カリー=ハワード同型対応

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関数型プログラムとして書かれた証明:自然数の加法に関する交換律のCoqによる証明。

カリー=ハワード同型対応(カリー=ハワードどうけいたいおう、英語: Curry-Howard correspondence)とは、プログラミング言語理論証明論において、計算機プログラムと証明との間の直接的な対応関係のことである。「プログラム=証明」(proofs-as-programs)・「型=命題」(formulae-as-types)などとしても知られる。これはアメリカの数学者ハスケル・カリー論理学者ウィリアム・アルヴィン・ハワードにより最初に発見された形式論理の体系とある種の計算の体系との構文論的なアナロジーを一般化した概念である。通常はこの論理と計算の関連性はカリーとハワードに帰属される。しかしながら、このアイデアはブラウワーハイティングコルモゴロフらが定式化した直観主義論理の操作的解釈の一種と関係している。[要出典]


一般的な定式化[編集]

もっと一般的な観点からいえば、カリー=ハワード対応は証明計算計算模型型システムとの間の対応である。これは2つの対応に分けられる。ひとつは、論理式のレベルであり、これは特定の証明体系や計算模型の選択に依存しない。いまひとつは、形式的証明とプログラムのレベルであり、これは証明体系や計算模型の選択に依存する。

論理式と型のレベルにおいて、この対応によれば、含意は関数型、論理積は直積型(タプル、構造体、リストなど、言語によって様々に呼ばれる)、論理和は直和型(バリアント、共用体、Eitherなど)、偽は空な型、真はシングルトン型のように振る舞うという。量化子依存直積または直和にそれぞれ対応する。

まとめると、次のような表になる:

論理 プログラミング
全称量化  \forall x\in A.B(x) 依存直積  \prod_{x:A}B(x)
存在量化  \exists x\in A.B(x) 依存直和  \sum_{x:A}B(x)
含意  A \supset B 関数型  A \to B
論理積  A \wedge B 直積型  A \times B
論理和  A \vee B 直和型  A + B
 \top トップ型  1
 \bot ボトム型  0

証明体系と計算模型のレベルにおいて、この対応は主に構造的な同一性を示す。ひとつはヒルベルト流の推論体系コンビネータ論理、いまひとつはゲンツェン自然演繹ラムダ計算との間の同一性である。

論理 プログラミング
ヒルベルト流の推論体系 コンビネータ論理の型システム
ゲンツェン流の自然演繹 ラムダ計算の型システム

自然演繹とラムダ計算との間には次のような対応関係が存在する:

論理 プログラミング
仮定 自由変数
含意除去規則(モーダス・ポネンス 関数適用
含意導入規則 ラムダ抽象

ヒルベルト流の推論体系とコンビネータ論理との間の対応[編集]

この対応はCurry and Fays (1958)に於いて指摘された:最も単純なコンビネータ論理の一種におけるコンビネータ K と S が、驚くべきことにヒルベルト流の証明体系における公理図式 \alpha \to (\beta \to \alpha)(\alpha \to (\beta \to \gamma)) \to ((\alpha \to \beta) \to (\alpha \to \gamma)) とにそれぞれ対応するのである。このことから、しばしば上記の公理図式はそれぞれ K と S と呼ばれる。ヒルベルト流の証明と見做せるプログラムの例が与えられる(後述)。

直観主義論理の含意断片に制限するならば、次のようにヒルベルト流の極めて簡明な形式化が存在する。いま \Gamma を論理式の有限集合として、これを仮定と見做す。論理式 \delta\Gamma から導出可能である(\Gamma \vdash \delta)とは、以下の場合をいう:

  • \delta は仮定である、すなわち \Gamma に属す、
  • \delta公理図式の代入例である、すなわち:
    • \delta\alpha \to (\beta \to \alpha) の形をしているか、
    • \delta(\alpha \to (\beta \to \gamma)) \to ((\alpha \to \beta) \to (\alpha \to \gamma)) の形をしている、
  • \delta は推論により得られる、すなわち、ある \alpha について \alpha\alpha \to \delta\Gamma から導出可能である。

これは推論規則を用いて形式化できる。以下に示す表の左の列を参照されたい。

我々は同様の構文により型付きコンビネータ論理を形式化することができる。いま \Gamma を次の形式の有限集合(ただし同じ変数に異なる型が紐付けられてはならない)として、これを変数の型宣言と見做す。

x:\alpha ここで x は変数、 \alpha は型

このとき、CL項 M\Gamma のもとで型 \delta を持つ(\Gamma \vdash M:\delta)とは、以下の場合をいう:

  • M:\delta\Gamma に属す、
  • M:\delta は基本的なコンビネータの型付けである、すなわち:
    • M:\deltaK:\alpha \to (\beta\to\alpha) であるか、あるいは
    • M:\deltaS:(\alpha \to (\beta \to \gamma)) \to ((\alpha \to \beta) \to (\alpha \to \gamma)) である、
  • M:\delta\Gamma \vdash N:\alpha \to \delta かつ R:\alpha なるCL項 MN の関数適用 (NR) である。

型付きCL項の構成規則は以下に示す表の右の列を参照されたい。カリーは各々の行が同型に対応していることを指摘した。この直観論理との対応の制限は、古典論理恒真式、例えばパースの法則 ((\alpha \to \beta)\to \alpha) \to \alpha などがこの対応から締め出されていることを意味する。

論理 プログラミング
\frac{\alpha \in \Gamma}{\Gamma \vdash \alpha} \text{Assum} \frac{x:\alpha \in \Gamma}{\Gamma \vdash x:\alpha}
\frac{}{\Gamma \vdash \alpha \rightarrow (\beta \rightarrow \alpha)} \text{Ax}_K \frac{}{\Gamma \vdash K: \alpha \rightarrow (\beta \rightarrow \alpha)}
\frac{}{\Gamma \vdash (\alpha\!\rightarrow\!(\beta\!\rightarrow\!\gamma))\!\rightarrow\!((\alpha\!\rightarrow\!\beta)\!\rightarrow\!(\alpha\!\rightarrow\!\gamma))}\text{Ax}_S \frac{}{\Gamma \vdash S: (\alpha\!\rightarrow\!(\beta\!\rightarrow\!\gamma))\!\rightarrow\!((\alpha\!\rightarrow\!\beta)\!\rightarrow\!(\alpha\!\rightarrow\!\gamma))}
\frac{\Gamma \vdash \alpha \rightarrow \beta \qquad \Gamma \vdash \alpha}{\Gamma \vdash \beta}\text{Modus Ponens} \frac{\Gamma \vdash E_1:\alpha \rightarrow \beta \qquad \Gamma \vdash E_2:\alpha}{\Gamma \vdash E_1\;E_2:\beta}\text{Application}

もっと抽象的なレベルから見ると、この対応は以下の表のようにして述べ直すことができる。とくに、ヒルベルト流の推論体系における演繹定理(のメタ証明)は、コンビネータ論理における抽象の除去手続きと対応している。

論理 プログラミング
仮定 変数
公理 コンビネータ
モーダス・ポネンス 関数適用
演繹定理 抽象の除去

この対応によって、コンビネータ論理の結果をヒルベルト流の推論体系の結果に翻訳できる。その逆もまた同様である。例えば、CL項の簡約はヒルベルト流の証明図の簡約手続きと見ることができる。また、正規なCL項は正規な証明図へと翻訳される。ここで正規とは、これ以上簡約できないことを意味する。正規化定理は型付け可能なCL項は必ず正規形を持つという定理であるが、これはヒルベルト流の証明図は必ず正規形を持つという結果に翻訳できる。

反対に、直観主義論理における例えばパースの法則の証明不能性は、コンビネータ論理における次の結果に翻訳できる:型 ((\alpha \to \beta)\to \alpha) \to \alpha を持つCL項は存在しない。

コンビネータからなる集合の完全性の結果もまた翻訳できる。例えば、 one-point basis X は任意のCL項を表現できることが知られている。このコンビネータから公理図式

(((\alpha \to (\beta \to \gamma)) \to ((\alpha \to \beta) \to (\alpha \to \gamma))) \to ((\delta \to (\varepsilon \to \delta)) \to \xi)) \to \xi

が得られる。これは X の主要型(X の可能な型で代入に関して極小なもの)である。 X コンビネータの完全性から、上に挙げた唯一の公理図式から次の公理図式が証明可能であることが従う:

(\alpha \to (\beta \to \alpha))
(\alpha \to (\beta \to \gamma)) \to ((\alpha \to \beta) \to (\alpha \to \gamma))

自然演繹とラムダ計算との間の対応[編集]

ハスケル・カリーがヒルベルト流の体系とコンビネータ論理の構文的対応を強調した後、ウィリアム・アルヴィン・ハワードは1969年に単純型付きラムダ計算と自然演繹との構文的な同型性を明確にした。以下、左辺で直観主義的自然演繹の含意断片を形式化し、右辺でラムダ計算の型付け規則を示す。左辺では \Gamma,\Gamma_{1},\Gamma_{2} で順序付けられた論理式の列を表す。右辺ではラムダ項で名前付けられた論理式の列を表す。

論理 プログラミング
\frac{}{\Gamma_1, \alpha, \Gamma_2 \vdash \alpha} \text{Ax} \frac{}{\Gamma_1, x:\alpha, \Gamma_2 \vdash x:\alpha}
\frac{\Gamma, \alpha \vdash \beta}{\Gamma \vdash \alpha \rightarrow \beta} \rightarrow I \frac{\Gamma, x:\alpha \vdash t:\beta}{\Gamma \vdash \lambda x.t : \alpha \rightarrow \beta}
\frac{\Gamma \vdash \alpha \rightarrow \beta \qquad \Gamma \vdash \alpha}{\Gamma \vdash \beta} \rightarrow E \frac{\Gamma \vdash t:\alpha \rightarrow \beta \qquad \Gamma \vdash u:\alpha}{\Gamma \vdash t\;u:\beta}


この対応を言い換えれば、\Gamma \vdash \alpha を証明するということは、型宣言列 \Gamma のもとで型 \alpha を持つオブジェクトを構成することに対応する。公理は新しい変数の導入(とその型宣言)に、→ I 規則は関数抽象に、→ E 規則は関数適用に対応する。もし左辺の文脈 \Gamma を単なる論理式の集合と見做す(暗黙の縮約と弱化を認める)ならば、この対応は正確ではないことが分かる。というのも、例えば \Gamma の中にラムダ項 \lambda x.\lambda y.x\lambda x.\lambda y.y で名前付けられた論理式 \alpha \to \alpha \to \alpha が属していたならば、右辺ではこれらを区別するが、左辺ではこれを同じものと見做す。

ハワードは他の論理の結合子と単純型付きラムダ項の他の構成との間に対応を拡張できることを示した。例えば論理積との対応は次に示す表のようになる:

論理 プログラミング
\frac{\Gamma \vdash \alpha \qquad \Gamma \vdash \beta}{\Gamma \vdash \alpha \wedge \beta}\wedge I \frac{\Gamma \vdash t:\alpha \qquad \Gamma \vdash u:\beta}{\Gamma \vdash \langle t,u\rangle:\alpha \times \beta}
\frac{\Gamma \vdash \alpha_{1}\wedge\alpha_{2}}{\Gamma \vdash \alpha_{i}}\wedge E \frac{\Gamma \vdash t:\alpha_{1}\wedge\alpha_{2}}{\Gamma \vdash \pi_{i}t:\alpha_{i}}

もっと抽象的に見ればこの対応は次の表として纏められる。とりわけ、ラムダ計算における正規形の概念は自然演繹におけるプラヴィッツの正規な証明に対応する。型付けられたラムダ項は正規形を持つという結果(正規化定理)は、自然演繹の無矛盾性論理和分離特性の証明に利用できる。型の具体性の問題の決定手続きを直観主義的な証明可能性の決定手続きに変換できる。

論理 プログラミング
公理 変数
導入規則 コンストラクタ
除去規則 デストラクタ
正規な証明 正規なラムダ項
証明の正規化 ラムダ項の弱正規化
証明可能性 型の具体性の問題(type inhabitation problem)
直観論理の恒真式 具体型(inhabited type)

ハワードの対応は自然演繹およびラムダ計算の拡張に対しても自然に延長できる。網羅的ではないがここに列挙しておく:

ハワードの対応はまた自然演繹およびラムダ計算の制限に対しても成り立つ。例えばBCKλ計算とBCK論理の対応が挙げられる。ここでBCKλ計算とは、ラムダ項の構成のうち関数適用の規則を

M と N に共通に現れる自由変数が存在しないならば (MN) はラムダ項である

と制限することにより得られる計算模型である。これにより自由変数の複数回の使用が禁止される。したがって1つの仮定を複数回使用する(縮約規則)ことを禁止するBCK論理と対応するのである。さらにラムダ項の構成のうちラムダ抽象の規則を

M の中に変数記号 x が自由に現れるならば (λx.M) はラムダ項である

と制限することにより得られる体系はBCI論理と対応する。これにより未使用の変数の束縛が禁止される。したがってBCK論理に加えて未使用の仮定を解消する(弱化規則)ことを禁止するBCI論理と対応するのである。

古典論理と制御演算子との間の対応[編集]

カリーおよびハワードの時代では、「証明=プログラム」対応は専ら直観主義論理においてのみ考察されていた。すなわち、ここでの論理では、とくにパースの法則は導出不能であった。パースの法則すなわち古典論理を含む明確な対応の拡張はグリフィンの仕事による。グリフィンはプログラムの実行における評価文脈(継続)をキャプチャしそれを再度使用するような制御演算子を持つラムダ計算が古典論理と対応することを指摘した。基本的な古典論理のカリー=ハワード対応は以下で与えられる。なお、古典論理の証明から直観論理の証明への変換(グリベンコの定理)に用いられる二重否定変換は、制御演算子を持つラムダ項から純粋なラムダ項へのCPS変換に対応する。もっと具体的にいえば、名前呼びCPS変換はコルモゴロフの二重否定変換に、値呼びCPS変換は黒田の二重否定変換に関係する。

論理 プログラミング
パースの法則: ((\alpha \to \beta) \to \alpha) \to \alpha 継続呼び出し
二重否定変換 CPS変換

パースの法則の代りにシークエントの結論に複数の論理式を許容することのよっても古典論理の自然演繹を定義できる。この場合もやはり対応が成立する。例えばある種の古典論理の自然演繹とM. Parigotのλμ計算の間に「証明=プログラム」の対応が存在する。

シークエント計算[編集]

「証明=プログラム」対応はゲンツェンシークエント計算においても確立されるが、ヒルベルト流の体系や自然演繹のように、既に知られていたような計算模型との対応関係は存在しない。

シークエント計算は左導入規則、右導入規則、ならびに除去可能なカット規則により特徴づけられる。シークエント計算の構造はある種の抽象機械の構造に似ている。非形式的な対応は次のようである:

論理 プログラミング
カット除去 抽象機械における簡約
右導入規則 コードのコンストラクタ
左導入規則 評価スタックのコンストラクタ
カット除去において右側を優先 名前呼び簡約戦略
カット除去において左側を優先 値呼び簡約戦略
カット除去定理 簡約の弱正規性

再帰型と自己言及[編集]

命題論理式に次のような構成規則を追加する場合を考える:

\alpha が論理式で p が命題変数ならば、\mu p.\alpha は論理式である。

この論理式の内容的な意味は循環的命題 [{\rm this}/p]\alpha である。ただし [\mu q.\beta/p]\alpha なる論理式の内容的意味 [[{\rm this}/q]\beta/p]\alpha の中の this は命題全体ではなく [{\rm this}/q]\beta を指示するものである。すなわち \mu p.\alpha とは次の論理式の再帰方程式

X = [X/p]\alpha

の解(不動点)であるというに他ならない。例えば \mu p.\neg p嘘つきのパラドックスにおける嘘つき命題 this sentence is false を意味する論理式である。したがってこの論理体系は矛盾している。

この論理式構成に対応する型構成を再帰型という。例えば可変長リスト型は再帰型として実現できる:

{\rm List} T = \mu \tau.1+T\times\tau

ここで 1 はトップ型である。この型システムでは Yコンビネータ\Omega = (\lambda x.xx)(\lambda x.xx) などの項も型を持つことになる。これらの項は通常の型システムでは型を持たない。なおコンビネータ \Omega の(主要型の)型付けの導出はカリーのパラドックスの自然演繹による証明と対応する。

以上の体系の対応は次のように纏められる:

論理 プログラミング
循環的命題 再帰型
\frac{\Gamma \vdash \mu p.\alpha}{\Gamma \vdash  [\mu p.\alpha/p]\alpha} \frac{\Gamma \vdash X:\mu \tau.\alpha}{\Gamma \vdash  X:[\mu \tau.\alpha/\tau]\alpha}
\frac{\Gamma \vdash [\mu p.\alpha/p]\alpha}{\Gamma \vdash \mu p.\alpha} \frac{\Gamma \vdash X:[\mu \tau.\alpha/\tau]\alpha}{\Gamma \vdash X:\mu \tau.\alpha}

「証明=プログラム」対応に関連する話題[編集]

ド・ブランの役割[編集]

ニコラース・ホーバート・ド・ブランはラムダ記法を証明検証器Automathにおいて用い、また命題をその証明の類として表現した。これはハワードが(CH対応に関する)原稿を書いた同時期の1960年後半のことであった。ド・ブランはハワードの仕事を知らず独立してこの対応を述べた(Sørensen & Urzyczyn [1998] 2006, pp 98–99)。一部の研究者[誰?]は、カリー=ハワード対応という代りにカリー=ハワード=ド・ブラン対応という語を使用する。

BHK解釈[編集]

BHK解釈は直観主義的な証明の含意と全称化を関数として解釈するが、解釈における関数のクラスがどのようなものであるかを指定してはいない。もし関数のクラスとしてラムダ計算を取るならば、BHK解釈は自然演繹とラムダ計算との間の対応と同じことを述べていることになる。

実現可能性解釈[編集]

スティーヴン・コール・クリーネ実現可能性解釈は、直観主義的算術の証明を再帰的関数とその関数が論理式を実現していることを表す論理式の証明とに分離する。これにより、例えば「任意の自然数 a と b に対して、a と b を割り切る最大の自然数 c が存在する」ことを直観主義的に証明できたならば、ここから最大公約数を計算する再帰的関数と、それが最大公約数を計算していることの証明を抽出できる。

ゲオルク・クライゼルにより変更された実現可能性解釈を高階の直観主義論理に適用することで、もとの論理式の証明からそれを実現する単純型付けされたラムダ項を帰納的に抽出できることが示せる。命題論理の場合、これはカリー=ハワード対応のステートメントと一致する:抽出されたラムダ項はもとの証明(をラムダ項と見做したもの)と一致し、実現可能性のステートメントは抽出されたラムダ項がもとの論理式の意味する型を持つということの言い換えである。

クルト・ゲーデルディアレクティカ解釈は計算可能汎関数を備えた直観主義的算術(のある拡張)を実現する。これのラムダ計算との繋がりは自然演繹ほど明白ではない。

カリー=ハワード=ランベック対応[編集]

ヨアヒム・ランベックは1970年始めに直観主義命題論理とデカルト閉圏の等式理論と対応するある種の型付きコンビネータとの対応関係の証明を示した。このカリー=ハワード=ランベック対応は直観主義論理、型付きラムダ計算およびデカルト閉圏との間の対応として知られる。ここではオブジェクトは型あるいは命題に、モルフィズムは項あるいは証明に解釈される。この対応は等号レベルに於いて働き、カリー=ハワード対応にあるような構文的・構造的同等性を表現しない:すなわち、デカルト閉圏のモルフィズムの構造と、対応する判定のヒルベルト流あるいは自然演繹の証明の構造と比較することはできない。もちろん構文的に対応するような証明体系を構成することはできる。この区別を明確にするために、デカルト閉圏の構文的な構造を次のように言い換える。すなわちデカルト閉圏を型付きの等式理論として形式化する。

オブジェクト(型)は次のように帰納的に定義される:

  • \top はオブジェクトである、
  • \alpha\beta がオブジェクトならば、 \alpha \times \beta\alpha \rightarrow \beta はオブジェクトである。

モルフィズム(項)は次のように帰納的に定義される:

  • id\star\operatorname{eval}\pi_1\pi_2 はモルフィズムである、
  • t がモルフィズムならば \lambda t はモルフィズムである、
  • tu がモルフィズムならば \langle t, u \rangleu \circ t はモルフィズムである。

Well-definedなモルフィズム(型付きの項)は以下の型付け規則にしたがって構成される:

恒等射:

\frac{}{id: \alpha \longrightarrow \alpha}

合成:

\frac{t: \alpha \longrightarrow \beta\qquad u: \beta \longrightarrow \gamma}{u \circ t: \alpha \longrightarrow \gamma}

終対象:

\frac{}{\star:\alpha \longrightarrow \top}

直積:

\frac{t:\alpha \longrightarrow \beta\qquad u:\alpha \longrightarrow \gamma}{\langle t,u\rangle: \alpha \longrightarrow \beta \times \gamma}

射影:

\frac{}{\pi_1: \alpha \times \beta \longrightarrow \alpha}\qquad\frac{}{\pi_2: \alpha \times \beta \longrightarrow \beta}

カリー化:

\frac{t: \alpha \times \beta \longrightarrow \gamma}{\lambda t: \alpha \longrightarrow \beta \rightarrow \gamma}

評価:

\frac{}{eval: (\alpha \rightarrow \beta) \times \alpha \longrightarrow \beta}

最後に、圏の等式を次により定める:

  • id \circ t = t, t \circ id = t, (v \circ u) \circ t = v \circ (u \circ t),
  • \star \circ t = \star,
  • \pi_1 \circ \langle t, u\rangle = t, \pi_2 \circ \langle t,u\rangle = u, \langle \pi_1 \circ t, \pi_2 \circ t\rangle = t,
  • eval \circ \langle\lambda t, id\rangle = t, \lambda eval = id.

このとき、t:\alpha_{1}\times \ldots \times \alpha_{n} \longrightarrow \beta なるモルフィズム t が存在することと、\alpha_{1},\ldots,\alpha_{n}\vdash \beta なるシークエントが直観論理の含意論理積断片で証明可能であることとは同値である。上記のデカルト閉圏の射の等式体系として得られる計算模型はカテゴリカルコンビネータあるいは圏的コンビネータ論理として知られる。

論理 圏論
論理式 オブジェクト
含意  \alpha \supset \beta 指数  \alpha \to \beta
論理積  \alpha \wedge \beta 直積  \alpha \times \beta
論理和  \alpha \vee \beta 余積  \alpha + \beta
 \top 終対象  1
 \bot 始対象  0
証明 モルフィズム
証明図の合成・カット モルフィズムの合成

[編集]

カリー=ハワード対応により、型付けられた表現は対応する論理式の証明と見做すことができる。以下、いくつかの例を与える。

恒等コンビネータと α → α のヒルベルト流の証明[編集]

簡単な例として \alpha \to \alpha のヒルベルト流の証明を構成する。ラムダ計算では、これは恒等関数 I = \lambda x.x の型であり、コンビネータ論理では恒等関数は SK により I = SKK (ただし慣例によって適用は左結合と見做す)と表現できる。以上の説明は \alpha \to \alpha の証明の構成を与えている。実際、この論理式は次のようにしてヒルベルト流の証明体系にて証明可能である(慣例に従い含意記号は右結合と見做す):

  • 第二の公理図式から (\alpha \to (\beta \to \alpha) \to \alpha) \to (\alpha \to \beta \to \alpha) \to \alpha \to \alpha を得る、
  • 第一の公理図式から \alpha \to (\beta \to \alpha) \to \alpha を得る、
  • 第一の公理図式から \alpha \to \beta \to \alpha を得る、
  • モーダス・ポネンスを2回適用して \alpha \to \alpha を得る。

合成コンビネータと (β → α) → (γ → β) → γ → α のヒルベルト流の証明[編集]

もっと複雑な例として、B コンビネータに対応する定理を示そう。B の型は (\beta \to \alpha)\to((\gamma \to \beta) \to (\gamma \to \alpha)) である。BS(KS)K に対応する(この事実は抽象除去などを用いて得られる)。これは目的の定理の証明の道筋を与えている。

まず KS を構成する。公理 K の前にまず公理 S の形を見る。そして公理 K\alpha に公理 S の論理式を代入する。すると次が得られる:

K : \alpha \to \beta \to \alpha
K : ((\alpha \to \beta \to \gamma) \to (\alpha \to \beta) \to \alpha \to \gamma) \to \delta \to  (\alpha \to \beta \to \gamma) \to (\alpha \to \beta) \to \alpha \to \gamma

ここで S:(\alpha \to \beta \to \gamma) \to (\alpha \to \beta) \to \alpha \to \gamma とモーダス・ポネンスにより、

KS : \delta \to  (\alpha \to \beta \to \gamma) \to (\alpha \to \beta) \to \alpha \to \gamma

次にこの論理式を公理 S の最初の部分 \alpha \to \beta \to \gamma とが同一になるような代入を求め(ユニフィケーション)、

S : (\delta \to (\alpha \to \beta \to \gamma) \to (\alpha \to \beta) \to \alpha \to \gamma) \to (\delta \to \alpha \to \beta \to \gamma) \to \delta \to (\alpha \to \beta) \to \alpha \to \gamma

を得る。これと先の論理式にモーダス・ポネンスを適用すれば、

S(KS) : (\delta \to \alpha \to \beta \to \gamma) \to \delta \to (\alpha \to \beta) \to \alpha \to \gamma

この論理式の最初の部分 \delta \to \alpha \to \beta \to \gamma と公理 K:\alpha \to \beta \to \alpha とが同一になるような代入を求めれば、それは \delta = \beta \to\ \gamma であるから、

K:(\beta \to \gamma) \to \alpha \to \beta \to \gamma
S(KS):((\beta \to \gamma) \to \alpha \to \beta \to \gamma) \to (\beta \to \gamma) \to (\alpha \to \beta) \to \alpha \to \gamma

最後にこれらにモーダス・ポネンスを適用すれば次を得る:

S(KS)K : (\beta \to \gamma) \to (\alpha \to \beta) \to \alpha \to \gamma

適当に命題変数の名前を付け替えれば所望の論理式の証明が得られる。

(β → α) → (γ → β) → γ → α の自然演繹における証明とラムダ項[編集]

次の図は (\beta \to \alpha) \to (\gamma \to \beta) \to \gamma \to \alpha の自然演繹における証明である。簡単のため、文脈 \Gamma \vdash は省略してある。

\dfrac{\dfrac{ \begin{matrix} {} \\ x:\beta\rightarrow \alpha \end{matrix} \quad \dfrac{y:\gamma\rightarrow\beta\quad z:\gamma}{yz:\beta} }{\dfrac{x\,(yz):\alpha}{\lambda z.x\,(yz):\gamma \rightarrow\alpha} } }{\dfrac{ \lambda y.\lambda z.x\,(yz):(\gamma \rightarrow \beta) \rightarrow \gamma \rightarrow \alpha}{\lambda x.\lambda y. \lambda z.x\,(yz):(\beta \rightarrow \alpha) \rightarrow (\gamma \rightarrow \beta) \rightarrow \gamma \rightarrow \alpha} }

この証明が型付きラムダ項 \lambda x.\lambda y.\lambda z.x(yz) と解釈できることは明らかである。なお、前述の (\beta \to \alpha) \to (\gamma \to \beta) \to \gamma \to \alpha のヒルベルト流の証明は、自然演繹におけるこの証明に対して抽象の除去とη変換を何度か使用することで得られる。

その他の応用[編集]

最近ではカリー=ハワード対応が遺伝的プログラミングにおける探索空間のパーティションを定義する方法として提案されている。[4]この手法は遺伝子型(システムにより進化するプログラムの木)の集合に対して(種と呼ばれる)カリー=ハワード対応する証明を索引付ける。

参照文献[編集]

  1. ^ Sørenson, Morten; Urzyczyn, Paweł, Lectures on the Curry-Howard Isomorphism, http://citeseerx.ist.psu.edu/viewdoc/summary?doi=10.1.1.17.7385 
  2. ^ Goldblatt, “7.6 Grothendieck Topology as Intuitionistic Modality”, Mathematical Modal Logic: A Model of its Evolution, pp. 76–81, http://homepages.mcs.vuw.ac.nz/~rob/papers/modalhist.pdf 
  3. ^ Benton; Bierman; de Paiva (1998), “Computational types from a logical perspective”, Journal of Functional Programming 8: 177–193 
  4. ^ F. Binard and A. Felty, "Genetic programming with polymorphic types and higher-order functions." In Proceedings of the 10th annual conference on Genetic and evolutionary computation, pages 1187 1194, 2008.[1]

歴史的な文献[編集]

  • Curry, Haskell (1934), “Functionality in Combinatory Logic”, Proceedings of the National Academy of Sciences, 20, pp. 584–590 .
  • Curry, Haskell B.; Feys, Robert (1958), Craig, William, ed., Combinatory Logic Vol. I, Amsterdam: North-Holland , with 2 sections by William Craig, see paragraph 9E.
  • De Bruijn, Nicolaas (1968), Automath, a language for mathematics, Department of Mathematics, Eindhoven University of Technology, TH-report 68-WSK-05. Reprinted in revised form, with two pages commentary, in: Automation and Reasoning, vol 2, Classical papers on computational logic 1967–1970, Springer Verlag, 1983, pp. 159–200.
  • Howard, William A. (September 1980) [original paper manuscript from 1969], “The formulae-as-types notion of construction”, in Seldin, Jonathan P.; Hindley, J. Roger, To H.B. Curry: Essays on Combinatory Logic, Lambda Calculus and Formalism, Boston, MA: Academic Press, pp. 479–490, ISBN 978-0-12-349050-6 .

対応の拡張[編集]

  1. ^ Davies, Rowan; Pfenning, Frank (2001), “A Modal Analysis of Staged Computation”, Journal of the ACM 48 (3): 555–604, doi:10.1145/382780.382785, http://www.cs.cmu.edu/~fp/papers/jacm00.pdf 
  2. ^ Pfenning, Frank; Davies, Rowan (2001), “A Judgmental Reconstruction of Modal Logic”, Mathematical Structures in Computer Science 11: 511–540, doi:10.1017/S0960129501003322, http://www.cs.cmu.edu/~fp/papers/mscs00.pdf 
  3. ^ Komori, Yuichi; Cho, Arato (2010), λρ-calculus, p. 11, http://komoriyuichi.web.fc2.com/symposium/lambda-rho5.pdf 
  • Griffin, Timothy G. (1990), “The Formulae-as-Types Notion of Control”, Conf. Record 17th Annual ACM Symp. on Principles of Programming Languages, POPL '90, San Francisco, CA, USA, 17–19 Jan 1990, pp. 47–57 .
  • Parigot, Michel (1992), “Lambda-mu-calculus: An algorithmic interpretation of classical natural deduction”, Logic Programming and Automated Reasoning: International Conference LPAR '92 Proceedings, St. Petersburg, Russia, Lecture Notes in Computer Science, 624, Berlin; New York: Springer-Verlag, pp. 190–201, ISBN 978-3-540-55727-2 .
  • Herbelin, Hugo (1995), “A Lambda-Calculus Structure Isomorphic to Gentzen-Style Sequent Calculus Structure”, in Pacholski, Leszek; Tiuryn, Jerzy, Computer Science Logic, 8th International Workshop, CSL '94, Kazimierz, Poland, September 25–30, 1994, Selected Papers, Lecture Notes in Computer Science, 933, Berlin; New York: Springer-Verlag, pp. 61–75, ISBN 978-3-540-60017-6 .
  • Gabbay, Dov; de Queiroz, Ruy (1992), “Extending the Curry–Howard interpretation to linear, relevant and other resource logics”, Journal of Symbolic Logic, 57, pp. 1319–1365 . (Full version of the paper presented at Logic Colloquium '90, Helsinki. Abstract in JSL 56(3):1139–1140, 1991.)
  • de Queiroz, Ruy; Gabbay, Dov (1994), “Equality in Labelled Deductive Systems and the Functional Interpretation of Propositional Equality”, in Dekker, Paul; Stokhof, Martin, Proceedings of the Ninth Amsterdam Colloquium, ILLC/Department of Philosophy, University of Amsterdam, pp. 547–565, ISBN 90-74795-07-2 .
  • de Queiroz, Ruy; Gabbay, Dov (1995), “The Functional Interpretation of the Existential Quantifier”, Bulletin of the Interest Group in Pure and Applied Logics, 3(2–3), pp. 243–290 . (Full version of a paper presented at Logic Colloquium '91, Uppsala. Abstract in JSL 58(2):753–754, 1993.)
  • de Queiroz, Ruy; Gabbay, Dov (1997), “The Functional Interpretation of Modal Necessity”, in de Rijke, Maarten, Advances in Intensional Logic, Applied Logic Series, 7, Springer-Verlag, pp. 61–91, ISBN 978-0-7923-4711-8 .
  • de Queiroz, Ruy; Gabbay, Dov (1999), “Labelled Natural Deduction”, in Ohlbach, Hans-Juergen; Reyle, Uwe, Logic, Language and Reasoning. Essays in Honor of Dov Gabbay, Trends in Logic, 7, Kluwer Acad. Pub., pp. 173–250, ISBN 978-0-7923-5687-5, http://www.springer.com/philosophy/logic/book/978-0-7923-5687-5 .
  • de Oliveira, Anjolina; de Queiroz, Ruy (1999), “A Normalization Procedure for the Equational Fragment of Labelled Natural Deduction”, Logic Journal of the Interest Group in Pure and Applied Logics, 7, Oxford Univ Press, pp. 173–215 . (Full version of a paper presented at 2nd WoLLIC'95, Recife. Abstract in Journal of the Interest Group in Pure and Applied Logics 4(2):330–332, 1996.)
  • Poernomo, Iman; Crossley, John; Wirsing; Martin (2005) [2005], Adapting Proofs-as-Programs: The Curry–Howard Protocol, Monographs in Computer Science, Springer, ISBN 978-0-387-23759-6 , concerns the adaptation of proofs-as-programs program synthesis to coarse-grain and imperative program development problems, via a method the authors call the Curry–Howard protocol. Includes a discussion of the Curry–Howard correspondence from a Computer Science perspective.
  • de Queiroz, Ruy J.G.B.; de Oliveira, Anjolina (2011), “The Functional Interpretation of Direct Computations”, Electronic Notes in Theoretical Computer Science, 269, Elsevier, pp. 19–40, doi:10.1016/j.entcs.2011.03.003 . (Full version of a paper presented at LSFA 2010, Natal, Brazil.)

哲学的解釈[編集]

総合的な論文[編集]

書籍[編集]

  • edited by Ph. de Groote. (1995), De Groote, Philippe, ed., The Curry–Howard Isomorphism, Cahiers du Centre de Logique (Université catholique de Louvain), 8, Academia-Bruylant, ISBN 978-2-87209-363-2 , reproduces the seminal papers of Curry-Feys and Howard, a paper by de Bruijn and a few other papers.
  • Sørensen, Morten Heine; Urzyczyn, Paweł (2006) [1998], Lectures on the Curry–Howard isomorphism, Studies in Logic and the Foundations of Mathematics, 149, Elsevier Science, ISBN 978-0-444-52077-7, http://citeseerx.ist.psu.edu/viewdoc/summary?doi=10.1.1.17.7385 , notes on proof theory and type theory, that includes a presentation of the Curry–Howard correspondence, with a focus on the formulae-as-types correspondence
  • Girard, Jean-Yves (1987–90). Proof and Types. Translated by and with appendices by Lafont, Yves and Taylor, Paul. Cambridge University Press (Cambridge Tracts in Theoretical Computer Science, 7), ISBN 0-521-37181-3, notes on proof theory with a presentation of the Curry–Howard correspondence.
  • Thompson, Simon (1991). Type Theory and Functional Programming Addison–Wesley. ISBN 0-201-41667-0.
  • Poernomo, Iman; Crossley, John; Wirsing; Martin (2005) [2005], Adapting Proofs-as-Programs: The Curry–Howard Protocol, Monographs in Computer Science, Springer, ISBN 978-0-387-23759-6 , concerns the adaptation of proofs-as-programs program synthesis to coarse-grain and imperative program development problems, via a method the authors call the Curry–Howard protocol. Includes a discussion of the Curry–Howard correspondence from a Computer Science perspective.
  • F. Binard and A. Felty, "Genetic programming with polymorphic types and higher-order functions." In Proceedings of the 10th annual conference on Genetic and evolutionary computation, pages 1187 1194, 2008.[2]
  • de Queiroz, Ruy J.G.B.; de Oliveira, Anjolina G.; Gabbay, Dov M. (2011) [2011], The Functional Interpretation of Logical Deduction, Advances in Logic, 5, Imperial College Press / World Scientific, ISBN 978-981-4360-95-1 .

参考文献[編集]

  • P.T. Johnstone, 2002, Sketches of an Elephant, section D4.2 (vol 2) gives a categorical view of "what happens" in the Curry–Howard correspondence.

関連項目[編集]

外部リンク[編集]