オリオン (宇宙船)

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オリオン
Orion spacecraft 2009.jpg
オリオンの想像図
詳細
目的: 貨物と乗員を国際宇宙ステーションへ輸送 [1]
乗員: 4人
打ち上げロケット: デルタIV Heavy
スペース・ローンチ・システム
打ち上げ予定: 2014年[2]
大きさ
全高:
直径: 5 m (16.5 ft)
与圧部体積: 19.55 m3[3]
居住部体積: 8.95 m3
カプセル重量: 8,913 kg (19,650 lb)
機械船重量: 12,337 kg (27,198 lb)
総重量: 21,250 kg (46,848 lb)
機械船推進剤重量: 7,907 kg (17,433 lb)
性能
トータルデルタ-v: 1,595 m/s
滞在期間: 210日
有人月面探査に向かうオリオンのイメージ
オリオン宇宙船の構成。先端から、緊急脱出システム・乗員モジュール・機械船・アダプター。
アレスIの打ち上げ(想像図)

オリオンOrionまたオライオンとも)は、アメリカ航空宇宙局 (NASA) がスペースシャトルの代替として開発中の有人ミッション用の宇宙船である。当初はCrew Exploration Vehicle(クルー・エクスプロレイション・ビークル、略称はCEV)と呼ばれていたが、2006年8月22日に、オリオン座に因み「オリオン」と正式に命名された。この宇宙船は国際宇宙ステーション (ISS) への人員輸送や、次期有人着陸計画(コンステレーション計画)への使用を前提に開発されていたが、2010年にコンステレーション計画が中止されたため、新たなオリオン宇宙船(Orion Multi-Purpose Crew Vehicle、略称はMPCV)として、ISSへの人員と貨物の輸送と回収に用途が変更されて開発が続けられている。その後、この機体は小惑星の有人探査にも使うことが表明された。オリオンの開発は、ロッキード・マーティンが行なっている。

オリオン無人試験機は2014年にデルタIV Heavyで初めて打ち上げられる予定で、このフライトは EFT-1(Exploration Flight Test-1)と呼ばれており、長楕円軌道を2周回した後、高速で突入させて耐熱シールドの能力確認を行う予定である[4]。また2017年には無人試験機がスペース・ローンチ・システムで打ち上げられ、運用段階においてもスペース・ローンチ・システムで打ち上げられる予定である。

目次

コンステレーション計画におけるオリオン[編集]

概要[編集]

コンステレーション計画において計画されていたオリオンは宇宙船は、アポロ計画で使われた機体に近いカプセル形状をしている。この円錐形の司令船は、アポロが底面直径3.8mで定員3人であったのに対して、オリオンは底面直径5m(当初の計画では5.5mだった)、寸法は1.5倍、容積は3倍で、最大6人のクルーが生活できるとされた。定員はISSへの往復で6名、コンステレーション計画での月探査では4名を予定していた。アポロが完全使い捨てであったのに対し、オリオンは10回程度繰り返し使用する計画であった。

後部に連結される円筒形の機械船には、アポロ同様に月への往復に使用できるロケットエンジンを備え、燃料は液体酸素メタンが検討されていた。これは将来の有人火星探査において、火星大気中の二酸化炭素からメタンを現地生産するすることを考慮したものだが、採用は見直し中であった。また、ロシアソユーズ宇宙船と同様に、太陽電池パドルを設置することで、長期間の電力供給を可能にする予定であった。この太陽電池パドルは、ATK社のUltraflexが採用されている[5]

コンステレーション計画における有人打ち上げ機(Crew Launch Vehicle: CLV) 、つまりオリオンの打ち上げ機にはアレスIが使用される予定だった。アレスIは、開発コストを削減するため第1段にはスペースシャトルの固体ロケットブースター (SRB) を延長した物を、第2段にはサターンロケットで使われたJ-2エンジンを改良したJ-2Xエンジン1基を使用する予定となっていた。地球低軌道への打ち上げ能力はスペースシャトル並みの約25トンを計画していた。

一方、貨物(月着陸船)の打ち上げ機 (Cargo Launch Vehicle: CaLV) には、アレスVロケットが用いられる予定だった。月探査時には先にアレスVでアルタイル月着陸船を地球の周回軌道上に投入してから、アレスIでクルーを乗せたオリオンを同じ軌道に投入し、両者が軌道上でドッキングし月に向かうことになっていた。アレスVの第1段のメインエンジンには、ボーイング社のデルタIVに使われているRS-68エンジン5基が、固体ロケットブースターには、5セグメント化されたスペースシャトルの固体ロケットブースター(SRB)2基が、第2段にはJ-2Xエンジン1基が使用される予定だった。アレスVの地球周回軌道への打ち上げ能力は125トンで、アポロ計画のサターンVロケットに匹敵する規模であった。

コンステレーション計画中止後にバラク・オバマ大統領によって新たに発表された宇宙計画では、月以遠の有人探査、例えば、着陸しない火星探査や小惑星探査を睨んでおり、打ち上げロケットのスペース・ローンチ・システムと共にオリオンが使用される可能性もある。

開発スケジュール[編集]

NASAは当初、2011年までに試作機を製作、早ければ2014年にも有人飛行を行うとしていた。しかし、2007年4月にスケジュールが見直され、オリオン宇宙船とアレスIの試作機は2013年、有人飛行は2015年以降に延期となった。これに伴い、開発費も39億ドルから43億ドルへ上昇した[6]

この延期によって、シャトルが退役する2010年(実際の退役は2011年になった)からアメリカの有人宇宙飛行に最低5年のブランクが生じる見込みになり、その間のISS滞在要員輸送手段は事実上ロシアのソユーズのみとなった。また、アレスVの初飛行は2018年以降になり、しかもアルタイル月着陸船の打ち上げが優先される予定だったので、ISSへの物資輸送も日本のHTV[7]やロシアのプログレスなどに頼ることになった。

2010年2月1日、オバマ大統領は2011会計年度の予算教書にて、サブプライムショック以降の財政悪化を理由にコンステレーション計画の中止を表明した。これによりシャトル後継機のオリオンとアレスロケット開発計画は白紙に戻った[8]

しかし同年4月13日、米政府が用途を国際宇宙ステーションの緊急脱出装置に変更した上でオリオンの開発を継続する方針を持っていることが明らかになり、同月15日にオバマ大統領がフロリダ州で公式に発表した[9]

なぜシャトルタイプではないのか[編集]

オリオンがアメリカで30年近く放棄されてきたアポロソユーズ型の使い捨て型ロケットシステムに回帰する理由は以下の通りである。

  • シャトルに比べてロシアのソユーズ宇宙船の評価が相対的に高い。シャトルは1980年代初期に建造された4機(後に1機追加)がほぼそのまま使われ続け、うち2機が事故によってクルー全員の命と共に失われている。一方ソユーズ宇宙船は40年余りの間に100機以上が打ち上げられており、2度の死亡事故を含めて何度か重大な事故を起こしたが、その都度改良が加えられ、1990年代以降は人命に危険が及ぶ事故は起きていない。カプセル型は突入時に姿勢制御ができなくなっても、最悪、非制御状態での弾道突入でも帰還ができるような設計が可能である。
  • オービタに装備されている主翼垂直尾翼)は打ち上げ時と大気圏再突入〜帰還時にしか使用されないため、大気のない宇宙空間に出れば全く用をなさなくなる。そのため重量的には非常に効率が悪い。打ち上げと帰還時にだけ翼を使用するくらいなら、むしろ翼のない方が効率的である。
  • オービタを繰り返し使用するには多額のメンテナンス費用が必要で、使い捨て(短期利用)の宇宙船を使用したシステムの方が現在の技術では経済的である。
  • 耐熱システムの問題。打ち上げ時に脆い耐熱タイルや耐熱シールドを落下物が衝突する可能性があるエリアにさらしているのは危険で、コロンビア号空中分解事故も主翼の耐熱シールド(RCC)を損傷したことが原因になった。オリオンのシステムであれば耐熱シールドは機械船との間に挟まれて打ち上げることができるため、同様の事故は回避できる。
  • シャトルには緊急脱出装置を搭載しなかったが、カプセル型宇宙船では、緊急脱出用ロケット(通称「LES」)を設置することが可能である。トラブル時にはカプセルのみを切り離して緊急脱出することができる。このシステムはアポロやソユーズでも設置され、ソユーズで一度使われて安全に避難できることが実証されている。
  • 将来型シャトルとして開発・検討されていた完全再使用型シャトルがいまだに実現していない状況。シャトルのコスト高を解決する方法として完全再利用型の宇宙機がいくつか検討されたが、技術的な難易度が極めて高く実現には至っていない。

なお、日本のJAXAにおいてHOPE計画の中止に伴って有志により提案されたふじ計画との相似性を指摘し、21世紀初頭における宇宙からの回収システムの技術的な最適値はカプセル型であるとする意見もある。

脚注[編集]

関連項目[編集]

外部リンク[編集]

日本語
英語