オランダ鉄道

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オランダ鉄道(オランダてつどう、オランダ語:NS, Nederlandse Spoorwegen)は、オランダの鉄道を運営する鉄道事業者で、旧オランダ国鉄を継承した、全国組織の鉄道事業者である。

概要[編集]

旧オランダ国鉄(NS)は、欧州連合(EU)の施策により上下分離が行われ、現在は以下の組織に再編されている。

  • プロレール(ProRail
    線路などの鉄道施設(インフラ)を保有・管理する
  • オランダ鉄道(N.V. Nederlandse Spoorwegen
    旅客列車の運営を行う
  • レイリオン・ネーデルランド(Railion Nederland BV
    貨物列車の運営を行う、1999年にドイツ鉄道の貨物輸送部門レイリオン社に売却された

本社はいずれも、首都アムステルダムではなく、オランダ第4の都市で、鉄道網の中心と言われるユトレヒトにある。

また、高速鉄道や国際列車の運行を行う組織が、KLMとの共同出資によりオランダ鉄道の子会社として2007年に設立されている。

路線[編集]

オランダ鉄道は、日本の約1割に相当する40,000平方キロの国土に、約2800kmの鉄道網を有し、日本ドイツと並んで、鉄道密度が高い国である。また、旅客輸送密度はヨーロッパで群を抜いて高く、鉄道が国内交通で重要な役割を果たしている。

オランダ最初の鉄道は1839年首都アムステルダムと、北海沿岸のハールレム(Haarlem)の間に開業した。以後、国内に路線網を築き上げた。1860年から鉄道の国有化が始まり、1917年にオランダ国鉄が発足している。

オランダの鉄道の特徴として、4大都市(アムステルダムロッテルダムデン・ハーグユトレヒト)を相互に結ぶ路線を中心に、オランダ国内の各都市を縦横に結んでいることが挙げられる。特に、前述の4大都市がある「ランドスタット」と呼ばれる地域は、鉄道の密度が高い。国内各都市へはいずれも数百キロの範囲内にあり、そのため、古くから都市間の高頻度輸送が充実してきた。これは現在でも、オランダ鉄道の基礎を成している。

ヨーロッパを代表する国際空港の一つであるスキポール空港へのアクセスも充実している。アムステルダム中央駅までの所要時間は15~20分で、5~15分間隔で運転されているほか、国内各都市への直通運転を行っている。

また、ヨーロッパ最大級の貿易港であるロッテルダム港を擁することから、貨物輸送も重視されており、2007年には貨物専用線であるベテゥベルートも開業している。

電化方式は直流1500Vで、電化率は7割を超えている。複線化率は約6割である。複線区間は右側通行である。

オランダ鉄道が計画している鉄道網整備の主なものとして、以下の事業がある。

ベテゥベルート
HSL-Zuid

一方で(オランダに限ったことではないが)、採算性の悪いローカル線については、地元の交通事業者に運営を移管するなどの動きも見られる。

駅数は、約374駅存在する。「世界の鉄道」NHK取材班

列車の種類[編集]

タリス
ICE
IC (Amsterdam-Brussel)
  • 国際列車
    首都アムステルダムが古くから交通の要衝であったこともあり、古くから、近隣諸国の都市を結ぶ国際列車の拠点となっている。特にパリブリュッセル・アムステルダムという、3つの国の首都を結ぶ路線は、3都市の頭文字を取って "PBA" と呼ばれており、ヨーロッパの鉄道の最重要幹線の一つである。1970年代までは、TEEエトワール・デュ・ノール」や「ラインゴルト」のような列車が設定されていたほか、ホーク・ファン・ホランド港発着の英蘭航路に接続して、イギリスと中欧方面を結ぶ国際ルートの一部もなしていた。現在はTEEや、その後継のユーロシティ (EC) さえも、オランダでは見られなくなったが、代わってタリスICEのような高速鉄道が乗り入れており、国際列車の重要拠点であることに変わりはない。
  • 国内列車
    国内列車は、都市間を相互に結ぶ列車が、30~60分間隔の完全パターンダイヤで多数設定されている。また、主要駅での対面ホームでの相互接続、優等列車と各駅停車との緩急接続、異系統列車同士の分割・併合も行っており、日本の大都市の鉄道と共通する点も多数ある(日本の長距離電車ネットワークは、島秀雄氏が、オランダの電車網を参考にして、推進したものと言われている)。
    国内のみの列車は座席指定などがなく、最上位のIntercityであっても特別料金等は不要の一般列車扱いである(ブリュッセルまでのIntercityも座席指定不可)。
    • Intercity
      日本の「新快速、特別快速」に相当する種別で、主要駅だけに停車し、都市間を短時間で結ぶ。末端区間では各駅に停車するものもある。
    • Sneltrein
      日本の「快速」に相当する種別で、Intercity よりも多くの駅に停車する。
    • SprinterStoptrein
      日本の「普通」に相当する種別で、各駅に停車する。(一部に系統による通過駅がある場合もある)。そのうち、ランドスタット地域を走る2000/2900型(Sprinter)で運用される電車を "Sprinter" と種別で区分している。

なお、最近は、主要線区の混雑や過密ダイヤに起因するダイヤ乱れが常態化しているため、その対策として、2006年12月10日に、運転系統の大幅な再編を目的としたダイヤ改正が行われた。基本的には、種別を "Intercity" と "Sprinter" "Stoptrein" に集約し、"Sneltrein" は削減されている。

運賃・乗車券[編集]

長距離輸送を担うオランダ鉄道及び私鉄4社は同一の乗車券システムを取り入れているが、地域交通(メトロやトラム、バスなど)で用いている国内交通料金収受システムとは一部を除き互換性が無い。近年、地域交通で用いられる非接触ICカードOV-Chipkaartが一部のオランダ鉄道路線で利用できるようになったため、それらの駅では自動改札機が導入されているところもある。基本的には信用乗車方式を採用しているため、駅に改札機は設置されていないか、設置されている駅でも改札機を通らずに駅構内に入ることが出来る。

切符はあらかじめ駅構内の券売機か発券窓口で購入することが求められ、列車内や下車駅での運賃精算には高額な罰金が課される場合がある。国内路線の切符を発券窓口で購入する場合は手数料(Transactiekosten 0.50EUR)が掛かるが、自動券売機で購入する場合は手数料は徴収されない。自動券売機は硬貨・PIN・OV-Chipkaartだけを受け付けるものが多く、紙幣やクレジットカードに対応したものは非常に少ない。液晶モニタの付いた券売機は、英語表示にも対応している。

運賃は普通運賃・往復運賃・老人小児割引運賃などがあり、その他季節等により割引切符が販売されることもある。列車には1等車・2等車があるため切符購入時にどちらのクラスに乗車するか指定する必要があるが、国内路線では座席指定は出来ないため座席指定料金などは存在しない。自転車の持込には別途自転車持込券を購入する必要があるが、日本のように輪行袋に入れる必要性は無く車内にそのまま持ち込める(但し通勤時間帯は持込不可)。

長距離国際列車(ベルギーとの間のIntercityは除く)は座席指定が可能で、タリスおよびICEは基本的に座席指定込みの特別運賃を支払う必要がある。これらの列車の切符は駅で販売されている他、インターネットでも割安に購入出来る場合がある。

国境審査[編集]

シェンゲン条約により、周辺諸国との間の国境審査・税関検査は基本的には存在しない。平時にはEU身分証明書やパスポートなどの確認は列車内や駅構内で行われることは無い。また、国際列車の切符購入時に身分証明書の提示を求められることも無い。(国境審査は行われないが、EU身分証明書やパスポートの携帯を免除されているわけではないので注意が必要である)

主な車両[編集]

電化率が高いことや、運転区間が比較的短いこと、都市間連絡を主とすることから、ヨーロッパの鉄道としては珍しく、古くから電車が主力である。

  • 高速用
    • タリス(4300型):「タリス(Thalys)」に使用される高速車両。フランスTGVがベース。
    • ICE-3M(4650型):ドイツのICE-3がベースの高速車両。4電源に対応する。塗装はドイツのICE-3と同一だが、オランダ鉄道のマークが付く。
    • このほか、高速新線(HSL-Zuid)開業に合わせて、オランダ鉄道独自の高速用車両が登場する予定。
Class1800
  • 1600型:1981年から製造された直流電気機関車で、フランス国鉄BB7200型電気機関車とほぼ同一仕様の「ゲンコツ」スタイル。B-B軸配置で、出力は4540kW、最高速度180km/h。オランダ鉄道の貨物鉄道会社部門であるレイリオン・ネーデルランド社の所属。一部が最近オランダ鉄道に移籍しているが、1800への改番は実施されていない。
  • 1700型:1992年から製造された直流電気機関車で、形態や出力は1600型と同一だが、DD-AR型ダブルデッカー客車の牽引に対応して電気連結器を持っている。DD-ARの二編成連結時には出力を落とす(電圧降下を防ぐため)。オランダ鉄道の所属。なお、最近一部車両の電気連結器が外されて、外観の区別が1600・1800型と変わらないものが出てきている。
  • 1800型:1600型と同一だが、オランダ鉄道所属の機関車。1600型と所属が異なるため改番された。
ICM
DD-IRM
  • ICM型電車(4000・4200型):"Koploper"。乗客の編成間移動や車販ワゴンの通り抜けなどの便宜を図るため、前面に貫通路を設け、運転台を上に上げたデザインで登場。ちょうど日本のJR485系電車(200番台)の登場理由と同様で、外観も似ている。最高速度は160km/h。1977年に試作車(既に廃車)が登場し、現在は1984~1993年製の4000型(3両編成)、4200型(4両編成)がユトレヒト~アメルスフォールトを通るICを中心に運用中。4編成連結、最大15両の長編成になるものもある。ただし現在では、故障による列車の遅れが多発しているため、貫通路の使用は中止されている。
  • DD-IRM型電車(8600・8700・9400・9500型):全車2階建て(ダブルデッカー)のIC用電車。最高速度は160km/h。高速新線対応でAC25000Vも走れる複電圧車。1994年から1996年にかけて3両編成×34、4両編成×47本が製造され、その後2002年から2004年にかけて新車で4両編成×13本(9500型)、6両編成×33本(8700型)と、一次車の編成増強による4両編成×34(9400型)、6両編成×47本(8600型)が在籍している。アムステルダム~フリシンゲン、デンヘルダー~ナイメーヘンなどのICで活躍中。6+6の12両編成も多く見ることができる。
  • ICRm型客車:ICM電車とほぼ同構造の車体設備を持つ。窓まわりがベルギー国鉄に由来する茶色に塗られたプッシュプル対応の「ベネルクストレイン」用の車両と、国内用(窓まわりが青色)の2種類で構成される。ベルギー用は現在は7両に組成され車体色を従来のNSカラーから全く変えたパステル調の新色に移行中。国内用は主にハーレム~マーストリヒト/ヘーレン、デン・ハーグ~フェンロのICに使われてきたが、06年12月の改正以降は主にスキポール~アインドホーフェン、アーネム~ロッセンダール、デン・ハーグ~フェンロの各系統に運用されている。最近冷房化が行われ、国内用車もプッシュプル対応(そのため一部客車が運転台取り付け改造をされている)になった。
  • ICK型客車:ドイツ鉄道から特急用2等車(Bm235型)を譲り受けた。一部は1等車に改造されている。デン・ハーグ~フェンロ間ICを中心に運用中。
  • ICB型客車:06年12月のダイヤ改正で不足する車両の充当にドイツ鉄道から旧IR用車を譲り受けた。アムステルダム~デベンター間ICで両端に電気機関車を連結したプッシュプルスタイルで限定運用中。
Mat'64 Plan-T
SGM Sprinter
DDM
  • Mat '64型(400・500・800型)電車:1964年から製造された電車。2両編成の"Plan V"型(400・800型)と、4両編成の"Plan T"型(500型)がある。犬の鼻に似た独特の前面形状から「ドッグノーズ」「ドッグヘッド」と呼ばれ、日本でも有名。最高速度は140km/h。
  • SGM型(2000・2900型):1975年から製造された電車"Plan Y"。都市圏の通勤電車として登場。"Sprinter"の愛称を持つ。最高速度は125km/h。現時点ではオランダ鉄道唯一の3扉車。2000型は2両編成、2800からリニューアルされた2900型は3両編成。2900型は白の窓まわりで目立つ。
  • DDM型客車:1985年から86年にかけて製造された、全車2階建て(ダブルデッカー)客車。7両編成で1600電気機関車とのプッシュプル。制御客車には動物の絵がマスコットとして1両ずつに描かれている。現在は6両に組成し直されて、アムステルダムを通るラッシュ時の輸送力列車として運用中。一時期編成をばらされた余剰車がICR客車編成内に組まれてICで運用されていたこともある。
  • DD-AR型(7400・7800型)客車:DDMと同形態の二階建て客車で、編成を3または4両に短縮し、動力の1700型機関車は電気連結器を持ち、2編成の連結が可能。1997年に電気機関車代わりの2階建て動力車(1階は機器室)が登場し、3両編成の動力車である1700電気機関車を置き換えた(7800型)。4両編成は電気機関車をそのまま連結している(7400型)。7400と7800は相互に連結が可能。最高速度140km/h。普通列車に使用されているが、アムステルダム~ハーレム~ドートレヒト~ブレダ間のSnelにも使われている。
  • DM '90型(3400型)気動車:1996年から製造された液体式気動車"Buffel"。2両編成で、最高速度は140km/h。非電化支線が主な運用区間だが、ズボレ~フローニンヘン間(電化区間)の普通列車にも使われている。

その他[編集]

  • 東京駅のデザインはアムステルダム中央駅を基にしたと言われているが、形状がかなり異なるため、否定的な見解もある。
  • TEEを提唱したのは、当時のオランダ国鉄の総裁F.Q.デン・ホランダーである。
  • 新幹線の生みの親」と言われる島秀雄氏は、鉄道省の技師時代の1936年(昭和11年)に欧州視察を行った際、オランダの電車網を見て、「日本には動力分散方式が適している」ことを確信し、以後、電車方式による長距離鉄道網を積極的に推進し、後の新幹線にまで発展させていくこととなった。

関連項目[編集]

外部リンク[編集]