オオバボダイジュ

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オオバボダイジュ
福島県会津地方 2013年7月
分類
: 植物界 Plantae
: 被子植物門 Magnoliophyta
: 双子葉植物綱 Magnoliopsida
亜綱 : ビワモドキ亜綱 Dilleniidae
: アオイ目 Malvales
: シナノキ科 Tiliaceae
: シナノキ属 Tilia
: オオバボダイジュ T. maximowicziana
学名
Tilia maximowicziana Shiras. (1900)[1]
シノニム
和名
オオバボダイジュ(大葉菩提樹)[3]

オオバボダイジュ(大葉菩提樹[4]学名: Tilia maximowicziana )は、アオイ科[注 1]シナノキ属落葉高木[3][6][7]。山地に生える。

分布と生育環境[編集]

日本の北海道本州東北地方北陸地方関東地方北部に分布し、山地の落葉樹林内に生育する[3][6]

特徴[編集]

落葉高木。ふつう樹高は6 - 8メートル (m) になるが、大きいものは高さ25 mになるものもある[4]。独立樹は整った卵形の樹形となる[4]樹皮は暗灰色から帯紫暗灰色で、はじめは滑らかであるが、老木になると樹皮が浅く縦に割れる[4]。若いには淡黄褐色のやわらかな星状毛が密に生え、小さな円形の皮目がまばらにある[4]互生し、葉柄は長さ4.5 - 7センチメートル (cm) になり、灰白色の星状毛が密に生える。葉身は長さ7 - 13 cm、幅6 - 11 cm、形はゆがんだ円形で、先端は短くとがり、基部はゆがんだハート形または切形、縁にはとがった鋸歯がある。葉の表面は無毛、裏面は灰白色でやわらかい星状毛が密に生える。裏面の側脈の基部に淡褐色の軟毛が密に生える[3][6][7]

花期は6 - 7月。葉柄の基部の側方から長さ6 - 10 cmになる集散花序を垂らし、その先に10数個の淡黄色のをつける。花序の軸に狭長楕円形の総苞葉が合着し、総苞葉は、花時の長さは5 - 8 cm、果時の長さは6 - 10 cmになり、両面に星状毛が密に生え、基部に長さ2 - 5ミリメートル (mm) の短い柄がある。萼片は5個あり、長さ6 - 7 mmになる披針形で先はとがり、内面には長い毛が、背面には星状毛が密に生える。花弁は淡黄色で5個あり、長さ約8 mmになる狭長楕円形で先はやや鈍い。雄蕊は長さ約5 mmになり、多数あり離生する。花弁の内側に仮雄蕊が5個あり、へら形の花弁状で花弁より短い[3][6][7]子房は5室あって各々に2個の胚珠があり[8]花柱1個は細く伸び、柱頭は浅く5裂する。

果実は長さ10 - 15 mmになる球状または楕円形の堅果で、5個の稜があり、灰白色の短い軟毛が密に生える。10月ごろに熟し[3][6][7]、裂開しないで中に1個の種子が入る[9]。総苞葉についた果実が、冬でも落ちずに残っていることもある[4]

冬芽はいびつな楕円形で先はやや尖り、芽鱗は2枚で外側の芽鱗は小さく、淡黄褐色の星状毛がある[4]。枝先には仮頂芽がつき、側芽は互生する[4]。葉痕は半円形で、維管束痕が3個から数個、輪状に並ぶ[4]

利用[編集]

公園樹として植栽される。樹皮の繊維を縄、布、和紙の原料とした。材は建築材、器具材として利用される[3][7]

下位分類[編集]

  • モイワボダイジュ Tilia maximowicziana Shiras. var. yesoana (Nakai) Tatew. - 葉が基本種のオオバボダイジュより大きく、また葉質は薄く、裏面に生える毛が少なく緑色に見える。北海道、本州の東北地方に分布し、山地に生育する。ときに本州中部地方北部にも見られる[6]
  • ノジリボダイジュ Tilia × noziricola Hisauti - シナノキとオオバボダイジュの交雑種と考えられる。葉は長さ6-12cm、幅6-10cmで、シナノキとオオバボダイジュの中間くらいの大きさで、葉の裏面が粉白色を帯び、裏面全体に星状毛が生える。果実には長い軟毛が密生する。長野県と新潟県に見られる。[6]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 最新の植物分類体系であるAPG体系ではアオイ科(Malvaceae)に分類されるが、古いクロンキスト体系新エングラー体系ではシナノキ科(Tiliaceae)に分類されている[1][5]

出典[編集]

参考文献[編集]

  • 大場秀章 編著『植物分類表』(初版第3刷訂正入)アボック社、2011年。ISBN 978-4-900358-61-4 別タイトル:Syllabus of the vascular plants of Japan.
  • 北村四郎・村田源『原色日本植物図鑑 木本I』(改訂版)保育社〈保育社の原色図鑑 49〉、1971年11月。 
  • 佐竹義輔ほか 編『日本の野生植物 木本II』平凡社、1989年2月。ISBN 4-582-53505-4 
  • 鈴木庸夫・高橋冬・安延尚文『樹皮と冬芽:四季を通じて樹木を観察する 431種』誠文堂新光社〈ネイチャーウォチングガイドブック〉、2014年10月10日、99頁。ISBN 978-4-416-61438-9 
  • 中山至大・井之口希秀・南谷忠志『日本植物種子図鑑』東北大学出版会、2000年2月。ISBN 4-925085-29-8 
  • 牧野富太郎 原著、大橋広好・邑田仁・岩槻邦男 編『新牧野日本植物圖鑑』北隆館、2008年11月。ISBN 978-4-8326-1000-2 
  • 茂木透 写真、高橋秀男・勝山輝男 監修『樹に咲く花:離弁花 2』山と溪谷社〈山溪ハンディ図鑑 4〉、2000年10月。ISBN 4-635-07004-2