インスマウスの影

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インスマウスの影』(インスマウスのかげ、: The Shadow Over Innsmouth)は、アメリカ合衆国のホラー小説家ハワード・フィリップス・ラヴクラフト1936年に発表した小説。

解説[編集]

ダニッチの怪』『クトゥルフの呼び声』と並ぶラヴクラフトの代表作であり、1936年に彼の崇拝者たちによって初めて出版された単行本に収録された。この作品は彼の生前に本として出版された唯一のものである[1]。書き上げたときに、彼の小説の発表媒体であったパルプマガジン、ウィアード・テールズに送るつもりだったが、自信をなくして投稿を見送ったという経緯がある。

作品は不幸続きの少年時代に自らの家系を呪われたものと信じたラヴクラフトが自らの血筋への恐怖を描いたものとも、20世紀初頭の保守的なアメリカ人の例に漏れず、ユダヤ人や有色人種・異教徒を嫌悪していたラヴクラフトが、その嫌悪感を作中の怪物に重ねて書いたものとも言われているが、同時に異世界住人への憧憬、自己同一視、逆の選民意識も見て取れる。ニューイングランドの荒廃した古い漁村の描写は恐怖小説の域を超えて秀逸である。[2]

あらすじ[編集]

1927年7月、成人の記念にニューイングランドを旅する主人公は旅費節約のため、大人たちの忠告をよそにインスマス経由アーカム行きのバスを利用する。数十年前に疫病で没落したと噂されるインスマスは人もまばらな陰気で寂れた漁村だった。酔いどれの老人から街の荒廃に関わる恐ろしい空想話を聞かされ、主人公はインスマスから言いようのない不安を感じるようになる。

やがてバス発車の時間になるもアーカム行きの車両が故障したことで、主人公は町のホテルに一泊を余儀なくされる。部屋の電源が意図的に消されたと気づいた深夜、ついに主人公は怪異と恐怖の影が覆うインスマスからの脱出を決意する。

クトゥルフ神話への影響[編集]

この作品にはラヴクラフトの世界観がよく表れており、ダゴン秘密教団や「深きものども」などクトゥルフ神話には欠かす事ができないキャラクターが登場している。

オーガスト・ダーレスの『永劫の探求』でも舞台となったインスマウス/インスマスが登場するなど、舞台となった町もクトゥルフ神話ではしばしば登場する事になる。

1992年にはTBS佐野史郎主演・小中千昭脚色で翻案ドラマ(邦題:インスマスを覆う影)を制作するなど日本での作品の知名度も高い。

脚注[編集]

  1. ^ ひどい製本、印刷だったという。
  2. ^ 実際にラヴクラフトが小旅行で取材したものだが、このようなリアルな描写が入ってくることはラヴクラフトの作品においては珍しい。

参考文献[編集]