オーガスタス・S・F・X・ヴァン・ドゥーゼン

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オーガスタス・S・F・X・ヴァン・ドゥーゼン教授(Professor Augustus S. F. X. Van Dusen)は、ジャック・フットレルの作品に登場する科学者名探偵である。

概要[編集]

ドイツ系アメリカ人の科学者の家に生まれる。容貌は小柄でかつ痩身であるが、頭が異様に大きく斜視[1] 気味でいつも気難しい表情をしている。以前はボストンの大学で教鞭をとっており、法学・医学・哲学・歯科の博士号および王立学会会員の資格を持っており、他にもヨーロッパ各国の大学から学士号が授与されている。

「論理的思考さえ出来れば、チェスを初めてやる人間であっても世界チャンピオンに勝てる」と豪語し、チェスの世界選手権保持者をものの10手で破って実証した事、その対戦者の感想から思考機械(The Thinking Machine)と呼ばれるようになる。

その推理法は科学的調査と論理的解釈を組み合わせたもので、オースティン・フリーマンジョン・イヴリン・ソーンダイクに類似した方法をとる。安楽椅子探偵として、実地調査は友人で新聞記者のハッチンソン・ハッチや警察のマロリー部長刑事に任せることも多い。口癖は「2+2=4である。ときどきそうなるのではなくて、いつも必ず同じ結果をもたらす」である。不可能ということばを病的なほど嫌う。

登場作品[編集]

「思考機械」の登場する短編は2冊の単行本に纏められているが、作者が3冊目を準備しているときに事故で亡くなったせいもあり、単行本未収録の作品も多数ある。それらは新聞や雑誌に掲載されたままになっていたが近年その発掘がすすみほぼ全容が明らかになっている。総作品数はエラリークイーンによれば48編との事だが、E.F.ブライラーによれば45編との事である。このように専門家によって編数が異なるのは、はじめ米国の雑誌に発表されたものが単行本に収録する際や英国の雑誌に再掲載する際に改題改稿をしている作品もありこれを別作品と数えるか元の作品の変形とするかによっても異なってくるである。ここではフットレルの公式サイトに掲載されている数え方によった。なお、原題の後の括弧内の英題は別題である。括弧内の四ケタの数字は初出年を示し、「A」は第一短編集(7篇収録)、「B」は第二短編集(13篇収録)を示す。

邦訳は、宇野利泰訳「思考機械の事件簿」(「創元推理文庫」東京創元社.1977年。後の版では表題に「Ⅰ」の文字が追加される)、池 央耿訳「思考機械の事件簿Ⅱ」(「創元推理文庫」東京創元社.1979年)、吉田利子訳「思考機械の事件簿Ⅲ」(「創元推理文庫」東京創元社.1998年)と押川曠訳「思考機械」(「ハヤカワ・ミステリ文庫」早川書房.1977年)に収録されているが、それ以外に合集に1編、雑誌に1編訳されているが、未訳のものもかなり残っている。訳題の後の括弧内の1、2、3、早 はその作品の訳の収録書を示す。以上に翻訳されて居ない作品の一部にウェブ上での翻訳が公開されている。

  • The Problem of Cell 13(1905、A) 「十三号独房の問題」 (江戸川乱歩編「世界短編傑作集1」-創元推理文庫.1960年に所収。宇野利泰訳)、「13号独房の問題」(早)-- デビュー作
  • The Ralston Bank Burglary (1905、A) 「ラルストン銀行強盗事件」渕上痩平訳 *ブログで訳出[2]
  • The Flaming Phantom(1905、A)「焔をあげる幽霊」(1)、「燃える幽霊」(早)
  • The Great Auto Mystery (1905、A) 「深夜のドライブ」 (「ミステリーズ」No.2-東京創元社.2003年に所収。吉田利子訳)
  • Kidnapped Baby Blake, Millionare (1905、A)「百万長者ベイビー・ブレイク誘拐」(2)
  • The Mystery of a Studio (1905)(未訳)
  • The Scarlet Thread (1905、A)「紅い糸」(1)、「赤い糸」(早)
  • The Man Who was Lost (1905、A)「正体不明の男」渕上痩平訳 *ブログで訳出[3]。 
  • The Golden Dagger (1905)(未訳)
  • The Fatal Cipher (1906)「復讐の暗号」(2)
  • The Grip of Death (1906)(未訳)
  • Dressing Room A (1906、B)「消えた女優」 (3)
  • The Chase of the Golden Plate 「金の皿盗難事件」 (3) --これのみ中編
  • Problem of the Motor Boat (1906、B)「モーターボート」(2)
  • A Piece of String (1906)「紐の切れ端 」 宮沢洋司訳(翻訳道楽) *ウェブにて販売[4]。  
  • The Crystal Gazer (1906、B)「水晶占い師」(1)
  • The Roswell Tiara (1906、B)「ロズウェルのティアラ」(3)
  • The Lost Radium (1906、B)「ラジウム盗難」 (2)
  • The Problem of the Opera Box (1906、B) 「オペラ桟敷席の謎」 宮沢洋司訳(「ハヤカワ・ミステリ・マガジン」2014年9月号)(元は「翻訳道楽」*ウェブにて販売[4]
  • The Missing Necklace (1906、B)「消えた首飾り」(1)、「失くなったネックレース」(早)
  • The Green-Eyed Monster (1906、B)「緑の目の怪物」(3) ---原題は「嫉妬」の婉曲な言い方(シェークスピアの科白より)
  • His Perfect Alibi (1906、B)「完全なアリバイ」(1)、「完全アリバイ」(早)
  • The Phantom Motor (1906、B)「幽霊自動車」(2、早)
  • The Grinning God / The House that was (1906)「嗤う神像《問題編》」/「家ありき《解決編》」(2) --前半の問題提起編をメイ夫人が執筆し、後半の解決編をジャックが執筆したもの。邦訳は便宜上両者をまとめて「幻の家」という総題をつけている。
  • The Haunted Bell (1906)「呪われた鉦」(2)
  • The Stolen Bank Notes (1906)(The Brown Coat)「茶色の上着」(1、早)
  • The Superfluous Finger (1906)「余分な指」(1、早)
  • The Thinking Machine (1907)「序・思考機械登場」(早) --創元推理文庫版では「消えた女優」一部に取り込まれている。
  • My First Experience with the Great Logician (1907)--邦訳は「《思考機械》調査に乗り出す」の前半に含まれている。
  • The Problem of the Knotted Cord (1907)(未訳)
  • The Problem of the Souvenir Cards (1907)「絵葉書の謎」(3) 他にパシフィカの「名探偵読本シャーロックホームズのライヴァルたち」にも「三枚のはがき」(押川曠訳)として訳が収録されている
  • The Problem of the Stolen Rubens (1907)「ルーベンス盗難事件」(1)、「盗まれたルーベンス」(早)
  • The Three Overcoats (1907)「三着のコート」(2)
  • Problem of the Organ Grinder (1907)「オルガン弾きの謎」 宮沢洋司訳(翻訳道楽) *ウェブにて販売[4]
  • The Problem of the Hidden Million (1907)「百万ドルの在処」(2)
  • The Problem of the Auto Cab (1907)「タクシーの相客」 (3)
  • The Private Compartment (1907)「専用個室の謎」 宮沢洋司訳(翻訳道楽) *ウェブにて販売[4] 
  • The Problem of the Cross Mark (1907)「《思考機械》調査に乗り出す」(1)---邦訳の前半は、上掲の別の作品である。(邦訳台本が、両者を続けてひとつの連続作品とした版から訳出している)
  • The Ghost Woman (1907)「幽霊の女」渕上痩平訳 *ブログで訳出[5]
  • The Leak (The Silver Box) (1907)「情報洩れ」(1)、「秘密漏洩」(早)
  • The Problem of Convict #97(1907)(未訳)
  • Problem of the Deserted House (1907)「廃屋の謎」 宮沢洋司訳(翻訳道楽) *ウェブにて販売[4]
  • Problem of the Red Rose (1907)(未訳)
  • The Problem of the Vanished Man (1907)「消える男」(2)
  • The Problem of Broken Bracelet (1907))「壊れたブレスレット」(3)
  • The Interrupted Wireless (1907)「跡絶えた無電」(2)
  • The Case of the Life Raft (1912) 「百万ドルの手紙」 *ウェブにて販売
  • Five Millions by Wireless (Prince Otto)(Millions by Wireless)(1912) (未訳)
  • The Case of the Scientific Murderer (The Case of the Mysterious Weapon)(An Absence of Air)(1912)「謎の凶器」(1.吉田誠一訳)
  • The Jackdaw Girl (1912)(未訳)
  • The Yellow Diamond Pendant (????) (内容不明)

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

 作品の発表順リスト[2]  独自に思考機械の作品総数を検討しているページもあったが、リンク切れになっている。

  • 単行本未収録の作品は邦訳があるもののみ紹介している。[3]

脚注[編集]

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  1. ^ 渕上痩平氏は、そのブログで『斜視は英語で表現する場合、専門的な用語では‘strabismus’というが、口語的には‘squint’という言葉が使われる。実は、原文でシリーズに接していると分かるが、この‘squint’という単語は、《思考機械》の容貌や動作を表現するのにしばしば使われている言葉なのだ。特に、動詞で出てくる場合には、文脈からしても明らかに「斜視」の意ではない文章が見出される。  上記の訳文の該当箇所を見ると、原文はいずれもこの‘squint’なのだが、この言葉には確かに「斜視」という意味もあるものの、辞書を引けばすぐ分かるように、「目を細めて見る」という動詞や形容詞、さらには「細目で見ること」という名詞でも用いられる。実際、『思考機械の事件簿1』を手がけた同じ翻訳者が、『世界短編傑作集1』に収録された「十三号独房の問題」では、‘perpetual, forbidding squint’という原文を「針のように鋭い視線」と訳している。「消えた女優」(『思考機械の事件簿3』収録)の訳者も、「メガネの分厚いレンズの奥の青い目はいつも何かをうかがうように細められている」(The eyes were narrow slits of blue squinting eternally through thick spectacles)と訳しているが、この単語の意の捉え方としては、こちらのほうが適当だろう。  《思考機械》は、もともと細い目をしているのだが、相手をじっと見つめる時、ますます細くなって視線が鋭さを増すのである。斜視、やぶにらみという描写は、《思考機械》の容貌の説明から削除されなくてはなるまい。』といっており確かに「斜視」と訳して無理が出ている箇所もある。
  2. ^ 渕上痩平氏のブログ http://fuhchin.blog27.fc2.com/blog-category-46.html の2014年4月17日から26日に分載
  3. ^ 渕上痩平氏のブログ http://fuhchin.blog27.fc2.com/blog-category-46.html の2014年4月8日から15日に分載
  4. ^ a b c d e http://homepage3.nifty.com/yonemaru/Douraku/Douraku.html
  5. ^ 渕上痩平氏のブログ http://fuhchin.blog27.fc2.com/blog-category-46.html の2014年4月27日から5月2日に分載