イ県

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中華人民共和国 安徽省
西逓村の牌坊
西逓村牌坊
旧称:黝、広徳国、朔鹵


中心座標 北緯30度32分0秒 東経118度34分0秒 / 北緯30.53333度 東経118.56667度 / 30.53333; 118.56667
簡体字 黟县
繁体字 黟縣
Yī Xiàn
カタカナ転記 イーシェン
国家 中華人民共和国
安徽
地級市 黄山市
行政級別
政府所在地 碧陽鎮
面積
- 総面積 847 km²
人口
- 総人口(2004) 10 万人
経済
電話番号 0559
郵便番号 245500
ナンバープレート 皖J
行政区画代碼 341023
公式ウェブサイト http://www.yixian.gov.cn/

(い-けん)は中華人民共和国安徽省黄山市に位置する

黟県は黄山市で最も小さな県であり、最古の県でもある。古称は広徳国朔鹵(詳細は後述)。

概要[編集]

黟県の可耕地は 40.3 平方キロメートル、山地は 704 平方キロメートルであり、76.3 パーセントが森林に覆われている。年平均気温は摂氏 15.8 度、降水量 1,686 ミリメートル、無霜期は 212~213 日。茶、桑など衣料作物の栽培が盛ん。特産はシイタケ木耳、シナガヤ(zh)の実などである。

16世紀には商業が盛んなことで知られ、4千棟以上の精巧な建築が行われ、その様式は風格明朗な「皖南民居」である。(皖南(かんなん)は安徽省南部。)世界遺産に登録された西逓村宏村も黟県内にある。

映画『臥虎蔵龍』(日本における題『グリーン・デスティニー』)は宏村で撮影された。このほか、『菊豆』『復活的罪悪』『南京的基督』『大転折』『徽商』『風月』などにも黟県で撮影されたシーンがある。

地理[編集]

黟県の北部には枕黄山、南部には白岳があり、四方が山に囲われた盆地である。山は黄山につながっていて外界と隔てられているため、古くから「小桃源」と呼ばれていた。北にある長江へ向かって青弋江が流れている。

黟県には現在にも古民居3,600棟が保護されており、皖南の中心地である。西逓、宏村、南屏、関麓、屏山に残る古民居は厳謹、工芸精湛なものであり、西逓、宏村は世界遺産に登録されている。

歴史[編集]

名称[編集]

黟県の古称は(「黟」の異体字)であり、紀元前221年(秦朝26年)に作られた。紀元前19年6月、前漢成帝の時代、黝県は広徳国と改称された。鴻嘉5年(紀元前12年ごろ)、広徳国が廃されて再び黝県となる。王莽は西暦10年(始建国2年)、黝県を朔鹵と改称し、丹陽郡の一部とした。西暦25年(建武元年)、再び黝県に戻された。

行政区分[編集]

1950年に黄山市太平県(今は無い)、石台県に属していた美溪、柯村、宏潭が黟県に編入された。1958年1月2日祁門県に合併され、黟県県委(中国共産党県支部)と県政府機関も転出した。1959年4月5日国務院の批准を受け、再び黟県が設置された。

行政区画[編集]

区分 名称
4 碧陽 宏村 漁亭 西逓
4 柯村 美渓 宏潭 洪星

経済[編集]

黟県はその地理環境を生かして観光を主要産業としている。2003年には旅行者は111万人に達し、総収入は2.7億元であり、GDPの50%以上を占める。観光業のほか、絹糸生産、農産物加工、土産物の製造がある。

製糸紡織業[編集]

関係の産業は観光を除いて黟県の基幹産業である。80年代初めに桑の植生が行われ、それから20年で桑園4.5万畝、繭の年生産量2千トンとなっている。製糸会社も2つあり、生糸の年生産量は400トン、これは安徽省で第2位である。また、練糸の年生産量は260トンで、これは安徽省で第1位である。絹関係の産業総収入は1.5億元以上に達する。

農業副産物加工[編集]

黟県には農業副産物加工の企業も多い。桃源罐头食品有限公司は糖水板栗(むき栗の水煮)、箬叶(クマザサの葉、香り付けに使う)、乾燥野菜の千切り、筍の缶詰などの生産を行っており、とりわけ糖水板栗の生産量は中国第1で、その95%が輸出用である。また、黟県臘八豆腐、宏潭豆腐乳などが伝統的手工業で生産されており、中国の大手スーパーなど入手できる。

黟県は昔から茶の生産地として名高く、黄山毛峰、五溪香芽、西逓翠眉などの品種が知られる。また、黟県泗溪郷の香榧は安徽省を代表する名産品であり、とりわけ米榧と尚榧が観光客に人気がある。

土産物の製造[編集]

黟県の観光業の発展に伴って、土産物製造業も発展を続けた。始めは個人による簡単な工芸品から始まり、後に金星工芸品廠、黄山市民間工芸品有限公司などが中心になって加工企業も100に達するようになった。とりわけ文房四宝(筆・墨・紙・)と呼ばれる、木彫り、レンガ彫り、石彫りの製品は日本や韓国に輸出されるほか、中国の20以上の省市で売られている。黟県は中国東部の観光用工芸品生産地、貿易拠点として発展を続けている。

その他の産業[編集]

黟県の機械電力設備、玩具、木竹製品産業の始まりは比較的早い。軸受、長絨玩具、高性能磁性材、小型机などが生産されており、それなりの規模に発展している。黟県の竹材合板工場は、中国でも比較的初期に始まっており、その生産技術は今でも高い。

特産品[編集]

「泗溪三宝」──,苦丁茶香榧葛粉

  • 苦丁茶:日本でも近年、苦い茶の代表として知られている。
  • 香榧:シナガヤの実。果肉に豊富な脂肪分、蛋白質、糖質、炭水化物を含み、ビタミン、不飽和脂肪酸も豊富である。 
  • 臘八豆腐:黟県の家庭風味の特産品であり、中国暦12月8日(臘八)前後にはどの家庭も豆腐を作り、これを乾燥させたものを臘八豆腐としている。
  • 食桃:良質の籼(大陸性の稲)に一定比率でもち米を混ぜて挽いた米粉。水を加えてダンゴにし、蒸して食用とする。

観光[編集]

黟県の「桃花源里人家」と呼ばれる西逓と、「中国画里郷村」と呼ばれる宏村の2つの古村落は世界遺産に登録されている。

その他、菊豆ゆかりの郷である南屏、神秘的な八大家連体建築の関麓、古黟の風水村(舒秀文の故居)屏山、徽州第一木雕樓、塔川秋色、木坑竹海、清末の名妓賽金花故居、陶淵明後裔の居住地陶嶺村落、宏村龍池湾農耕文化園などが著名である。

また、五溪山自然保護区、西逓古石窟群、鴛鴦谷、十里桃花長廊等も観光地として開発中である。

詩文での描写[編集]

代の文学家陶淵明は、黟県の風景を『桃花源記』の中で描写している。

代の詩人李白により、

「黟県小桃源,煙霞百里間,地多霊草木,人尚古衣冠」

と詠われている。

外部サイト[編集]