カチッサー効果

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カチッサー効果(カチッサーこうか、: Automaticity)とは、ある働きかけによって、深く考えることなしに、ある行動を起こしてしまう心理現象[1]カチッ・サー効果とも表記する[2]認知バイアスの一種であるが「カチッサー効果」とは日本での呼び名であり正式には「自動性」という[3]

概要[編集]

心理学者のエレン・ランガー(Ellen J. Langer) が実験をおこなった。被験者がコピー機の順番待ちの列の先頭へ行き3通りの言い方で頼む。

  1. 要求のみを伝える:「すみません、5(20)枚なのですが、先にコピーをとらせてもらえませんか?」
  2. 本物の理由を付け足す:「すみません、5(20)枚なのですが、急いでいるので先にコピーをとらせてもらえませんか?」
  3. もっともらしい理由を付け足す:「すみません、5(20)枚なのですが、コピーをとらなければいけないので先にコピーをとらせてもらえませんか?」

枚数が5枚の場合、要求のみのときの承諾率は60パーセントであるのに対し、本物の理由を付け足したときの承諾率は94パーセントであった。しかし、もっともらしい理由を付け足したときでも承諾率は93パーセントに達した。

枚数が20枚の場合、要求のみのときの承諾率は24パーセントであるのに対し、本物の理由を付け足したときの承諾率は42パーセントであった。もっともらしい理由を付け足したときの承諾率は24パーセントにとどまった。

人に何かを頼む時に単に「○○してもらえますか?」と言うよりも「○○なので、○○してもらえますか?」と理由をつけると承諾されやすい。ささいな頼みごとの場合は、頼みごとの内容とあまり関係のない理由、こじつけでも承諾されやすい。

カチッサーの語源はテープレコーダーの再生ボタンのカチッという音と砂嵐のサーという音である[2]。このことからカチッとサーを掛けてカチッ・サー効果と表記される。

脚注[編集]

  1. ^ 蝦名晶子 (2017年9月22日). “カチッサー効果――思わず買ってしまうサイト上での働きかけとは”. 株式会社インプレス. 2018年1月13日閲覧。
  2. ^ a b 辻口寛一 (2014年11月12日). “誰にも必ずある「話し始めるボタン」”. 日経BP社. 2018年1月13日時点のオリジナルよりアーカイブ。2018年1月13日閲覧。
  3. ^ 西剛志『認知バイアスの教科書』2023年、SBクリエイティブ、p.91

参考文献[編集]

  • ロバート・B・チャルディーニ『影響力の武器[第二版]』誠信書房、2007年。ISBN 978-4-414-30416-9 
  • 保坂隆『面白いほどよくわかる心理学』日本文芸社、2008年、202頁。ISBN 978-4-537-25632-1 
  • The mindlessness of ostensibly thoughtful action: The role of "placebic" information in interpersonal interaction. By Langer, Ellen J.;Blank, Arthur;Chanowitz, Benzion Journal of Personality and Social Psychology, Vol 36(6), Jun 1978, 635-642. (PDF)

関連項目[編集]