ウィルソンサイクル

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ウィルソンサイクル(Wilson cycle)とは、海洋底大陸の分裂や形成を繰り返すサイクルのこと。カナダ地質学者ツゾー・ウィルソンによる提唱をきっかけに生まれた概念。

概念の誕生[編集]

ウィルソンサイクルは、大陸移動説を基にしてウィルソンによって提唱された概念である。まず、アルフレート・ヴェーゲナー大陸移動説海洋底拡大説では、大陸は動き、分裂すること、また、海洋底が形成されることが証明された。ウィルソンは、これに大きく関連するプレートテクトニクスの理論を、トランスフォーム断層の概念によって説明し、成立に大きく貢献したのだった。以上のいくつかの概念・理論を発展させることによって、ウィルソンサイクルという概念は誕生した。

海洋底と大陸の分裂と形成[編集]

ウィルソンサイクルにおいて、海洋底や大陸の分裂や形成は、地殻の内側にあるマントルと硬い表層部であるプレートの動きによってもたらされている。そこで、まず基本的な大陸・海洋の分裂・形成の流れを示すこととする。

  1. 大陸下のマントルの上昇流により、大陸に断裂が出来る。
  2. やがて2つに断裂し、この分裂が進むと海洋プレートが出来、海洋が形成される。
  3. 海洋プレート海嶺によって生産が継続され、海洋が拡大する。
  4. 大陸プレートが移動し続けることにより、大陸プレート海洋プレートとの間に断裂が出来る。
  5. やがて軽くてマントルに沈み込めない大陸プレートの下に海洋プレートが沈み込み、列島や山脈が出来る。
  6. 海溝から海嶺が沈み込み、海洋底の生産が止まる。
  7. 海洋の生産が終わることで、海洋が縮小し、大陸どうしが接近する。
  8. 海洋が消滅、大陸が衝突し、山脈が形成される。

この過程が繰り返されることで、大陸の形成と消滅が起こっていると考えられ、この繰り返される流れのことをウィルソンサイクルと呼んでいる。

ウィルソンサイクルの一例[編集]

では、実際に大陸がどのような分裂・形成をしているのだろうか。超大陸パンゲア大陸が形成されるまでの大陸の動きを例に挙げて、説明していくことにする。

  • インド亜大陸がアジア大陸から離れる。
  • 大西洋が閉じて、北米大陸・南米大陸とヨーロッパ大陸・アフリカ大陸とがくっつく。
  • 南極大陸、アフリカ大陸、オセアニア大陸、インド亜大陸がくっつく。
  • 超大陸パンゲアが誕生する。

パンゲアは、今から2億年ほど前に誕生したと考えられている。そしてこの後、再び分裂を繰り返し、現在の形に至ったと考えられている。このことは、北米大陸・南米大陸東海岸線とヨーロッパ大陸・アフリカ大陸西海岸線とが、ほぼ一致することからも裏付けられている。ここで注目すべきなのは、超大陸誕生によるマントルの動 きである。大陸が大きくなると、その下にあるマントルの放出が妨げられる。それによって、マントルの上昇流が超大陸の下に集中し、再び大陸が断裂していく。これをブランケット効果と呼ぶ。超大陸は、ブランケット効果により、再び断裂し、海洋が誕生、新たな大陸が形成される。このように、超大陸の誕生もウィルソンサイクルの現象の1つであると言える。

超大陸は3~4億年の周期で離合集散を繰り返しているとされ、上記で挙げた超大陸(パンゲア)の他、「ゴンドワナ大陸」が約6億年前に、「ロディニア大陸」が約10億年前に誕生したと推定されている。また、このような大陸の衝突や分裂によって出来た地形として、北米大陸とヨーロッパ大陸とが衝突した際に形成されたアパラチア山脈や、ヨーロッパアルプス山脈などが例として挙げられる。

参考文献[編集]

  • 「地球のしくみ」(新星出版社、編:新星出版社編集部、2006年)
  • 「地球学へのいざない」(大阪公立大学共同出版社、編:OMUPユニヴァ編集部、発行:桑原孝雄、2003年)
  • 「流体的地球像」(放送大学教材、著:福田正巳・濱田隆士、発行:放送大学教育振興会、2003年)
  • 「地球の探究」(朝倉書店、編:大原隆・西田孝・木下肇、発行:朝倉邦造、1989年)
  • 「大学テキスト自然地理学下巻」(古今書院、著:大山正雄・大矢雅彦、発行:橋本寿資、2004年)
  • 「地球の内部で何が起こっているのか?」(光文社、著:平朝彦・徐垣・末廣潔・木下肇、発行:古谷俊勝、2005年)
  • 「変化する地球環境」(放送大学教材、著:木村龍治、発行:放送大学教育振興会、2004年)
  • 「地球と環境の科学」(東京教学社、著:木下紀正・八田明夫、発行:鵜飼好男、2002年)