gangetic Dolphin、Ganges Susuがある。

インダスカワイルカの英語での別名としては、Bhulan、Indus Dolphin、Indus Susuがある。

身体[編集]

ガンジスカワイルカとインダスカワイルカは外観はほぼ同一である。 他のカワイルカと同じく長く尖った口吻を有する。 口を閉じた状態でも、上下の顎のが露出している。 口吻は先端の方が太い。 眼には水晶体はなく、の強さや方向がわかる程度で、ほぼ盲目に近い。 移動や食物探索は反響定位(エコーロケーション)を用いて行う。 褐色系の体色を有し、身体の中央部は大きい。 背びれはなく、三角形の小さな隆起があるだけである。 胸びれ尾びれは細く、体長と比較すると長い。 体長は雄が2mから2.2m、雌が2.4mから2.6mである。 寿命などは不明である。

川底近くに棲息するエビや小魚を食べる。 現在では単独で行動する様子が観察されることが多いが、以前の個体数が多かった頃には群を成しての行動が観察されており、本来は数頭で群を成して行動するものと考えられている。

生息数と生息域[編集]

ガンジスカワイルカとインダスカワイルカの生息域

ガンジスカワイルカはガンジス川だけでなく、インドバングラデシュネパールブータンを流れるブラマプトラ川、Meghna川、Karnaphuli川、Sangu川に棲息する。 インドのVikramshila保護区 (Vikramshila Gangetic Dolphin Sanctuary) や南バングラデシュのSangu川における生息数は比較的多い。 ネパールのKarnali川にはごくわずかの個体(おそらく20頭程度)が棲息する。 全生息数は不明であるが、少なくとも数百頭、おそらく数千頭規模だと考えられている。(「人間との関り」も参照)

インダスカワイルカは主にパキスタンインダス川に棲息する。 19世紀における生息域は現在よりも約5倍も広く、インダス川の支流であるSutlej川、Ravi川、Chenab川、Jhelum川にも生息していた。 シンド州 (Sindh Province) における生息数が最も多い。 WWFパキスタンが行った2001年の調査によると、インダスカワイルカの全生息数はおよそ1,100頭に過ぎない。

人間との関り[編集]

両亜種とも、棲息流域の人間の行動による多大な悪影響を被ってきた。

個体数の壊滅的な減少の原因の一つは漁網による混獲である。 脂や肉を塗り薬、性欲増進剤、ナマズの餌などとして使用するための捕獲は、現在でも行われている。 灌漑が原因となって、生息域における水位の低下も発生している。 工業排水に含まれる有害物質の排出や、農薬の河川への流出などによる水質悪化も個体数減少の原因となっている。 個体数激減の最も大きな原因は、棲息流域に建設された50基以上のダムだろうと考えられている。 ダムはカワイルカの生息域を完全に分断してしまう。 繁殖に関る個体数が減ることにより遺伝子の攪拌が減少し、生物としての力の低下が起こってしまう。

インダスカワイルカについては、保護が適切であるならば棲息し続けることが可能であろうと考えられている集団は三つ存在する。

両亜種ともIUCNレッドリストにおいて、「絶滅危機」 (EN:Endangered) に分類されている。

参考文献・外部リンク[編集]

  1. Dale W. Rice, Marine mammals of the world: systematics and distribution, Society of Marine Mammalogy Special Publication Number 4, pp. 231 (1998).
  2. Randall R. Reeves, Brent S. Stewart, Phillip J. Clapham and James A. Powell, National Audubon Society Guide to Marine Mammals of the World, Alfred A. Knopf, Inc. (2002). ISBN 0-375-41141-0.
  3. IUCN Red List entry for Ganges River Dolphin(IUCNレッドリスト「ガンジスカワイルカ」)
  4. IUCN Red List entry for Indus River Dolphin(IUCNレッドリスト「インダスカワイルカ」)
  5. Convention on Migratory Species page on the Ganges River Dolphin(両亜種について説明)
  6. 海棲哺乳類図鑑「ガンジスカワイルカ」 国立科学博物館 動物研究部
  7. 海棲哺乳類図鑑「インダスカワイルカ」 国立科学博物館 動物研究部