イヴリン・ハート

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イヴリン・ハートEvelyn Anne Hart1956年4月4日 - )は、カナダバレエダンサーである。ロイヤル・ウィニペグバレエ団(en:Royal Winnipeg Ballet)のプリマバレリーナを長年にわたって務め、世界各国でゲストダンサーとして活躍した。

経歴[編集]

1956年、オンタリオ州トロント長老派教会に属する牧師の家庭に生まれ、双子の妹がいた[1]。父は音楽愛好家であり、家族も音楽に親しんでいた[1]。幼いころの夢は、花嫁かお姫様になることでバレエダンサーではなかったが、ある演劇祭で見た芝居に魅了されて女優を志望するようになった[1]

14歳のとき、オンタリオ州ロンドンのドロシー・カーターのもとでバレエを習い始め、トロントのカナダ国立バレエスクール(en:The National Ballet School of Canada)を経てロイヤル・ウィニペグバレエスクールに移った[2][3][4][5]。本人の言によれば、カナダ国立バレエスクールでは最初3回も入学を拒否されたという[2][3]。その衝撃から一時は拒食症を患っていた[2]

17歳のころからはバレエのレッスンに専念できるようになり、ロイヤル・ウィニペグバレエスクール在籍中の1974年に舞台に初出演した[6]。1976年にロイヤル・ウィニペグバレエ団に入団して2年後にソリストに昇格し、さらに1年後、プリンシパルとなった[2][5][7]

ハートが注目されるようになったのは、1980年のことだった。その年の5月から6月にかけて東京と大阪を会場にして開催された第3回日本世界バレエ・コンクールでは、デヴィッド・ペレグリンと組んでノバート・ヴェサック振付の『ビロング』という作品を踊り、銅賞(3位)を受賞した[3][5][8][9]。日本世界バレエ・コンクールの3週間後に行われたヴァルナ国際バレエコンクールでは、金賞を受賞した。このときの得点は、ウラジーミル・ワシーリエフ以後で最高だったといわれる[3]。この2つのコンクールへの出場は、ハートにウィニペグ以外の広い世界への扉を開くことになった。実際に振付家ピーター・ライト(en:Peter Wright (dancer))などから他のバレエ団への入団勧誘があったが、当時のハートは自らのテクニックに自信が持てず、ロイヤル・ウィニペグバレエ団に残ることを選んだ[10]

古典と現代作品の両方を踊りこなし、『ジゼル』のタイトルロールや『白鳥の湖』のオデット=オディール、『ロメオとジュリエット』のジュリエット役などで評価が高かった。特に『ジゼル』では、1幕の「狂乱の場」でいきなり髪が乱れて不自然になるのを防ぐため、あらかじめ髪の毛を少しおろすなど細やかに配慮し、2幕の幕切れではアルブレヒトの命を救うだけではなく、ジゼル自身の魂も浄化され救済されるという表現を見せた[11]。現代作品では、「音楽が命じるままに踊ればいい」という彼女自身の言葉が示すように、音楽性豊かな舞台で観客と批評家の双方から評価された[6][12]

カナダを代表するバレエダンサーとして活躍し、世界各地で開催されるガラ公演出演の他に、オランダ国立バレエ団、ミュンヘンバレエ団、日本バレエ協会などの公演に客演した[6][13]。1983年にカナダ勲章4等オフィサーに叙せられ、2006年にはカナダ王立協会の会員となった[3][5][14]。また、2000年にはカナダ・ウォーク・オブ・フェーム(en:Canada's Walk of Fame)で星を獲得している[15]

2005年に、ロイヤル・ウィニペグバレエ団を去った。2006年8月23日にオンタリオ州ロンドンで引退公演を行い、30年にわたる舞台生活に別れを告げた。

脚注[編集]

  1. ^ a b c 『バレリーナは語る』71-72頁。
  2. ^ a b c d 『バレリーナは語る』72頁。
  3. ^ a b c d e 『バレエ・ピープル101』124頁。
  4. ^ 『バレエ音楽百科』265頁。
  5. ^ a b c d le Gala des étoiles - Evelyn Hart 2011年8月20日閲覧。(英語)
  6. ^ a b c 『オックスフォード バレエダンス辞典』385-386頁。
  7. ^ 『バレリーナは語る』70頁。
  8. ^ 『バレリーナは語る』72-73頁。
  9. ^ 『日本洋舞史年表IV-2(1979-1980)』 (PDF) 2011年8月20日閲覧。
  10. ^ 『バレリーナは語る』73頁。
  11. ^ 『バレリーナは語る』76-85頁。
  12. ^ 『バレリーナは語る』85-87頁。
  13. ^ 日本バレエ協会 都民芸術フェスティバル公演の記録 公益社団法人日本バレエ協会ウェブサイト、2011年8月20日閲覧。
  14. ^ 2006 New Fellow Citations Notices académiques des membres élus en 2006 (PDF) カナダ王立協会ウェブサイト、2011年8月20日閲覧。(英語)
  15. ^ CANADA’S WALK OF FAME Star map 2011年8月20日閲覧。(英語)

参考文献[編集]

外部リンク[編集]