アイドル水泳大会

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特設ステージを組み会場となった大磯ロングビーチ

アイドル水泳大会(アイドルすいえいたいかい)は、各民放テレビ局で放送される、水泳を題材としたアイドル番組・バラエティ番組である。

番組名の表記には揺れが多く、語頭は「オールスター- 」「アイドル- 」「芸能人- 」「紅白- 」「寒中- 」「新春- 」、語中は「 -水泳- 」「 -水上- 」「 -水着美女- 」「 -ビキニ(で)- 」、語尾は「 -大集合」「 -大会」「 -(大)運動会」「 -感謝祭」などが見られた。

最も広く認知されている単語は「アイドル水泳大会」であり、本項目の現版ではこれを正式項目名とする。

概要[編集]

水泳が特技の芸能人の真剣勝負がメインの時代もあったが、全盛期には男性芸能人の参加者が減り、大型プールで主に女性芸能人が発泡スチロールの浮き島や、空気の入ったビニール製の不安定な足場などで、ゲームをするお色気番組要素が強まった。

アイドル歌手による歌のコーナーを設ける場合がある。競技中にBGMとして流れる場合は、画面の隅に小さく歌唱シーンが挿入される。

アナウンサーコメディアン声優実況アフレコをつけた番組もある。

音楽番組深夜番組が年に2 - 3回、スペシャル番組形式でアイドル水泳大会を行ったものもある(後述)。

主な競技の種類[編集]

大別すればおよそ以下の種類に分類される。競泳騎馬戦はルールの基本が単純なため、どの番組でも大体同じ内容であった。

浮島戦
プールに浮かべた浮遊物の上で、特定の目標を果たすもの。制限時間内に何人上がれるか、浮島を転覆させず耐えられるかなどを競う。一般にはゲーム終了時の残り人数が、点数として加算される。単純で華やかであるので、最初の競技になることが多い。
障害物競走
泳ぎや浮島上の走行による移動、はしご滑り台による上下運動、その他特定の行為(着せ替え、粉の中の飴をくわえることなど)を必要とするポイントを全部通過する競技。速さまたは制限時間終了時に目的を果たした人数の多さで得点を決める。行為や競技名そのものが「着せ替え」メインになっている競技や、メジャー系では夏に大型プールのプールサイドでマラソンを行う競技もあった。
水上格闘
浮遊物の上で異なるチームの選手同士が取っ組み合い、プールの中に落とされずに残った者が勝ち。対戦人数から2種類に大別される。1対1の場合、円陣で戦えば「水上大相撲」となる。ほかにビニール丸太に跨るもの、軟質ビニールの武具を持って殴り合うもの、背中合わせで合図と共に双方が尻で押し合う「ドンケツ」(尻相撲)などがある。多人戦の場合、広いフィールドで最後の一人が残るまで戦う「バトルロイヤル」や、攻守に分かれて相手の目標物を奪う「棒倒し」など。「椅子取りゲーム」もこれに近い。
飛込み競争・距離競争
プールサイドからの離脱距離を競うもの。高台から飛び込むか、ロープを握ってターザンの様に飛ぶかの2種類が一般的だが、転落しないよう慎重に進み、最終的な延長距離を競うものもある。
競泳
一般的な泳ぎによる競争である。泳法限定か自由形か、単発レースかリレーかなどは、通常の水泳競技と全く変わらない。競技順序は中間か最後にくることが多い。水泳部出身者などは真面目に勝負で来て、競泳水着で登場することもあった。
水上騎馬戦
一般的な騎馬戦を水面で行う。取るのは鉢巻でなく帽子である。2度戦ったり、3人騎馬でなくゴムボートで行う場合もある。競技順序としては番組の最初か、最後近くか、最後に行われることが非常に多い。

歌のコーナー[編集]

以下のような、進行・演出がなされる。

  • 競技を中断、正面席[注 1]で歌う。
  • プールの施設をあちこち移りながら[注 2]腰掛けたり寝たり、プロモーションビデオ的に放映する。落ち着いた歌に多い。
  • 新人やマイナー歌手は競技中に歌がかかるが、イントロもラストもフェードで切ってしまう場合が珍しくない。
  • ビデオ合成が容易になった1980年初頭からは、トロピカルな極彩色を使った様々な型の枠を映像に合成・挿入する[注 3]

歴史[編集]

始まりから黄金時代[編集]

こうした番組は1960年代末に始まったと言われている[1]。フジテレビによる第一回放送は1970年8月11日であり、タイトルは「紅白スター対抗水泳大会」であった[2][注 4]。(#過去に放映された主なアイドル水泳大会も参照)。

アイドル水泳大会はアイドルブームと合わせて放映本数・内容とも高まりを見せた。

この頃「アクション・カメラ術」なる、女性の隙をとらえたのぞき撮り(盗撮)に関する書籍がヒットし、「ヒット・カメラ術」「アタック・カメラ術」などのぞき撮り写真集が多数刊行された[注 5]。それら書籍の中ではアイドル水泳大会もかなりの比率を占めていた本もあった。

暗黒時代へ[編集]

アイドル水泳大会の撮影席にはカメラマンが殺到[注 6]、人気アイドルはカメラの砲列にさらされた。放送では使われなかったポロリをテレビ番組や雑誌に公開されたアイドルもいた。

アイドル本人のみならず事務所も慎重になり、アイドル水泳大会でも人気アイドルが出演を拒否したり、ビキニをやめてワンピースに移行した。女性用水着の流行も刺激の少ないワンピースが主流となった。アイドル水泳大会は本数も激減し、深夜に放送した。

この頃には、アイドル水泳大会の総集編番組も作られた(後述)。

ドキッ!丸ごと水着 女だらけの水泳大会[編集]

フジテレビだけは復活に挑戦、1987年夏からそれまで行った『オールスター紅白水泳大会』と『オールスター寒中水泳大会』を統合し『ジャポーン 女だけの水泳大会→ドキッ!丸ごと水着 女だらけの水泳大会』を夏と冬の年2回始める。この番組はアイドル水泳大会の復権にある程度貢献したが、水着が既にワンピース主流であった。

ワンピースだらけの中に、ビキニ姿のアダルトモデルが若干名おり、騎馬戦などでやらせのポロリを披露するために出演していることは一目瞭然で、出演者を「ポロリ要員」など俗称したが、番組としては「アクシデント」の体裁である。

このほかに水着鑑賞のニーズを増すため、水着ファッションショーも番組に組み込まれたが、女性だけでなく男性や子供のファッションショーも行われたことがある。 『女だらけの水泳大会』は、1993年夏から微妙にタイトルを変えながら、1998年冬の第18回まで続き(地上波としては最後)、しばらく年月をおいて2003年春にCS放送フジテレビ721で放送された『ドキッ!丸ごと水着!!アイドルだらけの水泳大会』が最後となった。

2000年代以降のアイドル水泳大会[編集]

世間一般では「自主規制」の影響と捉えられているが、実際は1990年代半ば頃から番組のマンネリ化やビデオデッキなどの普及によってレンタルビデオ店が拡張し、視聴率が低下するなどの時代背景に加えてアイドル自体が冬の時代を迎えていた事もあり、かつてのようなアイドル水泳大会は放映できなくなった。2000年代以降もマイナー系アイドル水泳大会は時々放映されることもあったが、少人数のグラビアアイドルでおとなしいゲームを行う程度に留まっていた。出演している芸能人のギャラ問題や製作費または女性タレント・アイドルたちもテレビで体を張るよりも個人での活動や作品を売り出していく方針を取った方が人気を得られるため、時代の変化により自然とそのような方向へシフトしていった。以後、グラビアアイドルなどの活躍場はバラエティ番組へと移行し、バラドルとして人気を博す事例が増えた。

アイドル水泳大会で知られる出演者[編集]

女性[編集]

男性[編集]

主な番組[編集]

  • ★印はレギュラー番組が、スペシャル番組形式でアイドル水泳大会を放送したもの。
  • 開催の度にタイトルが微妙に変わる場合、その部分は略した。

日本テレビ[編集]

日本テレビ放送網で放映されたアイドル水泳大会。

TBSテレビ[編集]

TBSで放映されたアイドル水泳大会。

フジテレビ[編集]

フジテレビで放映されたアイドル水泳大会。

テレビ朝日[編集]

テレビ朝日で放映されたアイドル水泳大会。他の民放と比べ、アイドル水泳大会として単独番組が放映された記録が存在しない。

テレビ東京[編集]

テレビ東京で放映されたアイドル水泳大会。

非地上波[編集]

その他[編集]

  • 寒中芸能人!水泳大会
  • ときめきLOVEスクール夏の水泳大会
  • 年忘れ!パンドレッタ水着で隠し芸大会
  • 水着パラダイス'94 アイドル初泳ぎ

総集編[編集]

  • Foreverアイドルスター水着ショット(TBS)
  • 600回記念特集 見たい見せたいあのスター水着(フジテレビ。1982年4月20日放送。『火曜ワイドスペシャル』放送600回を記念。司会:芳村真理・おりも政夫。同年5月11日には「600回記念」の第2弾として『オールスター紅白大運動会』の総集編を放送したが、この番組にもおりもがゲスト出演した)
  • オールスター水泳大会25周年記念 同窓会スペシャル(フジテレビ。1994年2月15日放送。『紅白』・『寒中』・『ジャポーン→ドキッ』の放送25周年を記念。司会:田代まさし・桑野信義・おりも政夫・森口博子)

アイドル水泳大会が登場する作品[編集]

  • 映画パッチギ! LOVE&PEACE』(劇中キャラがアイドル水泳大会に出演する場面がある)
  • アニメロスト・ユニバース』(第4話にアイドル水泳大会を彷彿させる場面がある)
  • アニメ『アイドル防衛隊ハミングバード
  • アニメ『ロザリオとバンパイア』(第5話「スクール水着とバンパイア」)
  • ゲームSIMPLE2000シリーズ もぎたて水着!女まみれのTHE 水泳大会』
  • ゲーム『THE IDOLM@STER (Xbox 360)』(アーケード版には水着はあるが、アイドル水泳大会はない)
  • ゲーム『オールスター水泳大会 OFFICIAL CD-ROM NICE BODY』(フジテレビが1995年に自社販売した3DO用ソフトで、スロットで貯まるクレジットを使って過去の名場面が見ることができる)
  • ゲーム『ラサール石井のチャイルズクエスト』ははわい行きを賭けた競泳のミニゲームがある。番組出演の際、ディレクターが「騎馬戦でおっぱいを出して」と言うジョークもある。
  • パチスロ『ドキッと!ビキニパイ』
  • アニメ『DOG DAYS’』(第11話:水上騎馬戦などの描写があり、コーナーワイプでヒロインが歌唱していたり豊胸ポロリがあったりなどアイドル水泳大会を彷彿させる)
  • パチンコ平和『CRドキッ!丸ごと水着 女だらけの水泳大会 アイドルだらけで困っちゃうング!!!』(2014年)
  • 漫画「競女!!!!!!!!」(水上格闘に特化した作品。架空の公営ギャンブル競技「競女」の選手養成学校が舞台。「ランド」と呼ばれる浮島でバトルロイヤル形式で戦う。尻と胸のみを使って攻撃し、足の裏以外が床に付くか水中に落とされると負けるルールで、ダイナミックな技が繰り出される。2016年10月にはTVアニメ化された。)
  • アニメ『SHOW BY ROCK!!#』(第2期 第4話「ドキィッ!?が〜るずだらけのふわっふわ水泳大会!ですぞ♡ポ(以下略」サブタイトルを始め、尻相撲、発泡スチロールの丸太、競泳、水上騎馬戦、ワイプでの歌など、全体的に意識している。)

備考[編集]

  • 応援席からは競技中、太鼓を激しく鳴らして騒ぐのが、応援のしきたりである。メジャー系では応援団や応援団長がいる場合もある。

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 競泳のスタート地点で、司会など番組進行が常駐する所。
  2. ^ 一度に歌っているのでなく、撮影はカットごとに行う。
  3. ^ これは後述するアイドル水泳大会のパロディでよく使われている。
  4. ^ フジテレビでは後年放映した総集編で、フジ初のアイドル水泳大会の映像を流したことがある。
  5. ^ ただし「アクション・カメラ術」はうんちく文を並べた新書版なのに対し、「ヒット・カメラ術」「アタック・カメラ術」などはほとんどグラビア書籍である。
  6. ^ カメラマンが気に入った出演者を選ぶ「ミス・フォトジェニック」なる賞もあった。
  7. ^ フジテレビのアイドル水泳大会が多い。引き立て役のコメディ要員としての起用にも拘わらず、競泳競技での優勝経験もある。
  8. ^ アイドル水泳大会出演中に水着が外れ、その際に撮影された写真が雑誌に掲載された。宝島特別編集『新装版 1980年大百科 超合金からYMOまで』宝島社、2001年、129ページ。ISBN 4-7966-2053-2
  9. ^ 「芸能界女性No.1スイマー」と呼ばれた。
  10. ^ 1994秋に井上を破った「新・芸能界女性No.1スイマー」。
  11. ^ 「女だらけの水泳大会」の女性アイドルでは出演回数も9回と多い。
  12. ^ 悪役女子プロレスラー。はぎ取り要員として「女だらけの水泳大会」に頻繁に出演。末期にはアジャ・コングらも。
  13. ^ アイドルが正面で歌う時、紅組と白組の集団がバックで踊っていた。
  14. ^ a b c 『女だらけの水泳大会』の司会。
  15. ^ 応援団として活躍。
  16. ^ 競泳など多くの競技に出場し、特にフジテレビの番組では「ミスター水泳大会」と呼ばれた。
  17. ^ 学生時代に「自由形」で国体に出場した経験があり、競泳では群を抜いていたため、得意ではない「平泳ぎ」で出場することが多かった。
  18. ^ 郷・西城が卒業した後の時代におけるスポーツ大会で、近藤とともに紅白や東西それぞれのキャプテンを務めることが多かった。
  19. ^ コメディ要員だったが、競泳でも実力を発揮。
  20. ^ 司会を多数務めた。
  21. ^ 司会やナレーターを多数務めた。
  22. ^ TBS『新春オールスター水上大運動会』の司会。
  23. ^ 『紅白スター対抗水泳大会』・『各界美女チーム対抗水中大合戦』の司会。
  24. ^ 『女だらけの水泳大会』にも参加していた。
  25. ^ フジテレビ版のスターター。本業は振付師で、応援役のスクールメイツの振付を担当。
  26. ^ ここで行われるアイドル水泳大会では、ラストの授賞式に自ら表彰役で出てくる。

出典[編集]

  1. ^ 橋本玉泉、岡島慎二編『これでいいのか湘南エリア』マイクロマガジン社、2010年、120ページ。ISBN 978-4-89637-347-9
  2. ^ 『東京新聞』2001年8月16日付朝刊16面。
  3. ^ 360度まる見えの「アイドル水泳大会」”. dogatch.jp. 2021年12月25日閲覧。
  4. ^ 24人のグラビアアイドルが水着でガチバトル、360°VR映像も配信”. マイナビニュース (2019年9月13日). 2021年12月25日閲覧。
  5. ^ グラドルVSセクシー女優!水泳大会2018春”. ABEMA (2018年3月22日). 2021年12月25日閲覧。

関連項目[編集]