インクカートリッジ

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プリンターのインクカートリッジ

インクカートリッジ (Ink cartridge) とはインクを詰めた詰め替え容器のことである。かつては万年筆用のインクタンクのことを指していたが、万年筆の需要低迷と相反するようにインクジェットプリンターの需用量が増加。2011年現在では、プリンターのインクを詰めた容器のことをいうことが多い。

構造[編集]

インクタンクに水溶性のインクが入っている。カートリッジによっては交換式印字ヘッド(ノズル)のある物もある。

純正品と非純正品[編集]

インクカートリッジには、プリンターを製造したメーカーの純正品と、不要になった空のカートリッジをリユースして詰め替えたり、中にはまったく別のカートリッジに独自のインクを充填して造られるサードパーティー品(非純正品 互換品ともいう)がある。純正品は比較的高価と感じられる価格で販売されているが、これはプリンターの販売価格を抑える代わりにインクの代金に製造コストを上乗せして販売するためとされる[1]。この価格差を埋めるように廃カートリッジを収集し、インクを詰め替える再生業者が多数現れている。

特にサードパーティーメーカーの場合(ユニオンケミカー他)は本体のカートリッジはそのまま利用し、無くなったらICリセッターを使ってメモリーを一度消去した上で、インクの中身を詰め替えるという商品もある(但し、ユニオンケミカーの「よくある質問」によると、「純正品以外のサードパーティー商品のカートリッジに詰め替えた場合は、インク漏れ、(ヘッドの詰まりによる)かすれなどが発生するので絶対使わないようにしてください」「純正インクと混合させると、インクによっては凝集(インク粘度変化)が発生し、プリンターヘッドを交換する恐れがあります。また互換品の場合カートリッジの形状が異なるため、注入口も開けられない・栓ができないといった弊害が起こる場合もありますので、必ず純正カートリッジで詰め替えるようにしてください」と呼びかけている)。

また、純正品のリサイクルカートリッジ以外の完全オリジナルの「汎用カートリッジ」といわれる互換品の場合は、外観(取り出し用の取っ手の有無、ICチップの違い、その他)が異なってしまうというケースがある。これはプリンターメーカーがこれらのカートリッジの構造を特許出願しており、純正メーカー品と全く同じ構造にしてしまうと知的財産権の侵害を犯す可能性があり、作ることができないとされているが、インクカートリッジメーカーが実際にそれに適合・互換したプリンターでの動作確認を行っている[2]

インクタンクの無駄なスペースを排した独自容器に純正カートリッジの2倍程度の量のインクが入っている商品なども存在する。ただしこの場合、一部商品では認識できなかったり、空打ちなどによりプリンターの破損・損壊を起こす可能性があり、対応するインクであっても不適合となる商品もある。(例としてEPSONIC-50互換の対象製品の一部[3]など)

プリンター製造各社はインクカートリッジ裁判を横目で見るように、インクカートリッジにインク残量を検出するICチップを装着。これはインクを使い切った後に詰め替えたとしても、プリンター側でインクの残量0と判断するため、再利用できない仕組みとして登場した。これに対してサードパーティー側は、ICチップの設定を満タンに戻すリセッターをセットで販売して抵抗している。

訴訟・裁判[編集]

  • キヤノンは2002年、東京都豊島区リサイクル・アシスト特許侵害提訴した。これは、キヤノン製の使用済みカートリッジに中国でインクを詰め替え輸入・販売しようとする行為が、特許を侵害しているとしたものである。2004年の一審判決でキヤノンが敗訴、2006年の二審ではキヤノンが逆転勝訴している。この他にも多くの裁判事例が発生している[4][5]

リサイクルボックス設置競争[編集]

インクカートリッジ回収箱

サードパーティー品の製造は、使用済みの純正インクカートリッジをいかに確保するかが勝負となる(再生業者に零細企業が多いことも理由)。

このため、サードパーティー品の駆逐を目指すプリンター製造メーカーも入り乱れて量販店の店頭ではリサイクルボックス(空きカートリッジ回収箱)の設置競争が行われている。メーカーとサードパーティーの回収ボックスが並べて置かれている光景も珍しくない。

プリンターメーカーのインクカートリッジ回収活動[編集]

使用済みインクカートリッジの回収に関しては、各メーカーが販売店店頭に回収ポストを設置したり、キヤノンセイコーエプソンではベルマーク運動への参加で教育機関からの回収を行っていたが、2008年4月からはプリンターメーカー6社が協同して「インクカートリッジ里帰りプロジェクト」を始めることとなった[6]

参加メーカー


カートリッジは回収後、セイコーエプソンの障害者雇用施設で仕分け作業を行う。回収、仕分け後のカートリッジの再利用に関しては各社で対応がまちまちであり、例としてキヤノンでは「再び同じインクカートリッジにリサイクルする」(すなわち、純正品としてのリユース)としエプソンでは「インクカートリッジに限らず、新しい製品の材料とするマテリアルリサイクル」を行うとしている。

また「サードパーティー」といわれるメーカーでもこれらの使用済みインクカートリッジを回収、汚れ落しなどのクリーニングをした後にインクを補填した「互換リサイクルインク」として発売する場合もある。但し、純正品と必ずしも成分が一致するとは限らないため、若干色のムラが発生する場合がある。またリサイクル互換インクの一部製品ではICチップのリセットが暗号化され不十分であるためインク残量が表示されない(該当色の残量部は灰色での表示となる。但し、インク切れの警告は出る)が、問題なく使用することが可能とされている。

代表的なサードパーティーのインクメーカー[編集]

互換(リサイクル含む)カートリッジの製造[編集]

詰め替え用インクの製造[編集]

互換(リサイクル含む)カートリッジ・詰め替えインク双方とも製造[編集]

脚注[編集]

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  1. ^ 一方、サードパーティにはプリンター本体にまつわる開発・製造費の負担が無い。
  2. ^ こまもの本舗「よくある質問」より
  3. ^ ジット「たっぷりント」の通販サイトに、不適合、ないしは適合しても通常の操作とは若干異なる操作方法になる製品の一覧が掲載されている
  4. ^ キヤノン. “Canon Sustainability Report 2008”. pp. p.39. 2009年10月31日閲覧。
  5. ^ ブラザー工業. “消耗品に関する独・デュッセルドルフ高等裁判所における勝訴判決について”. 2009年10月31日閲覧。
  6. ^ セイコーエプソン. “ブラザー、キヤノン、デル、エプソン、日本HP、レックスマークが 日本郵政グループと協力し使用済みインクカートリッジの共同回収を開始”. 2009年10月31日閲覧。