エアリー関数

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索

数学において、エアリー関数 Ai(x)Bi(x) とは特殊関数の一つである。エアリー積分ともいう。

電磁波回折や一様なにおける粒子運動におけるシュレーディンガー方程式(波動関数)や振幅に現れる。 イギリス天文学者ジョージ・ビドル・エアリー(George Biddell Airy)に由来する。

関数 Ai(x)Bi(x)エアリーの微分方程式

\frac{d^{2}f(x)}{dx^{2}} - xf(x) = 0

である。

この微分方程式は、下記のグラフに見られるように振動から指数関数的振る舞いへと移るようなを持つ二階線型微分方程式の中で最も簡単な微分方程式である。

定義[編集]

上記の方程式は二階線型微分方程式なので、2つの線型独立を持つ。

一つを Ai(x) とし、もう一つの関数 Bi(x) は、下のグラフのように、 x \rightarrow -\infty としたときに、Ai(x)振幅が等しくなり、位相 \theta = \frac{\pi}{2} だけずれたような振動をもつ関数として取る。単に、 A の次のアルファベット B を用いただけで、 Bi という文字には大した意味はない。

実数 x に対し、エアリー関数 Ai(x)Bi(x) は次の積分によって定義される。

\mathrm{Ai}(x) = \frac{1}{\pi} \int_0^\infty \cos\left(\frac{t^3}{3} + xt\right)\, dt
\mathrm{Bi}(x) = \frac{1}{\pi} \int_0^\infty \left\{\sin\left(\frac{t^3}{3} + xt\right) + \exp\left(-\frac{t^3}{3} + xt\right)\right\}\, dt

ここで、 Ai(x)Bi(x) が、上記の微分方程式を満たすことがわかる。

t \rightarrow \infty でも、被積分関数が0に収束することはないが、積分自体は収束する。

部分積分を用いると、この積分収束することが分かる。 エアリー関数の定義式中の積分の内側を2度微分し、 y = \pm\frac{t^3}{3} + xt とし、 t^{2}dt = \pm\left(dy-xdt\right) を用いて部分積分すればよい。


赤色実線が Ai(x) を、緑色破線が Bi(x) を表す。

性質[編集]

Ai(x)Bi(x)x = 0での、及び、その微分係数は、ガンマ関数を用いて、


   \mathrm{Ai}(0) = \frac{1}{3^{2/3}\Gamma(\frac23)}, \quad
   \mathrm{Bi}(0) = \frac{1}{3^{1/6}\Gamma(\frac23)}, \quad
   \mathrm{Ai}'(0) = -\frac{1}{3^{1/3}\Gamma(\frac13)}, \quad   
   \mathrm{Bi}'(0) = \frac{3^{1/6}}{\Gamma(\frac13)}.

と書ける。 この時、 Ai(x)Bi(x)ロンスキアンを求めると、

W(x) = \frac{1}{\pi}

となる。

x > 0 であれば、 Ai(x) > 0 で、0に収束する単調減少関数となる、この時 Bi(x) > 0単調増加関数になる。

x < 0 であれば、 Ai(x)Bi(x) は、0 を境に振動し、x が小さい程、振動は激しく、振幅は小さくなっていく。

これは、エアリー関数の漸近公式からもわかる。

漸近公式[編集]

x \rightarrow \infty としたときの、エアリー関数の漸近的振る舞いは次で与えられる。

 \mathrm{Ai}(x) \sim \frac{e^{-\frac23x^{3/2}}}{2\sqrt\pi\,x^{1/4}}
 \mathrm{Bi}(x) \sim \frac{e^{\frac23x^{3/2}}}{\sqrt\pi\,x^{1/4}}

逆に、 -x \rightarrow -\infty であれば、

 \mathrm{Ai}(-x) \sim \frac{\cos(\frac23x^{3/2}-\frac14\pi)}{\sqrt\pi\,x^{1/4}}
 \mathrm{Bi}(-x) \sim -\frac{\sin(\frac23x^{3/2}-\frac14\pi)}{\sqrt\pi\,x^{1/4}}

この公式漸近展開 を用いることによって得られる。 これらの結果は (Abramowitz and Stegun, 1954) と (Olver, 1974)による。

複素変数[編集]

次のようにエアリー関数の定義域を、複素平面上に拡げることができる。

\mathrm{Ai}(z) = \frac{1}{2\pi i} \int \exp\left(\frac{t^3}{3} - zt\right)\, dt

積分路は、偏角 \theta = -\frac{\pi}{3}無限遠点から、偏角 \theta = \frac{\pi}{3}無限遠点までとする。

さらに、複素平面上の微分方程式

\frac{d^2f(z)}{dz^2} - x\frac{df(z)}{dz} = 0

を用いれば Ai(x)Bi(x) を、複素平面上での 整関数 Ai(z)Bi(z) に拡張できる。

z^{\frac{2}{3}}主値を取り、 z が負の実上に無く有界であれば、 Ai(z)に関する漸近公式はそのまま成り立つ。

Bi(z) に関する漸近公式は適当な正の \delta を決めて得られる扇形領域

D = \left\{z \in C \mid | \arg{z} | < \frac{1}{3} \pi - \delta\right\}

の点 z に対して成り立つ。

z扇形領域

D = \left\{z \in C \mid | \arg{z} | < \frac{2}{3} \pi - \delta\right\}

にあれば、Ai(-z)Bi(-z) ともに、漸近公式が成り立つ。

エアリー関数の漸近的振る舞いより、 Ai(z)Bi(z) はともに、負の実上に無限個の零点を持つことが分かる。 関数 Ai(z) は、複素平面上にこれ以外の零点を持たないが、 Bi(z) は、領域

D = \left\{z \in C \mid  \frac{\pi}{3} < | \arg{z} | < \frac{\pi}{2}\right\}

無限個の零点を持つ。

他の特殊関数との関係[編集]

引数が正(x > 0)の時、エアリー関数修正ベッセル関数との間に次のような関係がある。

 \mathrm{Ai}(x) = \frac1\pi \sqrt{\frac13 x} \, K_{1/3}\left(\frac23 x^{3/2}\right),
 \mathrm{Bi}(x) = \sqrt{\frac13 x} \left(I_{1/3}\left(\frac23 x^{3/2}\right) + I_{-1/3}\left(\frac23 x^{3/2}\right)\right)

ここで、 I_{\pm\frac{1}{3}}K_{\frac{1}{3}}

x^{2}\frac{d^{2}f(x)}{dx^{2}} + x\frac{df(x)}{dx} - (x^{2} + \frac{1}{9})f(x) = 0

である。

引数が負の時、エアリー関数ベッセル関数との間に次のような関係がある。

 \mathrm{Ai}(-x) = \frac13 \sqrt{x} \left(J_{1/3}\left(\frac23 x^{3/2}\right) + J_{-1/3}\left(\frac23 x^{3/2}\right)\right),
 \mathrm{Bi}(-x) = \sqrt{\frac13 x} \left(J_{-1/3}\left(\frac23 x^{3/2}\right) - J_{1/3}\left(\frac23 x^{3/2}\right)\right).

ここで、 J_{\pm\frac{1}{3}}

x^{2}\frac{d^{2}f(x)}{dx^{2}} + x\frac{df(x)}{dx} - (x^{2} - \frac{1}{9})f(x) = 0

である。

スカラーの関数

\frac{d^{2}f(x)}{dx^{2}} - x\frac{df(x)}{dx} = \frac{1}{\pi}

の解である。これらをエアリー関数を用いて表すと

 \mathrm{Gi}(x) = \mathrm{Bi}(x) \int_x^\infty \mathrm{Ai}(t) \, dt + \mathrm{Ai}(x) \int_0^x \mathrm{Bi}(t) \, dt,
 \mathrm{Hi}(x) = \mathrm{Bi}(x) \int_{-\infty}^x \mathrm{Ai}(t) \, dt - \mathrm{Ai}(x) \int_{-\infty}^x \mathrm{Bi}(t) \, dt.

となる。

歴史[編集]

エアリー関数は、イギリス天文学者ジョージ・ビドル・エアリーによる光学研究 (Airy 1838) で用いられた。 Ai(x) という表記はハロルド・ジェフリースによるものである。

外部リンク[編集]

参考文献[編集]