エンブラエル 170
エンブラエル 170
エンブラエル 170(E170, 英語:Embraer 170)はブラジルの航空機メーカー、エンブラエル社製の小型ジェット旅客機である。
70席(E170)~110席(E195)級の機体で、E-Jetと呼ばれ、リージョナルジェットを意味するRJは使用しない。しかし、日本において航空法第12条の規定による型式証明書では、エンブラエル式ERJ170-100 STD型であり[1]、アメリカ合衆国のFAAにおいてもTCDSではERJ 170-100 STDと表記される[2]。
同じE-Jet系列のエンブラエル 175、エンブラエル 190、エンブラエル 195についても本項で扱う。
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概要 [編集]
エンブラエル社は、ERJ 145(50席)の好調に伴って、1999年に70席級であるERJ 170を開発することを決定した。2001年にERJ 170からエンブラエル 170に変更し、翌年に初飛行を行った。ダブル・バブル構造の胴体、フライ・バイ・ワイヤの操縦系統、強力なフラップなどの点において、ビジネスジェットの胴体延長型であるライバル機を凌駕している。また、この規模のジェット機では珍しい主翼吊り下げ型エンジンも、外観上の特徴である。市場の要求によって系列型も続々と開発され、2009年9月までに1669機(オプション含む)の契約がある。
設計 [編集]
エンブラエルE-ジェットは2つの主要な商業機の系列とビジネスジェットから構成される。最も小さいE-170とE-175が基本型で、E-190とE-195は延長型となり、出力が大きいエンジンと大型の主翼、水平尾翼、降着装置を備える。170と175、190と195はそれぞれ95%の共通性があり、これらの2系列間では同一の胴体断面やアビオニクスや特徴的なハネウェル社のプリムス・エピックEFIS等、89%近くが共通している。
機体名は従来の"ERJ"からリージョナルを意味する"RJ"が外され、単純に"E"の識別名が適用されるが、技術的には小型のエンブラエル・リージョナル・ジェット("ERJ"s)と同系統である。[3] エンブラエルは生産の初めの頃から宣伝にERJの呼称の使用を止めた。E-190/195シリーズの乗客数は幹線旅客機として利用された初期のDC-9やボーイング 737と同規模である。エンブラエルは革新的な"ダブル・バブル構造"(胴体断面が円を二つ重ねたような形状)設計を旅客機に取り入れたことによって立ち上がった時の頭上の窮屈感を低減した。エンブラエルE-ジェットの座席は4列配置である。
機体のサイズは全長およそ30メートル、高さおよそ10メートルと、AIRDOなどで運航されているボーイング737-500とほぼ同じである。コックピットの窓は空気抵抗が少ないように曲面ガラス[4]、飛行操縦装置にフライ・バイ・ワイヤを採用し、コックピットは、縦長の5面の液晶ディスプレイが装備されたグラスコクピットである。
操縦桿の形状は両手で持ち易い角度のM型で、駐機ブレーキのレバーは自動車の駐車ブレーキのように、引き起こすとかかり、ボタンを押しながら倒すと解除される[4]。コックピットの自動音声は女性の声であり、JALグループでは「ミスブラジルの声」と言っている[4]。
機内は、2+2席の配置で、全78席(標準仕様)。座席の片側は床でなく壁に取り付けられていて、足元が広い[4]。座席頭上にこのクラスのジェット機では大型の収納スペースが設けられ、優れた居住性を実現している。トイレは前後に2箇所ある。厨房であるギャレーが前後に設けられていて、客室乗務員は2~3名が乗務する。サイズが旅客機であるため、ボーディング・ブリッジの使用が可能である。ランディングギアは3脚共2輪、ブレーキはカーボンディスク、主脚の収納方向は内側[4]。主翼に、他の同規模機にはないウィングレットがある。
駐機時などに使うAPUが最後尾にあり、周辺パネルは熱対策のため無塗装[4]である。GE・アビエーション製のCF34ターボファンエンジンは、排気ノズルの縁を波型にすることで外側のバイパス流と混合し易くし、低騒音化している[4]。
派生機種 [編集]
E-170と175 [編集]
E-170/E-175シリーズは小さい方のE-ジェットシリーズである。E-170 と E-175はボンバルディア CRJ-700とボンバルディア CRJ-900と直接競合する。またボンバルディア Q400ターボプロップ機とも競合した。同様に初期の類似の設計のBAe 146とフォッカー 70に支配された市場での代替需要も狙う。E-170と175はGE・アビエーション製の推力14,200 ポンド(62.28 kN)のCF34-8Eエンジンを搭載する。
エンブラエル170は最初に生産された形式である。試作機は2001年10月29日に公開され119日後の2002年2月19日に初飛行した。2002年5月に欧州地域航空協会の会場で公開された。航空会社からの反応が良かったのでエンブラエルはE-175を開発した。胴体が延長されたE-175は2003年6月に初飛行が行われた。[5] 170の型式証明は公開から2年近く後で2004年3月に初めてLOTポーランド航空に納入された。[6]最初のE-175はエア・カナダに納入され、2005年7月から運航された。[5]
E-190と195 [編集]
E-190/195シリーズは大幅に胴体を延長したE-170/175で新開発の大型の主翼と大型の水平尾翼と推力18,500 lb (82.30 kN)の新型のCF34-10Eエンジンを備える。これらの航空機はボンバルディア CRJ-1000と競合する。さらに100席クラスではより小型の幹線旅客機であるボーイング717-200、737-500/-600、エアバスA318や開発中のボンバルディア Cシリーズと競合する。
E-190(PP-XMA)の初飛行は2004年3月12日で、[7]E-195 (PP-XMJ)の初飛行は2004年12月7日だった。[7]E-190のローンチカスタマーはニューヨークを拠点とする格安航空会社のジェットブルー航空で100機発注し、100機オプションで発注した。イギリスの格安航空会社のFlybeはE-195を14機発注し、12機オプションで発注した。[8]
190/195シリーズは幹線用の航空機の大きさなので多くの航空会社は幹線で使用し、航空会社は他の地域航空会社との差異化の為にビジネスクラスを設置したりする。一例としてエア・カナダは当初の機体の一部である45機のE-190に9席のビジネスクラスと84席のエコノミークラスを設置した。
エンブラエル Lineage 1000 [編集]
詳細は「:en:Embraer Lineage 1000」を参照
2006年5月2日、エンブラエルはE-190のビジネスジェットの計画を発表した。E-190と同じ構造を持つが航続距離は最大4,200 nmまで拡大され最大19席のラグジュアリー席を設置する。アルゼンチン空軍が大統領専用機として1機発注した。2009年1月7日にアメリカ連邦航空局から認証された。最初の2機は2008年12月に納入された。
E-195X [編集]
エンブラエルはE-195の胴体を延長したE-195Xとして知られる航空機の生産を検討している。予定では130席である。E-195Xはおそらくアメリカの航空会社のMD-80の代替の需要に応える事が目的であると推測される。[9] 航続距離が短すぎる為、エンブラエルは2010年5月にこの計画を撤回した。[10]
仕様 [編集]
| 形式 | E-170 (ERJ170-100) |
E-175 (ERJ170-200) |
E-190 (ERJ190-100) |
E-195 (ERJ190-200) |
|---|---|---|---|---|
| 乗員 | 2名 | |||
| 乗客数 | 80名 (1-クラス, 29"/30") 78名 (1-クラス, 30"/31") 70名 (1-クラス, 32") 70名 (2-クラス, 36"/32") [11] |
88名 (1-class, 30") 86名 (1-class, 31") 78 (1-class, 32") 78名 (2-クラス, 標準) [12] |
114名 (1-クラス, 29"/30") 106名 (1-クラス, 31") 98 (1-クラス, 32") 94名 (2-クラス, 標準) [13] |
122名 (1-クラス, 30"/31") 118名 (1-クラス, 31") 108 (1-クラス, 32") 106名 (2-クラス, 標準) [14] |
| 全長 | 29.90 m (98 ft 1 in) |
31.68 m (103 ft 11 in) | 36.24 m (118 ft 11 in) | 38.65 m (126 ft 10 in) |
| 翼幅 | 26.00 m (85 ft 4 in) | 28.72 m (94 ft 3 in) | ||
| 全高 | 9.67 m (32 ft 4 in) |
10.28 m (34 ft 7 in) |
||
| 非積載時の重量 | 21,140 kg (46,600 lb) | 21,810 kg (48,100 lb) | 28,080 kg (61,900 lb) | 28,970 kg (63,900 lb) |
| 最大離陸重量 | 35,990 kg (79,300 lb) (STD) 37,200 kg (82,000 lb) (LR) 38,600 kg (85,000 lb) (AR) |
37,500 kg (83,000 lb) (STD) 38,790 kg (85,500 lb) (LR) 40,370 kg (89,000 lb) (AR) |
47,790 kg (105,400 lb) (STD) 50,300 kg (111,000 lb) (LR) 51,800 kg (114,000 lb) (AR) |
48,790 kg (107,600 lb) (STD) 50,790 kg (112,000 lb) (LR) 52,290 kg (115,300 lb) (AR) |
| 最大積載量 | 9,100 kg (20,000 lb) (STD&LR) 9,840 kg (21,700 lb) (AR) |
10,080 kg (22,200 lb) (STD&LR) 10,360 kg (22,800 lb) (AR) |
13,080 kg (28,800 lb) | 13,650 kg (30,100 lb) |
| MTOWでの離陸距離 | 1,644 m (5,394 ft) | 2,244 m (7,362 ft) | 2,056 m (6,745 ft) | 2,179 m (7,149 ft) |
| エンジン | 2× CF34-8E ターボファン それぞれの推力 62.3 kN (13,800 lbf) それぞれのAPR推力63.2 kN (14,200 lbf) |
2× CF34-10E ターボファン それぞれの推力 82.3 kN (18,500 lbf) それぞれのAPR推力89 kN (20,000 lbf) |
||
| 最大速度 | 890 km/h (481kn, マッハ 0.82) | |||
| 航続距離 | STD: 3,334 km (1,800 nmi) LR: 3,889 km (2,100 nmi) AR: 3,892 km (2,102 nmi) |
STD: 3,334 km (1,800 nmi) LR: 3,889 km (2,100 nmi) AR: 3,706 km (2,001 nmi) |
STD: 3,334 km (1,800 nmi) LR: 4,260 km (2,300 nmi) AR: 4,448 km (2,402 nmi) |
STD: 2,593 km (1,400 nmi) LR: 3,334 km (1,800 nmi) AR: 4,077 km (2,201 nmi) |
| 最大燃料積載量 | 9,335 kg (20,580 lb) | 12,971 kg (28,600 lb) | ||
| 巡航高度 | 41,000 ft (12,500 m) | |||
| 上昇率 | Max 3,500 FPM | |||
| 推力重量比 | 0.42:1 | 0.39:1 | 0.41:1 | 0.39:1 |
| 胴体と客室内の断面 | ||||
| 胴体幅 | 3.01 m (9 ft 11 in) | |||
| 室内幅 | 2.74 m (9 ft 0 in) | |||
| 胴体高 | 3.35 m (11 ft 0 in) | |||
| 室内高 | 2.00 m (6 ft 7 in) | |||
出典: エンブラエル E-ジェット[15]
ギャラリー [編集]
-
170で初就航のアリタリア・エキスプレス
-
175で初就航のエア・カナダ
-
190で初就航のジェットブルー航空
-
195で初就航のFlybe
運用航空会社の一覧 [編集]
ジェイエア(日本航空)15機
フジドリームエアラインズ 6機
マンダリン航空
香港エクスプレス航空
ブリティッシュ・エアウェイズ
Flybe 15機
LOTポーランド航空 10機
KLMオランダ航空
USエアウェイズ・エキスプレス 57機
アリタリア・エキスプレス
エア・カナダ 45機
エジプト航空
ヴァージン・ブルー
エアー・ノース
ノースウェスト航空/コンパス航空 36機
シャトル・アメリカ 45機
ジェットブルー航空 105機
デルタ・コネクション
ノースウエスト航空
フィンランド航空 10機
ユナイテッド・エキスプレス
リパブリック航空 58機
モクレレ航空
ほか多数
日本国内での動き [編集]
派生型のエンブラエル 175、エンブラエル 190-100/200、エンブラエル 195も含め、エンブラエル 170の開発段階から、日本の川崎重工業も参加し、FRP製等の部品を供給[4]している。
JALグループが、2007年2月に導入を決定し[16]、同年6月に正式契約を結んだ。 各地方路線の需要規模への対応、2009年度以降の東京国際空港の再拡張による発着枠拡大などが主な理由である。 運航は日本航空の連結子会社(グループ会社)であるジェイエア(J-AIR)が担当している。 2008年10月4日に第一号機(JA211J)が引き渡され[17]、2009年2月より名古屋(小牧)-福岡・松山で運航を開始した。 EMB-110以来、またジェット機としては初めてエンブラエル機が日本の空を飛んだ。 導入機数は確定10機+追加購入オプション5機とし、オプション5機に関しては利用状況を精査し、175もしくは190,195などの大型機への移行も検討されている。
2007年7月、静岡空港を拠点としてリージョナル航空事業への参入を表明したフジドリームエアラインズがエンブラエル 170の導入を表明した[18]。 導入機数はエンブラエル 170を3機、エンブラエル 175を3機の合計6機である。
脚注・出典 [編集]
参考文献:青木謙知『旅客機年鑑 2010-2011』イカロス出版
- ^ 報道発表資料:エンブラエル式ERJ170系列型航空機に対する型式証明書の交付について - 国土交通省
- ^ Model ERJ 170-100 STD TCDS A56NM Rev 7 Embraer - Empresa Brasileira de Aeronautica S.A.
- ^ “Embraer 170/175/190/195 Aircraft Data”. Airliners.net. 2006年7月17日閲覧。
- ^ a b c d e f g h 「THEフライト 翼の時間」、第13回(最終回)、BSジャパン、2010年4月10日再放送
- ^ a b Embraer 170 Commercial Jetliner
- ^ 600th production E-Jet delivered to LOT
- ^ a b “RAB - Registro Aeronautico Brasileiro”. ANAC. 2011年1月31日閲覧。
- ^ Flybe (2007年). “About our fleet”. 2008年2月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2008年5月23日閲覧。
- ^ Kirby, Mark (2010年1月). “Proposed stretch dubbed E-195X by Embraer”. 2010年1月26日閲覧。
- ^ “Embraer kills 195X over range concerns”. Flight International (2010年). 2010年5月14日閲覧。
- ^ http://www.embraercommercialjets.com/img//download/138.pdf
- ^ http://www.embraercommercialjets.com/img//download/137.pdf
- ^ http://www.embraercommercialjets.com/img//download/136.pdf
- ^ http://www.embraercommercialjets.com/img//download/135.pdf
- ^ Embraer E-jet specifications, accessed Dec 26, 2009
- ^ 日本航空 - JAL、新小型機としてエンブラエル170の導入方針を決定!
- ^ ブラジル・エンブラエルの日航向け1号機、完成で引き渡し 日経新聞
- ^ 鈴与株式会社 航空事業推進本部 -導入機材 エンブラエル170-
外部リンク [編集]
- Embraer Commercial Jets(英語)
- 川崎重工業航空宇宙カンパニー(日本語)
- Embraer 170/175/190/195の概要(pdf),財団法人日本航空機開発協会(日本語)