ウィスキー型潜水艦

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ウィスキー型潜水艦
ウィスキー型潜水艦
ウィスキー型潜水艦
基本情報
運用者  ソビエト連邦海軍
 ロシア海軍
建造期間 1949年 - 1958年
建造数 236隻
前級 ズールー型潜水艦
次級 ケベック型潜水艦
ロメオ型潜水艦
要目
排水量 浮上時約1,080トン
潜航時約1,350トン
(型による差異あり)
長さ 76 m
83.3 m (ウィスキーロングビン)
6.3 m - 6.5 m
吃水 4.9 m
推進器 ディーゼル・エレクトリック方式
速力 浮上時18.5ノット
潜航時13ノット
シュノーケル潜航時7ノット
航続距離 浮上時13,500海里
潜航時6,000海里
乗員 54人 (巡航ミサイル搭載型はそれ以上)
兵装 533mm魚雷発射管6門 (艦首4門、艦尾2門)
魚雷12本または機雷22基
25mm対空砲 1門
(ウィスキーI、II、IV)
57mm対空砲 1門
(ウィスキー II)
1 × SS-N-3巡航ミサイル
(ウィスキーシングルシリンダー)
2 × SS-N-3 巡航ミサイル
(ウィスキーツインシリンダー)
4 × SS-N-3 巡航ミサイル
(ウィスキーロングビン)
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内部解説模型
サンクトペテルブルクで博物館船となったウィスキー型潜水艦S-189英語版(2007年撮影)
プロイェークト644 "ウィスキー・ツイン・シリンダー"
艦首魚雷発射管4門
艦尾魚雷発射管2門

ウィスキー型潜水艦(ウィスキーがたせんすいかん 英語: Whiskey-class submarine)は、ソヴィエト/ロシア海軍通常動力型潜水艦である。1・2・3・4・5型のサブタイプの他、多くの改造型が存在する。

ウィスキー型NATOコードネームであり、ソ連海軍の計画名は613型潜水艦ロシア語: Подводные лодки проекта 613)である。

概要[編集]

第二次世界大戦中に活躍したナチス・ドイツXXI型潜水艦のデザインを大きく受けついだものであり、1949年から1958年にかけて合計236隻が生産された。

この潜水艦は当初沿岸警備潜水艦として設計されたが、1950年代から1960年代にかけてその一部が誘導ミサイル潜水艦として改造された。1956年ごろに最初の改造を受けたウィスキー型はP-5 (SS-N-3 Shaddock) 巡航ミサイル発射管を艦橋の後ろに1基持った物で、西側にウィスキー・シングル・シリンダー、58年から60年の間に発射管を2基に増やした物はウィスキー・ツイン・シリンダー(プロイェークト644)、さらに60年から63年の間に発射管を4基に増やした物はウィスキー・ロング・ビン(プロイェークト665)と呼ばれた[1]

SS-N-3ミサイルを発射するためには浮上しなければならず、シングルとツインシリンダータイプは発射管が水平に配置されたので発射前にさらにこれを上方に向けなければならなかった。

そして最終型のロングビンでさえ運用成績は悪く、ミサイル発射管と水流の摩擦による雑音も目立ち、ウィスキー型はすぐに全艦退役となった。そのうち4隻だけがウィスキー・キャンバス・バッグ(プロイェークト640)として知られるレーダーピケット艦として残され、また2隻が漁業資源調査および海洋学調査用の潜水艦として残った。

ソ連ではその後ロメオ型潜水艦が沿岸警備潜水艦、ジュリエット型潜水艦が誘導ミサイル潜水艦の役をそれぞれ受け持った。

大量に建造されたこともあり退役後も解体処分が進まず、ウラジオストック軍港内の各所には放置状態で係留された艦も多く見られていた。

輸出[編集]

通常型のみ、誘導ミサイルとレーダーピケット艦は輸出されていない。

その他
  • ペプシ海軍 - 財政難となっていた1989年、17隻のウィスキー型潜水艦がペプシコーラ原液との物々交換として清涼飲料水製造会社ペプシコへ渡され、スクラップ工場への仲介とされた[2]

建造[編集]

ソビエトでは合計236または215隻のウィスキー級が建造された。ソビエト国防省の造船所長のVADM Burovに1969年から1983年にかけて215隻の建造が承認された[3]。生産計画は以下を参照[4]

ゴーリキー ニコラエフ バルティック コモスモルスク 合計
1951 1 - - - 1
1952 4 5 - - 9
1953 19 11 - - 30
1954 29 14 - 1 44
1955 37 18 8 4 67
1956 26 15 4 4 49
1957 - 9 3 2 14
1958 - - 1 - 1
合計 116 72 16 11 215

スペック[編集]

型によって少し異なる

  • 水上排水量:1,080t
  • 水中排水量:1,350t
  • 全長:76.6m(ロングビンは83.3m)
  • 幅:6.3 - 6.5m
  • 喫水:4.9m
  • 出力:水上4,000hp、水中2,500hp
  • 速力:水上18.5ノット、水中13ノット、シュノーケル中7ノット
  • 航続距離:水上13,500海里、水中6,500海里

脚注[編集]

  1. ^ Otechestvennoye Voyennoye Korablestroyeniye v tretem stoletii svoey istorii, V.N. Burov, Sudostroyeniye, Sankt Peterburg, 1995
  2. ^ Новости, Р. И. А. (20190720T0800). “Бартер по-нашему: как CCCР обменял военный флот на газировку Pepsi” (ロシア語). РИА Новости. 2024年2月19日閲覧。
  3. ^ Otechestvennoye Voyennoe Korablestroeniye v Tretem Stoletii Svoyey Istorii, 1995, ISBN 5-7355-0508-4
  4. ^ Conway's.

参考文献[編集]

  • Gardiner, Robert (ed.). Conway's all the World's Fighting Ships 1947-1995. London: Conway Maritime. ISBN 0851776051. OCLC 34284130  Also published as Gardiner, Robert. Conway's all the World's Fighting Ships 1947-1995. Chumbley, Stephen; Budzbon, Przemysław. Annapolis, MD: Naval Institute Press. ISBN 1557501327. OCLC 34267261 
  • Weir, Gary E., and Boyle, Walter j. Rising Tide, The untold story of the Russian Submarines that fought the Cold War,Basic Books 2003

関連項目[編集]

外部リンク[編集]