エロイカ変奏曲

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創作主題による15の変奏曲とフーガ 変ホ長調 作品35は、ルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェンが作曲したピアノ独奏のための変奏曲。この曲の主題はとくに作曲者が気に入っていたもので、4度にわたって使用されており、最後に流用されたのが交響曲第3番《英雄》の終楽章である。このことにより、一般には『エロイカ変奏曲』として知られる。1802年に作曲され、翌1803年ブライトコプフ・ウント・ヘルテル社から出版された。カール・アロイス・フォン・リヒノフスキー侯爵に献呈されている。

曲の構成[編集]

序奏
主和音の強打の後、バスのユニゾンからなる主題提示から始まる。このごく単純な旋律は『プロメテウスの創造物』フィナーレの伴奏部分であり、『英雄』の終楽章でも最初に提示される主題として扱われている。便宜上、これを「エロイカ主題」と呼ぶ。序奏は4回繰り返され、そのたびに二声、三声、四声と対声部が追加されていく。この序奏自体がパッサカリアのような変奏曲と見ることができる。
変奏曲主題
長い序奏ののち、ようやくエロイカ主題の上声部に旋律を置いた変奏曲主題が奏される。こちらは『プロメテウスの創造物』フィナーレで使われていた旋律であり、便宜上「プロメテウス主題」と呼ぶ。以降の変奏は性格変奏であり、プロメテウス主題は原型をとどめないほどに自由に変奏されるが、序奏で提示されたエロイカ主題は一貫しており、最後に置かれたフーガの主題もこのエロイカ主題からとられている。したがってこの変奏曲は2重の主題を持ち、むしろエロイカ主題の方が主役であると見なすことができる。
第1変奏
半音階を多用した、ジャズ風の響きを持つ快活な変奏。
第2変奏
右手が激しい三連符を奏し、左手は高低差の激しい上下を繰り返す。
第3変奏
タッタタタッタタというリズムを基調とした諧謔的な変奏。
第4変奏
左手がきわめて速いパッセージを奏し、右手はその上でエロイカ主題の変形を弾く。
第5変奏
簡素な二声のインヴェンション
第6変奏
ハ短調。右手と左手に激しい掛け合いが見られる。
第7変奏
きわめて間隔の短い可憐なカノンである。
第8変奏
左手のゆったりしたアルペジオの中にエロイカ主題が隠されている。
第9変奏
三連符の上で重厚な和音が連打される。
第10変奏
左手の裏拍と、跳ね回るような旋律が特徴的な変奏。
第11変奏
伴奏は非常にシンプルな和音の連打のみで、跳ねるような装飾変奏である。
第12変奏
右手と左手が上下に素早く拡散していくような変奏。
第13変奏
重たい足取りの6拍子。
第14変奏
変ホ短調。全曲中最も陰鬱な変奏。
第15変奏
変ホ長調に戻り、清浄な穏やかさと広がりを取り戻す。ハ短調の経過句の後、フーガに至る。
フーガ
エロイカ主題からとられたフーガ。第2提示部では反行フーガとなる。
コーダ
コーダは、主題2回分の形式を完璧に備えているので、実質上これが第16・第17変奏であると見ることもできる。その後、プロメテウス主題前半部が回想され、冒頭と同じ主和音の強打で終わる。

外部リンク[編集]