インコネル

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インコネル (Inconel®) はニッケル基の超合金の商標である。

概要[編集]

スペシャルメタルズ社(Special Metals Corporation)(旧インコ社・International Nickel Company)の商品名であり、ニッケルをベースとし、クロムニオブモリブデン等の合金元素量の差異によってインコネル600、インコネル625、インコネル718、インコネルX750等様々なものに分けられる。 インコネルは耐熱性、耐蝕性、耐酸化性、耐クリープ性などの高温特性に優れている。このため、X-15スペースシャトル原子力産業、産業用タービンの各種部品、航空機ジェットエンジン鋳物、身近なものでは自動車用の高級マフラーなど、様々な分野で使用されている。

一方でこうした高温強度が高く、熱伝導率が悪いため、切削加工などの機械加工では難削性が高く加工が困難である事で知られる。コスト低減のためにも以前まで主体であった鍛造品から鋳造品へ移行しようとの動きもみられる。 日本では、大同特殊鋼がスペシャルメタルズ社からライセンスの供与を受け、インコネルの商標を使用し製造を行っている、日立金属(旧日立金属MMCスーパーアロイ(旧三菱マテリアル桶川製作所))などでは相当材の製造が行われている。

種類と組成[編集]

インコネルは数多くの種類が開発されているが、おおむね固溶強化型と析出強化型に区分され登録されている。 600番台が固溶強化型、700番台が析出強化型である。

主なインコネルには、相当するJIS規格のニッケル合金が対応している。[1][2]

主なインコネルと、相当するJIS規格合金の成分
インコネルの番号 相当するJIS規格合金 Ni(wt%) Cr(wt%) Fe(wt%) Al(wt%) Mo(wt%) Ti(wt%) Nb+Ta(wt%)
600 NCF600 72以上 14~17 6~10
601 NCF601 58~63 21~25 残部 1.0~1.7
625 NCF625 58以上 20~23 5以下 0.4以下 8~10 0.4以下 3.15~4.15
718 NCF718 50~55 17~21 残部 0.2~0.8 2.8~3.3 0.65~1.15 4.75~5.50
X750 NCF750 70以上 14~17 5~9 0.4~1.0 2.25~2.75 0.7~1.2

脚注[編集]

  1. ^ 耐熱合金”. 日立金属株式会社. 2022年12月20日閲覧。
  2. ^ 『JIS G 4902:2019「耐食耐熱超合金,ニッケル及びニッケル合金− 板及び帯」』日本規格協会、2019年。 

外部リンク[編集]