ウォルター・デ・ラ・メア

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
移動: 案内検索
Walter de la Mare, Ottoline Morrell, 1924

ウォルター・ジョン・デ・ラ・メアWalter John De La Mare, OM1873年4月25日1956年6月22日)は、イギリスの小説家、詩人。優れた児童文学作家であるとともに、幻想味豊かな怪奇小説の書き手としても知られ、恐怖の対象を直接描かず、言外の意味を以て読者の恐怖感を喚起する手法、いわゆる朦朧法を用いた怪奇・幻想作品は高く評価される。

生涯[編集]

ケント州チャールトンで、ヒュージノット教会の管理人の父と、詩人ロバート・ブラウニングの遠縁にあたる母の間に生まれた。4歳の時に父が亡くなり家族でロンドンに移る。やがてセントポール大聖堂の少年聖歌隊に入り、附属聖歌学院に学ぶ。7歳の時に『ガリバー旅行記』に感銘を受けて文学に目覚め、13歳頃には校内誌の編集に携わる。14歳で学院を退学してアングロ・アメリカン石油会社に就職。翌年カーター・レインに移り、勤めのかたわら聖歌学院交友会誌の編集を続ける。その後『黒と白』『スケッチ』『ペル・メル・ガゼット』などの雑誌に詩や短編小説の投稿を始め、1895年に『スケッチ』に短編「キスメット」が掲載されて認められるようになる。1899年に結婚。

1902年に処女詩集『幼年の歌』を出版し一部に注目され、1904年に初の長編小説『ヘンリー・ブロッケン』刊行。1908年にアングロ・アメリカン石油会社を辞めて、ヘンリー・ニューボルト卿の推薦で政府から年100ポンドの王室奨励金を受けて創作を続けた。1910年に2冊の長編『死者の誘い』『三匹のムッラ=ムルガー』、1911年に詩集『聴き入る人々その他』を刊行して注目され、次いで1913年の子供向けの『ピーコック・パイ』により、「童謡詩の真の後継者」(ヴィタ・サックヴィル=ウェスト)との評価を得た。

1921年の長編『おやゆび嬢の自伝』でジェイムズ・テイト・ブラック記念賞を受賞。1947年にカーネギー賞受賞。1953年にメリット勲章受章。1956年にロンドンのトウィッカナムの自宅で死去、セントポール大聖堂の地下室に埋葬された。

長男リチャードはT.S.エリオットとともにフェイバー&フェイバー社に入り、後に会長となった。

作品[編集]

長編[編集]

  • 『ヘンリー・ブロッケン』Henry Brocken 1904年
  • 『死者の誘い』The Return 1910年
  • 『三匹のムッラ=ムルガー』The Three Mulla Mulgars 1910年(のち『三匹の王族ザル』に改題)
  • 『おやゆび嬢の自伝』Memoirs of a Midget 1921年
  • 『ひと目見て』1928年

中短編集[編集]

  • 『謎その他』The Riddle and Other Stories 1923年
  • 『鐘が鳴る』Ding Dong Bell 1924年
  • 『箒の柄その他』Broomsticks and Other Tales 1925年
  • 『具眼の士その他』The Connoisseur and Other Stories 1926年
  • 『辺境』On the Edge 1930年
  • 『魚の王様その他』The Lord Fish 1930年
  • The Dutch Cheese 1931年
  • The Walter de la Mare Omnibus 1933年
  • 『一陣の風』The Wind Blows Over 1936年
  • The Nap and Other Stories 1936年
  • Stories, Essays and Poems 1938年
  • The Best Stories of Walter de la Mare 1942年
  • Collected Stories for Children 1947年
  • 『はじまりその他』A Beginning and Other Stories 1955年
  • Eight Tales 1971年
  • Walter de la Mare, Short Stories 1895–1926 1996年
  • Walter de la Mare, Short Stories 1927–1956 2000年
  • Walter de la Mare, Short Stories for Children 2006年

詩集[編集]

  • 『幼年の歌』Songs of Childhood 1902年
  • 『聴き入る人々その他』The Listeners 1911年
  • 『ピーコック・パイ』Peacock Pie 1913年
  • 『道化師その他』The Marionettes 1918年
  • Down-Adown-Derry - A Book of Fairy Poems 1922年
  • 『面紗その他』1933年
  • 『追憶その他』1938年
  • Bells and Grass 1941年
  • 『天日レンズその他』1945年
  • 『旅人』1946年(長編詩)
  • 『天翔る戦車』1951年(長編詩)
  • O Lovely England 1952年
  • Walter de la Mare, The Complete Poems Giles de la Mare 1969年

詩文集・アンソロジー[編集]

  • 『こちらにおいで』Come Hither 1923年
  • 『トム・ティドラーの大地』1931年
  • 『春の朝まだき』Early one Morning, in the Spring 1935年
  • 『この夢見る人を見よ!』Behold, This Dreamer! 1939年(アンソロジー)
  • 『愛』Love 1943年

戯曲[編集]

  • 『クロッシング館』Crossings: A Fairy Play 1921年

ノンフィクション[編集]

  • Some Women Novelists of the 'Seventies 1929年
  • 『無人島とロビンソンクルーソー』Desert Islands and Robinson Crusoe 1930年
  • 『旧約聖書物語』1929年
  • 『動物物語』1939年(民話・伝説集)
  • シャルダン論』1948年

日本語訳作品[編集]

  • 『魔女の箒』(国書刊行会世界幻想文学大系10〉, 1975年)
  • 『ジャックとまめのつる』(文研出版, 1977年)
  • 『魔法のジャケット』(旺文社, 1978年)
  • 『旧約聖書物語』(岩波書店, 1979年)
  • 『ムルガーのはるかな旅』(早川書房, 1979年)
  • 『魔法のうわぎ』(大日本図書, 1980年)
  • 『死者の誘い』(東京創元社, 1984年)
  • 『九つの銅貨』(福音館書店, 1987年)
  • 『妖精詩集』(筑摩書房, 1988年)
  • 『恋のお守り』(筑摩書房, 1989年)
  • 『サル王子の冒険』(岩波書店, 1992年)
  • 『なぞ物語』(フレア, 1996年)
  • 『デ・ラ・メア物語集 1』(大日本図書, 1997年)
  • 『デ・ラ・メア物語集 2』(大日本図書, 1997年)
  • 『デ・ラ・メア物語集 3』(大日本図書, 1997年)
  • 『孔雀のパイ 詩集』(瑞雲舎, 1997年)
  • 『九つの銅貨』(福音館書店, 2005年)
  • 『デ・ラ・メア幻想短篇集』(国書刊行会, 2008年)

日本語訳作品(短編)[編集]

  • 『シートンのおばさん』(東京創元社刊『怪奇小説傑作集』所収)
  • 『箒の柄』(徳間書店刊『猫に関する恐怖小説』所収)
  • 『失踪』(東京創元社刊『恐怖の愉しみ(下)』所収)
  • 『桶』(白水社刊『現代イギリス幻想小説』所収)
  • 『樹』(白水社刊『イギリス幻想小説傑作集』所収)
  • 『トランペット』(新人物往来社刊『怪奇幻想の文学Ⅵ 恐怖の探求』所収)
  • 『なぞ』(新人物往来社刊『怪奇幻想の文学Ⅳ 啓示と奇蹟』所収)
  • 『すばらしい技巧家』(東京創元社刊『犯罪文学傑作選』所収)
  • 『姫君』(牧神社刊『幽霊奇譚』所収)
  • 『呪われた大聖堂』(朝日ソノラマ刊『神の遺書』所収)
  • 『世捨て人』(朝日ソノラマ刊『恐怖の分身』所収)
  • 『奇妙な店』(筑摩書房刊『新編 魔法のお店』所収)

参考文献[編集]

  • 田中西二郎訳『死者の誘い』東京創元社 1984年(鈴木耀之介「デ・ラ・メア・ノート」)

外部リンク[編集]