カイワレダイコン

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カイワレダイコン(穎割れ大根、貝割れ大根)は、ダイコン発芽直後の胚軸子葉を食用とするスプラウト食材である。ピリッとした辛みがあり、生のままサラダ丼物の彩りなどに用いられることが多い。

カイワレダイコン
かいわれだいこん 芽ばえ 生[1]
100 gあたりの栄養価
エネルギー 88 kJ (21 kcal)
3.3 g
食物繊維 1.9 g
0.5 g
2.1 g
ビタミン
ビタミンA相当量
(20%)
160 µg
(18%)
1900 µg
チアミン (B1)
(7%)
0.08 mg
リボフラビン (B2)
(11%)
0.13 mg
ナイアシン (B3)
(9%)
1.3 mg
パントテン酸 (B5)
(6%)
0.29 mg
ビタミンB6
(18%)
0.23 mg
葉酸 (B9)
(24%)
96 µg
ビタミンC
(57%)
47 mg
ビタミンE
(14%)
2.1 mg
ビタミンK
(190%)
200 µg
ミネラル
ナトリウム
(0%)
5 mg
カリウム
(2%)
99 mg
カルシウム
(5%)
54 mg
マグネシウム
(9%)
33 mg
リン
(9%)
61 mg
鉄分
(4%)
0.5 mg
亜鉛
(3%)
0.3 mg
(2%)
0.03 mg
他の成分
水分 93.4 g
水溶性食物繊維 0.3 g
不溶性食物繊維 1.6 g
ビオチン(B7 5.6 µg
硝酸イオン 0.1 g

ビタミンEはα─トコフェロールのみを示した[2]。別名: かいわれ 茎基部約1 cmを除去したもの 
%はアメリカ合衆国における
成人栄養摂取目標 (RDIの割合。

概要[編集]

発芽に伴う代謝の中で、種子のときには存在しなかった成分も新たに合成され、ビタミンミネラルフィトケミカルなどが含まれる[3]

ローフード酵素栄養学では「酵素を多く含む食材である」として重視される。[要出典]

日本のカイワレダイコン農家の多くは、カイワレダイコンとともにブロッコリースプラウトやレッドキャベツスプラウト、豆苗、そば菜など多品種のスプラウトを生産している。カイワレダイコン以外にも栽培品種が増えたことから、日本かいわれ協会は日本スプラウト協会へ改称した[4]

歴史[編集]

原産地は、地中海沿岸中央アジア東南アジアなど諸説ある[5]

栽培[編集]

主に室内栽培で育てられることが多く、春・秋がつくりやすいが、冬でも保温や過湿をすれば周年栽培できる[5]。栽培適温は20 - 25度[7]、発芽適温は25度とされる[5]発芽後は、はじめのうちは遮光してモヤシのように丈を伸ばし、草丈8 - 10 cmになったところで二葉に光を当てて緑化する[5]に種をまいて大量に栽培することもできるが、家庭菜園の場合はプラスチック容器などを用いて栽培することもできる[5]。種子は一昼夜水に浸してから、浮かんだ不良種子を取り除き、種子が重ならないように布の上に広げて芽出しさせてから蒔く[7]。真っ白でまっすぐな軸を育てるため、種子は重なり合わないように密に蒔き、やや密植気味にする[7]。光に当てないように草丈を8 cmくらいに伸ばしたら、いきなり光に当てないように徐々に光を当てていく[7]。草丈が10 - 12 cmになったところで収穫する[7]。二葉の緑色が鮮やかで、軸が白いものが上等品である[7]

ダイコンであれば、どの品種でもカイワレ栽培できるが、「大阪四十日大根」などの定番品種がある[5]。種子は、殺菌剤などで処理されていない、スプラウト用のものが市販されている[5]

O157食中毒における風評被害[編集]

1996年7月13日大阪府堺市で発生した学校給食へのO157汚染による食中毒事件(堺市学童集団下痢症)の厚生省による疫学原因調査で「カイワレダイコンが感染源の可能性が高い」と報道された。その結果風評被害で壊滅的打撃を受け、倒産破産はおろか、自殺してしまうカイワレ生産者が出る事態となった。これを打開するため、当時の厚生大臣であった菅直人が安全さを消費者へアピールする目的でカイワレを食べる姿が報道された。

数年後に食中毒の原因がカイワレダイコンであるという報道は冤罪であったことが判明し、カイワレ農家がその報道被害と団結して闘ったことが日本スプラウト協会の公式ウェブサイトにも記されている[4]。またこの風評被害を跳ね除けるべく、農家の間でも衛生管理への意識が一層高まった[4]

その後、農林水産省の補助事業により、社団法人日本施設園芸協会から「かいわれ大根生産衛生管理マニュアル」が刊行され、次亜塩素酸ナトリウムを用いた衛生管理が推奨されている[8]

脚注[編集]

  1. ^ 文部科学省 「日本食品標準成分表2015年版(七訂)
  2. ^ 厚生労働省 「日本人の食事摂取基準(2015年版)
  3. ^ 「野菜350g」は本当にカラダにいいの…?食生活のウソホント”. FRIDAYデジタル. 講談社 (2020年7月16日). 2020年11月27日閲覧。
  4. ^ a b c d e 日本スプラウト協会とは 日本スプラウト協会、2023年7月30日閲覧。
  5. ^ a b c d e f g 板木利隆 2020, p. 292.
  6. ^ 青葉 (2000)、p.89
  7. ^ a b c d e f 板木利隆 2020, p. 293.
  8. ^ 野菜の衛生管理に関する情報 農林水産省、2022年12月26日更新、2023年7月30日閲覧。

参考文献[編集]

  • 青葉高『野菜の日本史』(初版)八坂書房、東京都〈青葉高 著作選II〉、2000年。ISBN 4-89694-457-7 
  • 板木利隆『決定版 野菜づくり大百科』家の光協会、2020年3月16日、292 - 293頁。ISBN 978-4-259-56650-0 

外部リンク[編集]